養豚廃水処理施設の赤色バイオフィルムに高い確率でアナモックス菌が高濃度に存在する

タイトル 養豚廃水処理施設の赤色バイオフィルムに高い確率でアナモックス菌が高濃度に存在する
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門
研究期間 2014~2017
研究担当者 和木美代子
須藤立
石本史子
知久幹夫
合原義人
松本敏美
上西博英
安田知子
福本泰之
発行年度 2018
要約 養豚廃水の活性汚泥処理施設の曝気槽や沈殿槽に存在する赤色のバイオフィルムには、高い確率で高濃度のアナモックス菌が含まれ、アナモックスリアクター立ち上げの際の種汚泥として利用できる。アナモックス処理は有機物/窒素比の低い畜産廃水からの窒素除去へ利用可能である。
キーワード 養豚廃水、活性汚泥処理、溶存酸素濃度、窒素除去、アナモックス菌
背景・ねらい アナモックス反応はPlanctomycetes門に属するアナモックス菌により起こり、アンモニアと亜硝酸を約1:1で消費し、窒素ガスを発生させることができる。その窒素ガスの発生において、従来の脱窒反応のように有機物を消費しないことから、有機物/窒素比の低い畜産廃水からの窒素除去への利用が期待されている。しかしながら、アナモックス処理の実用化においては、アナモックス菌の増殖速度が遅く、十分な菌体を得るのに時間がかかることが課題である。
アナモックス菌はヘムを持つ酵素を高濃度に含むことから、生物膜や汚泥中でアナモックス菌の菌体濃度が高まると赤色を示す特徴がある。一方、養豚廃水の活性汚泥処理施設の曝気槽や沈殿槽の内壁に赤色のバイオフィルムが存在する事例がある。そこで、これらのバイオフィルムにおけるアナモックス菌の濃度を調査する。
成果の内容・特徴
  1. 茨城県および静岡県の10軒の養豚農家の活性汚泥処理施設を調査した内、3軒における曝気槽および沈殿槽の壁面もしくは浮遊状態で見られた赤色バイオフィルムは、アナモックス菌の16S rRNA遺伝子を高濃度に含む(平均1.1×1011copy/g-強熱減量)(図1、2)。アナモックス菌を最も高濃度に含む赤色バイオフィルムの濃度は、既往研究の合成培地による集積汚泥と同等レベルである(データ略)。
  2. 赤色バイオフィルムに含まれるアナモックス菌16S rRNA遺伝子の平均濃度は、同一施設内の浮遊汚泥に含まれるアナモックス菌16S rRNA遺伝子濃度(平均6.4×108copy/g-揮発性浮遊物質)や赤色バイオフィルムの存在しない施設の浮遊汚泥中アナモックス菌16S rRNA遺伝子濃度(平均1.2×109copy/g-揮発性浮遊物質)よりも高い(図2)。
  3. 赤色バイオフィルムは、同一施設内の浮遊汚泥よりも高いアナモックス活性を示し(それぞれ平均57μmo-N2/g-強熱減量/hr、0.95μmol-N2/g-揮発性浮遊物質/hr)、アナモックス活性はアナモックス菌16S rRNA遺伝子濃度と正の相関を示す(図3)。
  4. アナモックス菌を高濃度に含む赤色バイオフィルムには主にCandidatus Brocadiaもしくは、Ca.Jetteniaに属するアナモックス菌が見られる(図4)。
  5. 赤色バイオフィルムが得られた施設の曝気槽は、溶存酸素濃度が0.2~0.5mg/Lのように、一般的な曝気槽の推奨値(2mg/L)よりも低い傾向がある。
成果の活用面・留意点
  1. アナモックスバイオフィルムを、アナモックスリアクターの立ち上げの際の種汚泥として用いることができる。
  2. 赤色の微生物はアナモックス菌以外にも存在することから、遺伝子の検出、定量評価等で確認する必要がある。
  3. 曝気槽や沈殿槽の汚泥を採取するときは浄化槽への転落などに配慮し、安全性に注意する必要がある。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nilgs/2018/nilgs18_s09.html
カテゴリ アナモックス菌

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