日本産ジャガイモ黒あし病菌の遺伝的多様性と個体識別による感染経路の推定

タイトル 日本産ジャガイモ黒あし病菌の遺伝的多様性と個体識別による感染経路の推定
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2015~2020
研究担当者 中山尊登
安岡眞二
小澤崇洋
青野桂之
牛尾裕
藤本岳人
大木健広
眞岡哲夫
発行年度 2020
要約 rep-PCRフィンガープリント解析により、ジャガイモ黒あし病菌Pectobacterium wasabiae、P. carotovorum subsp. brasiliense、Dickeya dianthicolaはそれぞれ29、21および11遺伝子型に類別され、遺伝子型にもとづく個体識別により感染経路の推定に活用できる。
キーワード ジャガイモ黒あし病菌、rep-PCR、フィンガープリント、遺伝子型、個体識別
背景・ねらい 近年種ばれいしょ生産現場で問題となっているジャガイモ黒あし病は、日本においては5種の細菌(Pectobacterium atrocepticum [以下Pa]、P. wasabiae [Pw]、P. carotovorum subsp. brasiliense [Pcb]、Dickeya dianthicola [Ddi]、D. chrysanthemi [Dch])が病原として報告されているが、それらの遺伝的多様性については知られていない。また、ジャガイモ黒あし病菌(以下黒あし病菌)は種いも伝染することが知られているが、近年の黒あし病発生事例において、生産圃場環境中での病原菌による感染を示唆するものも認められており、種いも伝染以外の感染経路の解明は、本病の防除体系を構築する上で重要である。
そこで、本研究では細菌を個体レベルで識別可能な手法であるrep-PCR法を用いて、日本国内で分離された黒あし病菌の遺伝的多様性を明らかにするとともに、遺伝子型にもとづいて個体識別を行うことによる、黒あし病菌の感染経路推定の可能性を明らかにする。
成果の内容・特徴 1.黒あし病菌菌体から調製したDNAを3種類のrepプライマー(BOXA1R、ERIC1R/ERIC2、REP1R-I/REP2-I)を用いたrep-PCR(以下BOX-PCR、ERIC-PCR、REP-PCR)に供する(Versalovic et al. 1994)。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動に供試し、泳動パターン(フィンガープリントパターン:FP)ごとに類別する。各菌株について、BOX-PCR、ERIC-PCRおよびREP-PCRによるFPの組合せにもとづき、遺伝子型(フィンガープリントジェノタイプ: FG)を決定する(rep-PCRフィンガープリント解析)。
2.国内で発生している黒あし病菌のうち、Pw、PcbおよびDdiは、3種のrep-PCRの結果にもとづくFPの組合せから、それぞれ29、21および11の FGに類別される(図1~3)。
3.供試したPw、PcbおよびDdiのシンプソンの多様性指数Dは、それぞれ0.87、0.57および0.84であり、Pw、Ddiの遺伝的多様性は高いと考えられる。一方、PcbではFG3に類別される菌株が65%を占め、両菌種に比較して遺伝的多様性は低い。
4.供試菌株のうち、種いも生産圃場の発病株由来の分離菌株(種いも菌株)と、同圃場で生産された種いもを使用する圃場の発病株由来の分離菌株(子菌株)のFGは一致し、種いも菌株と子菌株は遺伝的に同一と判断されることから、種いも感染が感染経路として支持される(図4)。また、北海道におけるDdiによる黒あし病の発生事例では、発病株からの分離菌のFGと、発生ほ場近傍の畦畔で採取されたキク科雑草の根からの分離菌のFGが一致したことから、キク科雑草根が感染源であると推定される(データ省略)。
成果の活用面・留意点 1.rep-PCRフィンガープリント解析は、圃場環境中等から分離された黒あし病菌株間の遺伝的な異同の解明に活用できる。
2.供試するDNAの調製方法の違いにより、rep-PCRの結果(FP)が異なることが分かっているので、黒あし病菌のDNAは統一した調製方法(シリカメンブレン法を採用した市販DNA抽出キットなど)で実施する。
図表1 244476-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/harc/2020/harc20_s15.html
カテゴリ きく 雑草 ばれいしょ 防除

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