タイトル | 塊茎、茎・根、土壌、水試料に対応したジャガイモ黒あし病菌の高感度検出法 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 | 2015~2020 |
研究担当者 |
中山尊登 青野桂之 小澤崇洋 牛尾裕 安岡眞二 藤本岳人 大木健広 眞岡哲夫 |
発行年度 | 2020 |
要約 | ジャガイモ黒あし病菌の半選択培地LEMを用いる増菌培養と、菌種特異的PCRプライマーを用いるマルチプレックスPCRを組み合わせることにより、塊茎、茎・根、土壌、水の各試料から黒あし病菌を高感度に検出でき、生産現場における黒あし病の診断に活用できる。 |
キーワード | 増菌培養、マルチプレックスPCR、Pectobacterium、Dickeya、伝染源 |
背景・ねらい | 近年種ばれいしょ生産現場でジャガイモ黒あし病が頻発し、健全な種ばれいしょの安定供給に大きな脅威となっている。日本においては、本病は5種の細菌(Pectobacterium atrocepticum [以下Pa]、P. wasabiae [Pw]、P. carotovorum subsp. brasiliense [Pcb]、Dickeya dianthicola [Ddi]、D. chrysanthemi [Dch])が病原菌として、主に種ばれいしょで伝染することが知られている。本病による被害回避のためには、健全な種ばれいしょの安定供給が不可欠である。そのためには、生産された種ばれいしょの健全性を担保する高精度検定法や、圃場における発病株の高感度検出法が求められる。しかし、従来の検定法はジャガイモ黒あし病菌に特化したものではなく、また、近年黒あし病の病原となることが示されたPcbには対応していない。さらに、本病発生事例には、圃場環境中で黒あし病菌に感染したことを示唆するものも認められており、生産圃場及びその周辺環境における伝染源の除去も必要と考えられる。ばれいしょの塊茎・茎・根のほかに、土壌や水試料からも検出できれば、そうした伝染源の探索が可能となり、種ばれいしょ生産における黒あし病汚染対策を強化することができる。そこで、本研究では、ジャガイモ黒あし病菌の半選択培地LEMを用いる増菌培養と、菌種特異的PCRプライマーを用いるマルチプレックスPCRを組み合わせ、5種の病原細菌の全てを、塊茎・茎・根、土壌、水試料から高感度に検出する技術を開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1.本検出法は、ジャガイモ黒あし病菌(以下黒あし病菌)の半選択培地であるLEM培地 (H?lias et al. 2012) を用いた増菌培養と、黒あし病菌4菌種(Pa、Pw、PcbおよびDickeya sp.)に対するマルチプレックスPCRによって構成される(図1)。 2.高い検出感度が求められる塊茎(種ばれいしょ)の保菌検定には、トリプレックスPCRとシンプレックスPCRを組み合わせて用いる。茎・根、土壌、水等からの検出、分離菌の簡易同定等の目的には、1種類のPCRで結果が判明するテトラプレックスPCRを用いる(図1、表1)。 3.本検出法を用いることによって、種ばれいしょ保菌検定においては、従来法(図1右、農研機構種苗管理センター 2017)と比較して、検出可能な黒あし病菌の初期菌密度が2-8×100 cfu/10 ml 培地まで低下する(表2)。これにより、従来法よりも高感度な黒あし病菌の検出が可能となる。 4.本検出法は、従来法で用いられている流動パラフィン重層処理を必要とせず、従来法で4種類行う必要があったPCR反応を、1種類(テトラプレックスPCR)または2種類(トリプレックスPCR+シンプレックスPCR)のPCR反応で行うため、省力化、省コスト化が可能である(図1)。Ddi以外のDickeya sp.の検出例は希であるが、Dickeya sp.が検出された場合には、Ddi特異的PCRに供試し、Ddiかどうかを確認する。Ddi以外のDickeya sp.と推定される場合はシーケンス解析等により菌種を特定する。 |
成果の活用面・留意点 | 1.普及対象:農研機構種苗管理センター、種ばれいしょ生産団体、公設試験研究機関 2.普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:種苗管理センターにおける年間検定数8.7万塊茎等 3.その他:本検出法は種苗管理センター等における種いも検定の高精度化・効率化のために活用されるほか、黒あし病発生時の原因究明・対策立案の場面での活用が想定される。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/harc/2020/20_044.html |
カテゴリ | コスト 省力化 ばれいしょ |