タイトル | リンゴ産地におけるリース事業を用いた農協主体による樹園地流動化方策の仕組みと効果 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 | 2016~2020 |
研究担当者 |
安江紘幸 長谷川啓哉 |
発行年度 | 2020 |
要約 | りんご産地の農協が地権者から樹園地を借り受け中間保有するとともに、生産力の高い栽培方式を可能とする樹形へ改植し成木までの樹体管理を行った上で、樹園地を借受者に貸し付ける流動化方策により、担い手創出や新技術の普及、優良園地の保全等の効果が得られる。 |
キーワード | 樹園地流動化、需給調整、担い手減少下、リンゴ産地、新わい化栽培 |
背景・ねらい | リンゴ産地の中には、担い手の減少により放任園が増加するとともに、改植遅れによって樹園地が老朽化し、樹園地の流動化が困難になる場合がある。また、樹園地は、農地と樹体の合体資本であることから資産としての評価が難しく、樹体管理が滞ると直ちに価値が低下してしまう。さらには、樹園地を賃貸借する場合は、借り手が投下した樹体投資から生じる利益の帰属問題も生じることになる。そこで本研究では、N県のリンゴ産地のN農協が主体的に取り組んでいる「園地リース事業」を用いた樹園地流動化方策の仕組みと効果を解明する。 |
成果の内容・特徴 | 1.リンゴ産地におけるリース事業を用いた農協主体による樹園地流動化方策は、農協が地権者から樹園地を借り受け中間保有するとともに、生産力の高い省力栽培方式を可能とする樹形である「りんご高密植低樹高栽培技術(以下、新わい化栽培)」への改植を行った上で、樹園地を担い手となる借受者に貸し付ける仕組みである(図1)。 2.N県における具体的な取り組みは、地権者から依頼を受けたN農協が貸付相手を探し園地評価を行い、優良な条件(交通の便、畑の状態、機械設備の使用状態)であることを前提にトレリスや棚がある園地に事業導入を進める。それらがない園地は、N農協が新わい化栽培による改植を行い樹体が成木となって資本が形成されるまでの樹体管理を行う。N農協では、樹体資本を形成する前までに園地近くの後継者や農協青年部に借受者を募り、借受者が承諾すれば樹体資本が形成されていない園地(改植間もない園地)であっても引き渡している。樹体の所有権は、樹体資本賃料の償還が完了次第、借受者に移転される(図2)。 3.N農協が2009年から10年間取り組んできた園地リース事業を用いた樹園地流動化方策では、新規就農者の創出(18名)、新わい化栽培技術の普及(22ha)、改植による優良園地の保全(6.4ha)、産地全体の増収(440tの見込み)等の効果が得られた。 |
成果の活用面・留意点 | 1.樹園地流動化に取り組み始めた市町村行政や農協が担い手確保を図る際の参考になる。 2.樹体資本価額は、果樹経営支援対策事業や市町村の異なる苗木助成事業、農協独自の助成が組み合わされたことで改植費用が1/3程度に圧縮されている点に留意する必要がある。 3.「農地中間管理事業の推進に関する法律」が一部改正されことに伴い、農協が円滑化団体として実施してきた園地リース事業は、令和2年4月1日以降、契約期間が満了した案件から農地中間管理事業等へ移行し継続している。 4.N農協の「園地リース事業」が展開されている長野市は、水田率が28.2%に対して樹園地率が41.7%と高く、農業従事者の高齢化や担い手不足、改植遅れによる樹園地の老朽化などにより樹園地の荒廃化がすすむ傾向にあり、他の地域と比べて担い手と樹園地の減少率が高い点が特徴的な地域である。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/tarc/2020/tarc20_s11.html |
カテゴリ | 改植 経営管理 栽培技術 水田 低樹高 りんご わい化 |