タイトル | 貯蔵玄米中の害虫(ガ類)発生を検知する揮発性マーカー成分 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター |
研究期間 | 2017~2020 |
研究担当者 |
田中福代 宮ノ下明大 曲山幸生 四方政樹 猪井淑雄 松尾徹也 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 玄米中のガ類害虫は特徴的に放出される揮発性成分(プレノールとその類縁物質)で検知することができる。プレノールまたはイソプレノールのみ検出される場合はノシメマダラメイガの、これと同調するプレナール(アルデヒド)が検出されるとガイマイツヅリガの発生が強く疑われる。 |
キーワード | VOCマーカー、食品害虫、プレノール、イソプレノール、リアルタイム質量分析計 |
背景・ねらい | 食品害虫の加害によるフードロスの削減や貯蔵農作物の品質管理の側面から、貯蔵食品を害虫から守ることは重要な課題である。現在のフェロモントラップ法では害虫発生を検知するのは成虫増殖後であり、適期対策が困難なケースが多い。このため、新たな手法による早期検知の技術開発が求められている。 揮発性成分(Volatile organic compound: VOC)は非破壊分析が可能であり、将来的なIoT 利用が視野に入るため、多くの分野でマーカー利用の期待が高まっている。これまで困難であった害虫の早期検知においても、成虫が増殖する前に発する成分をとらえればより早い段階で検出可能になる可能性がある。そこで、VOCマーカーによる害虫検出技術の開発を目指し、必要な研究開発要素の開発を行う。本研究では、第一に貯蔵中の玄米が発するVOCの中からガ類幼虫の食害に対応する特徴的な成分を同定する。この成分同定のための精密分析は時間を要するため、二番目として将来的に簡易なセンサーへ移行するための多検体分析による実証に対応可能な、マーカー候補成分の迅速で高感度な分析法の開発を行う。 |
成果の内容・特徴 | 1.通気口を設けた蓋つきガラス容器中の玄米にガ類の卵を一種類ずつ混ぜて静置し、容器空間に含まれる複雑な組成のVOCをガスクロマトグラフ―質量分析計(GC-MS)を用いて分析する。1世代以上の期間分析を続ける。卵を混ぜない玄米との差分解析から、ガ類の混入に特徴的な成分を検索し、ガ類発生のマーカー成分とする(図1)。 2.貯蔵中玄米にガ類が侵入すると、プレノール、イソプレノールのいずれかが検出される。特に、ノシメマダラメイガではイソプレノールが、ガイマイツヅリガではプレノールが多く検出される。プレノールはそのアルデヒド体のプレナールが同時に生じ、両者の増減は同調する。ノシメマダラメイガやガイマイツヅリガでは卵混入から10日以内にこれら成分が検出される(図2)。 3.リアルタイム質量分析を行うと5分以内の迅速分析が可能である。プレノールやイソプレノールではm/z 86、プレナールではm/z 83のイオンが観測されるため、これらを選択イオンモニタリングで計測する。m/z 86と同調する83が観測されればガイマイツヅリガの発生、86のみ観測されればノシメマダラメイガ等のガイマイツヅリガ以外のガ類の発生の可能性が高い(図3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.リアルタイム質量分析法の中で定量性の高い選択イオンフローチューブ質量分析法(Selected Ion Flow Tube-MS:SIFT-MS)を用いた。 2.玄米100gにガ類の卵を約100-150個混入し、25°Cで飼育した結果である。今後、スケールを拡大し実証実験を実施する必要がある。 3.ノシメマダラメイガは玄米に発生するガ類害虫の中で最も発生頻度が高いため、プレナールを伴わないプレノール類の検出時に発生が最も疑われる虫種である。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/carc/2020/carc20_s22.html |
カテゴリ | 害虫 フェロモン モニタリング |