タイトル | エマラウイルスを網羅的に検出できるディジェネレートプライマーセット |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター |
研究期間 | 2011~2020 |
研究担当者 |
久保田健嗣 千秋祐也 柳澤広宣 竹山さわな 宇杉富雄 冨高保弘 津田新哉 竹内繁治 広瀬拓也 森田泰彰 島本文子 清遠亜沙子 岡田知之 下元祥史 沖友香 下元満喜 中平知芳 下八川裕司 久家工人 横山克郎 山本正志 谷岡賀子 市川耕治 鈴木良地 田中はるか 天野淳二 松本祐保 恒川健太 武山桂子 堀川英則 伊藤涼太郎 大橋博子 後藤英世 若月洋 山崎修一 姫野和洋 田中啓二郎 松本翔太 上遠野冨士夫 多々良明夫 鍵和田聡 |
発行年度 | 2020 |
要約 | エマラウイルス属ウイルスの保存配列領域をターゲットとするディジェネレートプライマーであり、RT-PCR法により、幅広い既知種を安定して検出できるほか、未知種探索の手がかりとして利用できる。 |
キーワード | Emaravirus、モチーフ、ディジェネレートプライマー、RT-PCR、ChMaV, PCLSaV |
背景・ねらい | フシダニ・サビダニ類によって媒介されるエマラウイルス属ウイルスは、国内外の多様な作物に病害を引き起こす。エマラウイルスが発見された2007年以降、相次いで新種が報告され、現在では20種を超える。エマラウイルスを検出できる手法として、混合塩基を含むディジェネレートプライマーを用いたRT-PCR法が報告されているが(Elbeaino et al., 2013)、本プライマーは当時知られていた5種の配列を基に設計されているため、その後に報告された新種ウイルスの配列に対応していない。そこで、これらウイルスの配列をもとに、プライマーの標的領域および配列を再検討し、より網羅的に検出できるユニバーサルプライマーセットを開発する。また、本プライマーを用いて、フシダニ類の寄生が原因とされているウイルス様症状を示す植物から、エマラウイルスを探索し、未知種の検出可能性を評価する。 |
成果の内容・特徴 | 1.エマラウイルスのコードするタンパク質のアミノ酸配列のアラインメントから、RNA依存RNAポリメラーゼには保存性の高い領域(Pre-motif A, Motif F, Motif A-E)が存在し(図1)、なかでもmotif F, motif A, motif Bの配列保存性が高い(結果省略)。 2.国内発生種のシソモザイクウイルス(PerMV)やイチジクモザイクウイルス(FMV)を含む9種(11アクセッション)のエマラウイルスの、motif F、motif A、motif Bをコードする塩基配列(図1、配列1~11)を元に、ディジェネレートプライマーを設計した(表1)。Pre-motif Aおよび motif Cを標的とする既報プライマーセット(#1, #2)と比較して、motif F, A, Bを標的とする新規プライマーセット(#3, #4)は、その後に報告された新種ウイルス9種(図1、配列12~21)に対してもミスマッチを全く示さず、また、縮重度を低く抑えられる(図1)。 3.RT-PCRによる検出は、サンプル葉から抽出したRNAをもとに、ランダムヘキサマーにより逆転写したcDNAを鋳型とする。次にディジェネレートプライマーを用いてPCRを行う。PCR反応の温度条件は、一例として(98°C 10秒、45°C 30秒、72°C 40秒)を40サイクルとする(論文を参照)。アガロースゲル電気泳動により、想定サイズのバンドの有無を検出し(図2)、シーケンス解析を行う。 4.エマラウイルス10種(国内産2、海外産8)のうち、プライマーセット#1, #2, #3, #4による検出可能種数はそれぞれ、8種、9種、10種、10種であり、#1, #2と比較して、#3, #4は特に日本産種を含めて安定して検出できる(結果省略)。 5.本ディジェネレートプライマーによって、これまでキクモンサビダニ(Paraphytoptus kikus)の吸汁害とされてきたキクの紋々病、およびニセナシサビダニ(Eriophyes chibaensis)の関与が指摘されてきたニホンナシの退緑斑点症状の葉から、新種のエマラウイルスと考えられる配列が検出される(図2)。これらは後にchrysanthemum mosaic-associated virus (ChMaV)(仮称)およびpear chlorotic leaf spot-associated virus (PCLSaV)と命名された。 |
成果の活用面・留意点 | 1.フシダニ・サビダニ類が関与するウイルス様症状を示す葉からのエマラウイルスの探索に活用でき、既報プライマーと組み合わせることで、検出可能性が高まると考えられる。 2.ディジェネレートプライマーによる検出は、ワンステップRT-PCRでも可能である。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/carc/2020/carc20_s19.html |
カテゴリ | いちじく きく しそ ニセナシサビダニ |