タイトル | 交信攪乱による交尾遅延に伴うメスの老化がフジコナカイガラムシの生殖に与える影響 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター |
研究期間 | 2011~2020 |
研究担当者 |
田端純 杉江元 手柴真弓 |
発行年度 | 2020 |
要約 | フジコナカイガラムシのメスのフェロモン量は、成虫となってから約30日でピークに達し、老齢個体が若齢個体よりも多くのオスを誘引する。交信攪乱法による交尾遅延は、老齢個体の割合増加を促し、産卵数の多い若齢個体の交尾機会をさらに減少させるので、密度抑制効果が期待できる。 |
キーワード | フェロモン、加齢、交尾遅延、交信攪乱、環境負荷低減型害虫防除 |
背景・ねらい | ブドウやカキ等の多くの果樹を加害するフジコナカイガラムシでは、合成フェロモンを圃場内に充満させて雌雄の出会いを阻害する交信撹乱法が有効であることが知られている。合成フェロモンは化学農薬よりも環境への影響がはるかに小さいので、持続可能な農業の実現に向け重要な資材である。しかし、交信攪乱法は時間当たりの交尾確率を減少させるものの、長期間にわたって繁殖可能な害虫ではいずれ交尾してしまうため、害虫の増殖を抑えるメカニズムについては不明な点も多い。 そこで、本研究では、フジコナカイガラムシにおける交信攪乱法の密度抑制効果を裏付けるために、交信攪乱による交尾遅延の結果として生じる老齢メスのオス誘引能力や繁殖能力を評価する。 |
成果の内容・特徴 | 1.フジコナカイガラムシのメス成虫は比較的寿命が長く、半数以上の個体が成虫となってから70日以上生存する(図1)。 2.オス成虫を誘引するためのフェロモンの放出量は30日齢程度まで上昇し、その後も一定の放出量が維持される(図2)。 3.産卵数は日齢とともに減少し、28日齢以降に交尾した個体では、成虫になって3日前後で交尾した個体と比べて半数以下となる(図3)。 4.オス成虫は最も産卵ポテンシャルの高い3日齢の個体よりも、フェロモン放出量の多い老齢のメスに強く誘引される(図4)。 5.これらの結果は、交信攪乱に伴う交尾遅延によって、産卵ポテンシャルは低いがオス誘引活性は高い老齢メスの集団内における割合が増加すると、産卵ポテンシャルの高い若齢メスの交尾機会がさらに減少して次世代の密度抑制につながることを示す。 |
成果の活用面・留意点 | 1.現在までにフジコナカイガラムシの交信攪乱用のフェロモン製剤は市販されていないが、害虫密度低下および被害抑制に有効であることが野外試験で実証されている。 2.フジコナカイガラムシの合成フェロモンは、粘着トラップと組み合わせて利用する発生予察用誘引剤としては市販されており、圃場内の発生状況の把握に役立てられている。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/carc/2020/carc20_s16.html |
カテゴリ | 害虫 かき 環境負荷低減 農薬 繁殖性改善 フェロモン ぶどう 防除 |