タイトル | カラスとスズメに対する磁石の忌避効果は認められない |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター |
研究期間 | 2019~2020 |
研究担当者 |
吉田保志子 山口恭弘 佐伯緑 水井陽介 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 鳥は地磁気を感知できることが知られるが、磁石ありと磁石なしの餌場への来訪回数,試験飼料の消費量、来訪ごとの滞在時間のいずれについても差はみられず、磁石によって生じる磁場に対して、カラス、スズメは忌避反応を示さないと考えられる。 |
キーワード | カラス、スズメ、磁石、忌避効果、ハシブトガラス、ハシボソガラス |
背景・ねらい | 鳥が方向定位に地磁気を利用しているという科学的知見から、磁石には鳥の磁場感知を乱して忌避させる効果があると言われることが多い。しかし、磁場を感知できることと、磁場の乱れを忌避するかどうかは別の問題であり、磁石に忌避効果があるかどうかの科学的な裏付けは乏しい。 そこで、本研究では、主要な有害鳥であるカラス類とスズメについて、餌場への来訪行動に対する磁石設置の影響を調べることにより、磁石による忌避効果の有無を明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1.カラスが飛行できる十分な広さがある40m×60m×高さ12mの大型フライングケージにおいて、野生から捕獲したハシブトガラスとハシボソガラスを飼育して、同一構造の餌台4つのうち2つを磁石あり設定、2つを磁石なし設定とし、4つの餌台に磁石の有無を配置する全6パターンを1日1提示としてランダムな順で2セット繰り返した試験において、餌台への来訪回数、試験飼料消費量、来訪ごとの滞在時間のいずれについても、磁石あり設定と磁石なし設定の差はわずかであり(図1)、有意差は認められない。 2.スズメが飛行できる十分な広さがある5m×15m×高さ3mのトンネル型ケージにおいて、野生から捕獲したスズメを飼育して、同一構造の餌皿2つのうち一方を磁石あり設定、もう一方を磁石なし設定とし、磁石の位置をランダムな順で入れ替えた10回の試験において、餌台への来訪回数、試験飼料消費量、来訪ごとの滞在時間のいずれについても、磁石あり設定と磁石なし設定の差はわずかであり(図2)、有意差は認められない。 |
成果の活用面・留意点 | 1.試験に使用した磁石は、リング型の異方性フェライト磁石(外径100mm×内径60mm×厚み15mm,表面磁束密度120mT(1200ガウス),吸着力12kg)であり、市販の磁石としては比較的強力である。 2.鳥対策用として市販されている磁石として、今回の試験と同等の1200ガウスのものが複数商品みられる。 3.中央農業研究センター動物実験委員会において承認を受けている[No.30-3]および[No.元-1] |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/carc/2020/carc20_s12.html |
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