タイトル | 基幹農業水利施設の地震時挙動把握のための高速多点地震動観測システム |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門 |
研究期間 | 2017~2020 |
研究担当者 |
黒田清一郎 田頭秀和 本間雄亮 増川晋 牧野信夫 杉本里佳 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 従来の農業用施設で使われてきた地震計測よりも、高速なサンプリング速度でまたより多点での地震動観測を実現するシステム。農業用施設の構造や物性による地震波伝播状況の相違等を評価でき、耐震評価における動的解析との比較検証等に活用できる。 |
キーワード | 基幹農業水利施設、農業用ダム、地震動観測、アレイ計測、地震波伝播 |
背景・ねらい | 国営土地改良事業により造成した農業用ダムは、平成24年度から農業用ダムについて、機能診断に基づく健全性の評価とレベル2地震動に対する耐震性能照査を併せて行う安全性評価が実施されている。 本システムは農業用ダムのような基幹的な農業水利施設の地震時の挙動の予測や、動的解析結果の再現性の確認等に資するために、堤体および基礎・周辺地盤の地震波伝播特性を原位置で評価するシステムである。従来の一般的な地震観測よりも高速なサンプリングスピードで、多点での地震動を観測する。これにより、農業水利施設の構造や物性による地震波伝播速度の違いを評価することが可能となり、動的解析との比較等に活用することで耐震評価における数値解析の再現性の向上等に資する。 |
成果の内容・特徴 | 1.本システムはアレイ状に配置された複数の振動センサと計測機器とから構成される (図1)。振動計測は一般に地震観測で用いられる100Hzのサンプリング速度の計測だけではなく、1,000Hz以上の高速なサンプリング速度による計測が可能である。 2.本システムについてフィルダムの監査廊と法面にアレイ状に配置することにより、観測記録に地震波干渉法を適用することによって地震波伝播時間を評価することができる(図2)。フィルダムの耐震評価の動的解析において考慮される堤体の下部から上部への剛性変化が伝播速度に与える影響を、図2の近似曲線で示したような伝播時間の差として明示することができる。 3.農業用コンクリートダムに適用した場合には、左右の硬い基礎岩盤を高速で回り込む地震波の伝播時間の相違などを明らかにすることができる(図3)。 4.構造物内の詳細な地震波の伝播状況を調査する際に、従来の農業用ダムに設置された地震計による観測に比べて、10倍以上の時間分解能で実施することができる。また一定規模以上の地震だけではなく微小な地震や無感地震も計測対象とできることから、比較的短期間に地震波伝播の評価結果を得ることができる。 |
成果の活用面・留意点 | 1.普及対象:農業用ダムの維持管理や耐震評価に係る行政部局およびコンサルタント 2.普及予定地域:国営事業で造成された農業用ダムや県営事業等造成の農業用ダム等 3.その他: 本システムは、特殊な形状や付帯構造物を有する施設や、地震時に複雑な基礎地盤との相互作用などが発生する農業施設において、耐震評価技術の結果との比較などのために活用できることから、今後行政部局と調整を進めていく。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nire/2020/20_058.html |
カテゴリ | 評価法 水管理 |