緑茶茶葉から浸出液へのSrの移行割合は低く、Caの挙動と類似している

タイトル 緑茶茶葉から浸出液へのSrの移行割合は低く、Caの挙動と類似している
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門
研究期間 2019~2020
研究担当者 進藤久美子
八戸真弓
発行年度 2020
要約 天然に存在する同位体のSrの分析結果から、緑茶茶葉から浸出液への放射性Srの移行割合は、茶葉のSr量を1とすると、一煎で0.1未満、三煎までの合計でも0.3未満と推定される。緑茶類ではCaが放射性Srの挙動の目安として利用できる。
キーワード ストロンチウム、無機元素、緑茶、浸出液、移行割合
背景・ねらい 食品衛生法上の放射性物質の基準値は、放射性ストロンチウム(Sr、主として90Sr)等の長半減期核種の寄与も含めて放射性Cs濃度として設定されており、十分に安全が担保されている。しかし、放射性Csだけでなく、放射性ストロンチウムについても、食品の加工・調理により放射性核種がどの程度除去できているか等の情報を提供することで、消費者は一層の安心を得ることができると考えられる。人工的に生成する90Srも天然に存在する安定同位体のSrも化学的性質はほぼ変わらないことから、本研究では、緑茶茶葉から浸出液への90Srの移行割合を、天然に存在するSrの分析により推定する。また、Srと化学的性質が似ているとされるCaおよび併せて分析が可能な無機元素との比較により、Srの挙動の特徴を明らかにする。
成果の内容・特徴 1.玉露、普通せん茶、深蒸しせん茶、かまいり茶、番茶、ほうじ茶および玄米茶の計7種類の緑茶を対象として、緑茶の種類ごとに『日本食品標準成分表』(『食品成分表』)と同様の条件で浸出液を調製している(表1)。『食品成分表』では浸出液一煎目の成分値が収載されているが、本研究では、連続的に同じ条件で三煎まで浸出液を調製している(図1)。
2.緑茶茶葉から浸出液三煎までの移行割合は、おおむねK、Ni>Zn>Mg>P>Mn>Al>Ba、Sr、Cu、Ca>Feである(図2)。茶葉のSr量を1とすると、7種類の茶葉から『食品成分表』の収載と同じ一煎目に移行したSrの割合は0.01未満から0.07であり、一般に飲用とされる三煎までの合計では0.02から0.27である。0.45 μmのメンブレンフィルタで浸出液をろ過すると、移行割合が低減することから、Srの多くは浸出液中の細かい茶葉にも分布していると考えられる。
3.ほうじ茶以外の緑茶類では、SrとCaの浸出液への移行割合およびろ過による低減状況も似ており(図2)、緑茶の種類、浸出条件、ろ過の有無および浸出液の一煎から三煎などを分けずにSrとCaをプロットしても、同じ移行割合のライン付近に集まる(図3)。ほうじ茶を例外として、主要元素の中ではCaが90Srの目安として利用できると判断される。
成果の活用面・留意点 1.天然に存在するSrを定量している本手法は、茶葉内部に存在している90Srに対しての挙動の推定に利用できる。
2.浸出液へのSrとCaの移行割合の比は、およそ1:1.18と算出される。SrよりCaの浸出液への移行割合が若干高いため、Caの移行割合をそのまま90Srの目安としても、浸出液へ移行する90Srを実際より低く見積もる可能性は少ない。
3.ほうじ茶では、SrとCaの移行割合の比が異なるため、Caを90Srの目安に利用できないことに留意する必要がある。
図表1 244709-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nfri/2020/nfri20_s13.html
カテゴリ 加工

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