タイトル | ゲノムマイニングによる植物保護細菌の抗菌性に寄与する新規タンパク質の同定 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 |
研究期間 | 2014~2020 |
研究担当者 |
竹内香純 土屋渉 藤本瑞 山田小須弥 染谷信孝 山崎俊正 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 植物保護細菌Pseudomonas protegens(Cab57株)とその近縁系統(Os17株、St29株)の比較ゲノム解析に基づく手法(ゲノムマイニング)により、抗菌性遺伝子クラスターの同定が可能となる。本方法により抽出した遺伝子群から得られる新規タンパク質は抗菌性に寄与する。 |
キーワード | 植物保護細菌、ゲノムマイニング、二次代謝産物、抗菌性タンパク質 |
背景・ねらい | 非病原性シュードモナス属細菌Pseudomonas protegensとその近縁系統は、植物の根圏に定着し、自身が生産する抗菌性二次代謝産物により植物病原微生物の生育を抑制することから植物保護細菌とよばれている。植物保護細菌のゲノム中には、抗菌性に関わる遺伝子が備わっているが、同定されているものはごく一部であり、遺伝子情報に基づく有用物質の探索技術の開発が求められている。そこで、本研究では複数の非病原性シュードモナス属細菌を用いて系統間の比較ゲノム解析に基づく手法(ゲノムマイニング)により、有用な遺伝子の機能予測を行い、抗菌性に寄与する遺伝子を同定し、その産物の機能を明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1.3系統の植物保護細菌(P. protegens Cab57株、Pseudomonas sp. Os17株、Pseudomonas sp. St29株)の比較ゲノム解析により、各系統に共通の遺伝子、特有の遺伝子のグループ分けを行うとともに、機能予測ツールを用いたゲノムマイニングにより、二次代謝産物関連遺伝子の機能予測を行う(図1)。 2.Pseudomonas sp. Os17株およびSt29株のゲノム中に、推定バクテリオシン(抗菌性タンパク質)関連遺伝子群(Os1348~Os1351)とトランスポーター関連遺伝子群(Os1352~Os1355)が存在する。当該推定バクテリオシン関連遺伝子群は、既知のP. protegens(Pf-5株、CHA0株)および供試したP. protegens Cab57株のゲノム中には存在しない(図2)。 3.Os1348~Os1351のうち、Os1348は、85アミノ酸からなる低分子タンパク質をコードしており、アノテーション結果からバクテリオシンの骨格となる前駆体と予測され、下流の遺伝子(Os1349~Os1351)はその翻訳後修飾に関与する(データ略)。 4.大腸菌リコンビナントタンパク質を用いたX線結晶構造解析の結果、Os1348は6つのαヘリックスからなる新規タンパク質であり、二量体を形成する(図3)。 5.Os1348の欠損変異株は、野生株と比較して抗菌性が低い(図4)。抗菌性の評価には、植物保護細菌のスクリーニングに汎用される枯草菌を用いる。 |
成果の活用面・留意点 | 1.植物保護細菌のゲノム中には、抗菌性を司る新規二次代謝産物をコードする遺伝子が存在する。 2.ゲノムマイニングによる抗菌性に関与する遺伝子の確認は、抗菌性を有する微生物のスクリーニングに活用できる。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2020/nias20_s19.html |