麦類のストレス耐性遺伝子群

タイトル 麦類のストレス耐性遺伝子群
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター
研究期間 2016~2020
研究担当者 大野陽子
Behnam Derakhshani
Habtamu Ayalew
三科興平
田中剛
川原善浩
Bahram Maleki Zanjani
Karim Hasanpur
Hossein Jafary
発行年度 2020
要約 コムギ、オオムギは地域適応性が高いため、遺伝的多様性が高い。近年解読された麦類の参照ゲノムと豊富な遺伝資源を活用して有用な遺伝子を同定し、不良環境に適合する新しい品種を生み出すために、品種間比較発現解析を実施することでストレス耐性遺伝子群が明らかにされる。
キーワード コムギ、オオムギ、遺伝的多様性、環境ストレス
背景・ねらい コムギ、オオムギ等の麦類は世界中で栽培され、家畜の飼料、?油やビールなどの醸造、そして食用として利用されているが、麦類の生産は干ばつ等の環境影響を受けやすく、不良環境下でも安定な生産を可能にする強靭な系統の育種が求められている。一方で、近年麦類において特定の改良品種が広く普及することに伴って、地域の環境に適応した在来の系統は急速に失われており、在来系統が持つ多様性に富んだ遺伝子資源を活用して不良環境により適合した新しい品種を生み出す研究の必要性は極めて高い。本研究では実験室内での疑似的な乾燥ストレス条件下でのコムギおよびカドミウム暴露下でのオオムギについて遺伝子発現の網羅的解析技術(RNA-seq)を用いて品種間の比較遺伝子発現解析を実施し、遺伝子発現の視点から環境ストレスに係る品種特性を明らかにする。
成果の内容・特徴 1.乾燥耐性コムギ品種「Coltana296-52」と感受性品種「Tincurrin」の乾燥ストレス下における比較発現解析により、乾燥ストレス耐性に関与するコムギの遺伝子候補を同定する。さらに、複数のゲノムセットを持つコムギ(異質倍数体コムギ)で、それぞれのゲノム中に存在する対立遺伝子(同祖遺伝子)間の発現様式の違いを明らかにする。発現様式の違いに基づいて同定した遺伝子には、根の生長に関わる機能を持った遺伝子や細胞を保護する働きをする遺伝子が含まれている。それらの同祖遺伝子は低温、高温、高塩濃度ストレス下で発現様式が変化し、多様化した遺伝子構成に伴うその特有の環境適応メカニズムの存在が明らかとなる(図1)。
2.カドミウム暴露に対してオオムギ「Oregon Wolfe Barley 」(OWB)由来のRec系統が耐性、Dom系統が感受性であることを明らかにし、それらの系統間の比較発現解析を実施する。またOWB 系統集団のQTLマッピングによりカドミウム耐性に寄与するゲノム領域を同定し、その領域内の遺伝子発現情報とSNP情報を利用してカドミウム耐性に機能する候補遺伝子を明らかにする。
成果の活用面・留意点 1.異質倍数体コムギにおける複数の同祖遺伝子の発現様式の違いがコムギの環境ストレス耐性に関与している可能性が示される。コムギをモデルとした同祖遺伝子の比較発現解析は、植物に広くみられるゲノムの異質倍数性進化がどのようにゲノム機能の変化を起こし、環境適応性の向上につながったのかを解明するための新たな知見を提供する。これまでのコムギの遺伝子発現解析では、RNA-seqで得られたmRNA由来の配列断片をつなぎ合わせて解析を行ったが、ゲノム解読情報を活用することでmRNA配列断片のゲノム配列へのアセンブリが可能となり、遺伝子発現解析の精度向上と加速化が実現される。
2.環境ストレス耐性への関与が示唆される麦類の遺伝子や品種間配列差異の情報は、他の植物における分子育種の基盤情報としても活用できる。また、麦類における様々な環境ストレス下での遺伝子発現解析結果をイネなどの遺伝子発現解析データと比較することで、麦類とその栽培環境に特徴的なストレス適応性に関わる知見が得られ、麦類のさらなる環境ストレス耐性育種に寄与できる。
図表1 244748-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nics/2020/nics20_s16.html
カテゴリ 育種 遺伝資源 大麦 乾燥 せんぶり 品種

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる