X線CTを用いたポット植え作物根の非破壊・迅速可視化技術

タイトル X線CTを用いたポット植え作物根の非破壊・迅速可視化技術
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター
研究期間 2018~2020
研究担当者 寺本翔太
七夕高也
宇賀優作
発行年度 2020
要約 X線CTと画像処理を組み合わせることにより、ポット植え作物の根を非破壊・迅速に可視化できる技術である。土中の根の3次元構造を破壊することなく観測できる。
キーワード 根系、観測技術、3次元可視化、ハイスループット、時系列
背景・ねらい 作物の根系(土中の根の分布)は、養水分の吸収に影響を与えるため重要な育種形質である。しかし、比較的容易に観察できる地上部と違い、根は土中にあり観察が難しい。土から掘り起こすと根の3次元的な空間配置を壊してしまうため、根の形の情報が失われる。そこで、本研究では物体の内部を観察できるX線CT(computed tomography)装置と簡便な画像処理を組み合わせることにより、ポット植えの作物根系を土から出さずに非破壊・迅速に可視化する技術を開発する。
成果の内容・特徴 1.産業用X線CT装置(定格:135 W、最大管電圧:225 kV、最大管電流:1000 μA)を用いて作物根系のCT画像を従来よりも短時間で取得可能とする撮影条件である(要求する画質に応じて撮影時間は30秒~10分とする)。本技術は、作物根系の可視化に特化することで、使用したCTの最大検出幅に相当する直径20cmのポット中の作物根の可視化が可能である。
2.本成果で開発した画像処理プログラムは、取得したCT画像に対してワークステーション用CPU(48スレッド、2.20 GHz)を用いた場合、2分で作物の根系を可視化できる(図1)。CT撮影と合わせても最大15分程度で根系の可視化が可能である。画像処理プログラムは原著論文のSupplementary informationからダウンロード可能である。
3.本プログラムを用いることにより、根系の品種間差異を簡単に可視化できる(図2)。同じポットを繰り返し撮影することにより、根系の経時的な成長を観察できる(図3)。これにより、同一個体を用いて生育速度を評価することができる。
4.X線を繰り返し照射したイネは生育不良を示さない(図4)。X線の生育への影響を考慮する必要がなく、同一個体の根系の発達過程を評価できる。なお、10分間のCT撮影によるX線推定被ばく量は、植物の生育に影響を与えない「許容被ばく量」の100分の1以下であるため、他作物でも生育不良を示さないと予想される。仮に撮影許容回数を100回と考えた場合、1週間に1回の撮影を行ったとしても約2年間撮影でき、一般的な作物の栽培期間よりも十分に長い。
成果の活用面・留意点 1.本技術は根系の品種間差異に関する育種素材の発掘に利用できる。また、掘り出さずに非破壊で根の形状に基づく病気の診断などへの利用が期待できる。あらゆる作物の根の可視化に応用可能であるが、作物ごとにX線CT画像上で土と根の濃淡差が得られるように土の種類やポットのサイズなどの条件検討が必要である。
2.経時的に撮影することにより、生育途中で環境条件を変化させたときの根系の応答が観察できる。 例えば、異常気象(高温や干ばつなど)が根系にどのような影響を与えるかなどを調べることができる。根の生育はポットのサイズに影響を受けることから、比較的根が大きくない幼苗期の測定に適する。イネの場合、播種後4週間程度までは問題なく観測できる。
3.本技術は撮影条件が同じように設定できるX線CT装置であればどのメーカーでも構わない。また、閉鎖系の産業用CT装置を用いる場合は特別な資格を必要としない。
図表1 244752-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nics/2020/nics20_s12.html
カテゴリ 育種 画像処理 コスト 播種 品種

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