新たな植物配糖化酵素の発見とその利用

タイトル 新たな植物配糖化酵素の発見とその利用
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター
研究期間 2015~2020
研究担当者 石本政男
藤澤由紀子
下田宜司
平賀勧
Soo Yeon Chung
關光
野村勇太
村中俊哉
斉藤和季
発行年度 2020
要約 ダイズの機能性成分であるソヤサポニンやカンゾウの有効成分であるグリチルリチンの合成に必要なC3位グルクロン酸転移酵素は、セルロース合成酵素ファミリーから派生した新規な配糖化酵素である。本酵素を用いてこれら有用サポニンの微生物や培養細胞での生産が可能となる。
キーワード 共発現解析、グリチルリチン、グルクロン酸転移酵素、サポニン、セルロース合成酵素
背景・ねらい サポニンはトリテルペン炭素骨格に複数の糖が結合した化合物の総称で、多くの植物に含まれ、いくつかの化合物では健康機能性や食味との関連が報告されている。ダイズ種子に含まれるDDMPサポニンとその分解物は抗高脂血症作用、大腸がん細胞増殖抑制作用などが報告され、薬用植物カンゾウの根の有効成分であるグリチルリチンは肝機能異常や皮膚炎などの治療薬原料や砂糖の150~300倍の甘さを持つ天然甘味料として幅広く使用されている。
サポニンの生合成経路を育種的に改良したり、微生物で働かせたりすることにより、有用なサポニンを効率的に生産させることを目指して、その生合成経路が精力的に研究され、これまでに、ソヤサポニンおよびグリチルリチンの生合成に関わるほとんどの酵素が明らかにされてきた。しかし、多くのサポニンで共通するC3位の一つ目の糖であるグルクロン酸の転移酵素が未発見であり、国内外で長年探索が進められてきた。
成果の内容・特徴 1.既知のダイズサポニン合成系酵素遺伝子群と共発現する遺伝子群のネットワークに、セルロース合成酵素に類似した糖転移酵素の遺伝子(CSyGT1, cellulose synthase superfamily-derived glycosyltransferase 1)が見出される(図1)。
2.CSyGT1がコードするタンパク質はソヤサポゲノールB(SB)のC3位にグルクロン酸を転移し、ソヤサポゲノールBモノグルクロニド(SBMG)を生成する(図1)。
3.ミヤコグサにもダイズのCSyGT1に類似した遺伝子が存在し、この機能を失うとサポニンはほとんど検出されない。その機能を失ったミヤコグサにダイズ、ミヤコグサおよびカンゾウのCSyGTを導入するとサポニン合成能が回復することから、これらは、植物細胞においてもサポニンの生合成に必須である(図2)。
4.C3位グルクロン酸転移酵素(CSyGT)は、これまで植物の特化代謝物(二次代謝物)の配糖化酵素として知られているUDP糖依存型糖転移酵素(UGT)とは全く構造が異なる酵素である。
5.ダイズ、ミヤコグサおよびカンゾウのCSyGT導入した酵母を用い、これまで天然原料に依存してきたグリチルリチンの生産が可能である(図3)。
成果の活用面・留意点 1.サポニンの生合成に関わる複数の酵素の組合せにより、グリチルリチン以外の有用サポニンの生産に利用できる。
2.ダイズには3つのCSyGTがあり、ミヤコグサやカンゾウのCSyGTとともにそれぞれ基質特異性が異なることから、化合物に応じて使い分ける必要がある。
図表1 244753-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nics/2020/nics20_s11.html
カテゴリ 育種 機能性 機能性成分 大豆 良食味

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