地表根遺伝子qSOR1の同定と塩害水田向け品種育成への利用

タイトル 地表根遺伝子qSOR1の同定と塩害水田向け品種育成への利用
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター
研究期間 2009~2020
研究担当者 木富悠花
半澤栄子
久家徳之
井上晴彦
原奈穂
河合佐和子
菅野徳子
遠藤真咲
杉本和彦
山崎俊正
坂本真吾
千徳直樹
呉健忠
菅野均志
光田展隆
鳥山欽哉
佐藤雅志
宇賀優作
発行年度 2020
要約 qSOR1は根張りを制御するイネの新規遺伝子である。qSOR1は根を土壌表面に伸長させ、塩害水田で起こる土中の酸欠による被害の軽減に有効であり、塩害水田に適した品種の開発に利用できる。
キーワード 根系、遺伝子、塩害水田、DNAマーカー選抜、品種育成
背景・ねらい 近年の地球温暖化に起因する海面上昇による高潮やスーパー台風の頻発に伴う河口地域での海水の流入により、日本をはじめ世界の多くの沿岸地域で塩害によるイネへの被害が増加している。畑の塩害では土中の高濃度の塩が植物細胞にダメージを与える。一方、水田ではそのような塩自体の害に加えて、塩に由来する過剰なナトリウムイオンによって土壌の物理的な性質が悪化し、土壌の酸欠状態から根腐れなどの生育不良を起こす。しかし、従来のイネの耐塩性研究や品種改良では塩による直接的な害のみが対象となっており、土壌の酸欠状態には対応できない。
そこで、本研究では比較的酸素の多い土壌表面近くに張る根(地表根)に関与する遺伝子を同定し、塩害水田で起こる土壌の酸欠被害を軽減できる系統を開発する。
成果の内容・特徴 1.地表根を形成するインドネシアの水稲「Gemdjah Beton」から同定した地表根形成に関わる遺伝子(qSOR1)は第7染色体に位置する(図1A)。地表根を形成しない「ササニシキ」に「Gemdjah Beton」由来のqSOR1を導入した系統「qsor1-NIL」は水田で地表根を形成する(図1B)。
2.「qsor1-NIL」は、塩害水田でササニシキより15%以上の増収となる(図2)。一方、通常の水田では両者の収量に差はなく、草型、粒形、耐倒伏性についてもササニシキと明瞭な違いは見られないことから、塩害リスクのある地域における育種素材として有効である。
成果の活用面・留意点 1.本遺伝子型はインドネシアの一部の品種しか持っておらず、他地域の水稲には利用されていないため、日本を含めて世界中の多くのイネ品種に対し本遺伝子型は育種利用が期待できる。
2.本遺伝子は高潮などによる塩害の被害軽減に役に立つほか、重粘土水田や老朽化水田、排水不良水田など、酸欠になりやすい水田における根腐れ防止に役立つと期待できる。
3.本遺伝子と類似した相同遺伝子はイネ以外の多くの作物にも存在することから、国内外の水はけの悪い農地でのダイズやトウモロコシなどの畑作物の耐湿性改善にこれらの遺伝子は有効である。
図表1 244754-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nics/2020/nics20_s10.html
カテゴリ 育種 水田 水稲 耐湿性 大豆 DNAマーカー とうもろこし 品種 品種改良

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