ラオス淡水魚発酵調味料のヒスタミン生成は仕込み時の塩分調整で抑制できる

タイトル ラオス淡水魚発酵調味料のヒスタミン生成は仕込み時の塩分調整で抑制できる
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2016~2020
研究担当者 丸井淳一朗
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発行年度 2020
要約 ラオス農村世帯で生産・消費される淡水魚発酵調味料には製品ごとに塩分のばらつきがあり、低塩分の製品では高濃度のヒスタミンが生成される傾向がある。魚、塩、米糠の重量比を3:1:1となるよう混ぜ合わせる伝統的な製法に従い、仕込み時の塩分を18%程度に調整することにより、発酵に伴うヒスタミンの生成を抑制できる。
キーワード ラオス 淡水魚発酵調味料 塩分 ヒスタミン
背景・ねらい 淡水魚発酵調味料(ラオス名:パデーク)は内陸国ラオスの重要な食料資源である淡水魚を、塩、米糠とともに常温で半年から1年程度発酵させた伝統食品であり、グルタミン酸、リジン等の遊離アミノ酸を含む保存性の高い万能調味料として広く食されている。市場で流通する商業生産品とともに、農村世帯で生産・消費されるパデークは、身近な魚類資源を活かす栄養供給源としても重要である。一方、その発酵過程では、魚のタンパク質が分解して生じるアミノ酸の一種ヒスチジンが一部の細菌によりヒスタミンに変換されることがある。感受性には個人差があるが、500~1,000 ppm以上のヒスタミンを含む食品では、アレルギー様食中毒の懸念が生じる。パデークにおけるヒスタミン生成要因を解明し、抑制方法を普及することで、安全性の確保や食料廃棄の削減が期待できる。
成果の内容・特徴 1.ラオス農村世帯で生産、消費されるパデークの塩分には製品ごとのばらつきがあり、低塩分の製品で高濃度のヒスタミンが生成される傾向がある(図1)。
2.ラオスのパデーク生産者から聞き取った伝統的な製法に従い、魚、塩、米糠を3:1:1の重量比で配合して、塩分を18%としたパデークの発酵試験では、仕込みから26週間後までヒスタミンを検出しないが、10%または6.5%とした場合には、2~26週間後にかけて約400~1,100 ppmのヒスタミンが検出される(図2)。
3.パデークの仕込み日、使用開始日、材料魚種の記入欄と、上記配合での魚、塩、米糠の重量を記載した発酵管理・配合比早見表と(図3)、発酵容器ならびに塩を農村世帯へ配布し、パデークの製法についての説明会を実施した。説明会実施後に参加者が製造したパデークの塩分、ヒスタミン濃度の平均値はそれぞれ17.6%、181 ppmとなり、同村で説明会実施前に収集した試料の値 (13.3%、460 ppm)に比べ、統計的に有意な差が確認される(図4A, B)。
成果の活用面・留意点 1.伝統的な製法に従い、仕込み時の塩分を18%程度に調整することで、パデークのヒスタミン生成を抑制しアレルギー様食中毒のリスクを低減できる。
2.魚、塩、米糠の配合比を3:1:1とする発酵管理・配合比早見表の使用は、ラオス農村世帯で製造されるパデークのヒスタミン抑制に重要な、仕込み時の塩分調整に有効である。
3.仕込み時の塩分を18%程度に調整することは、パデークの発酵過程で耐塩性の低いヒスタミン産生菌の抑制に効果を示すが、仕込み前の魚のヒスタミン生成を抑える鮮度管理や、耐塩性の高いヒスタミン産生菌等の混入を抑制する製造時の衛生管理にも留意する必要がある。
図表1 244826-1.png
図表2 244826-2.png
図表3 244826-3.png
図表4 244826-4.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_c04
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