タイトル | 造林地のシカ密度に応じた防除資材の選択基準を明らかにしました |
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担当機関 | (国)森林総合研究所 |
研究期間 | ---- |
研究担当者 |
飯島 勇人 岡 輝樹 渡辺 康文 久保田 拓也 |
発行年度 | 2020 |
要約 | シカによる林業被害の防除資材として忌避剤や柵が用いられていますが、その効果はシカ密度によって異なります。本研究では、シカ密度に応じた防除資材の選択基準を明らかにするために、全国の水源林造成事業地のデータを解析しました。植栽した幼齢木の被害率を50%未満とすることを目標とした場合、忌避剤が有効なのは密度が5頭/km2未満の場合でした。また、密度が5~20頭/km2では標準的な仕様の柵、20~40頭/km2ではできるだけ効果の高い仕様の柵が必要でした。防除効果を高めるためには、ステンレス入りで網目が細かく、地表部分を覆うスカートが一体型になったネットを高い位置から設置することが有効です。 |
背景・ねらい | 近年、ニホンジカ(以下、シカ)の個体数が増加しています。2018年度の調査では、シカによる林業被害面積は約4,200haに及んでいます。そのため、シカによる被害を効率的に防除することは、持続的な林業経営に必要不可欠です。シカによる被害を防除する資材として主に忌避剤や柵が用いられていますが、その効果はシカ密度によって異なると考えられます。しかし、シカ密度と防除効果の関係はこれまで明らかにされておらず、現場での防除資材の選択は担当者の判断に委ねられているのが現状です。そこで本研究では、シカ密度に応じた防除資材の選択基準を明らかにすることを目的とし、森林整備センターが2018年に造林地を対象に実施した調査データの内、約1,200件を解析しました。この調査では、各造林地でのシカによる植栽木の被害率、施用・設置した防除資材の種類や仕様が調べられています。 |
成果の内容・特徴 | ■シカ密度と防除効果の関係 解析の結果、植栽から8年以内の幼齢木の被害率を50%未満とすることを目標とした場合、シカ密度が5頭/km2未満では忌避剤、5~20頭km2では現在の標準的な仕様の柵、20~40頭/km2では下記で示すようなできるだけ効果の高い仕様の柵が有効であり、それ以上のシカ密度の場合は忌避剤や防鹿柵では被害率を50%未満にするのは困難なことが分かりました。また柵の仕様については、ステンレス入りで網目が細かいネットを高い位置(2m)から設置すること、さらに柵下部の地表面を覆うスカート部分がネットと一体型となっているものを用いることで防除効果が高まりました(図1)。この結果は、シカは柵を飛び越えるだけでなく、ネットを噛み切ったり、ネット下部から潜り込んだりすることで柵内に侵入することを意味しています。一方、柵の支柱の素材、造林地の面積、造林地の最大傾斜度、植栽樹種は防除効果に大きな影響を与えていませんでした。 ■シカ密度に応じて防除方法を使い分けよう 以上を踏まえ、今後、造林地において防除資材を施用・設置する場合の、造林地周辺のシカ密度に応じた防除資材や柵の仕様の選択基準を作成しました(表1)。この表が示すように、シカ密度が40頭/km2を超える造林地では、防除資材のみで被害率を50%未満とすることが困難なため、柵の設置とあわせてシカの捕獲を実施する必要があります。 ■研究資金と課題 本研究は、実施課題「野生動物管理技術の高度化」による成果です。また、森林整備センターとの共同研究です。 ■専門用語 忌避剤:シカによる食害を防ぐために樹木に散布または塗布し、摂食を阻害する薬剤のこと。ジラム水和剤(製品名:コニファー水和剤)、全卵粉末水和剤(製品名:ランテクター)等が使われている。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p18-19.pdf |
カテゴリ | 管理技術 経営管理 シカ 防除 薬剤 |