木質由来の天然新素材「改質リグニン」を用いた新機能性樹脂材料

タイトル 木質由来の天然新素材「改質リグニン」を用いた新機能性樹脂材料
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 大橋 康典
髙田 依里
山田 竜彦
木村 肇
大塚 恵子
米川 盛生
発行年度 2020
要約 私たちは、スギ材から取り出された新しい材料である「改質リグニン」を用いた研究開発を進めています。これまでに、様々な材料との組み合わせで既存品よりも優れた強度や耐熱性をもつ試作品の開発に成功してきましたが、今回、改質リグニンを化学反応によってほかの樹脂と結合させることにより、更なる物性の向上を目指しました。その結果、単なる性能向上にとどまらず、「耐熱性と柔軟性の両立」という、従来品では困難であった機能の実現に成功しました。現在、この新しい材料の用途開発と評価を進めています。
背景・ねらい  木材は、5割程度のセルロース、2~3割程度のリグニンおよびヘミセルロースから構成されています。セルロースは、紙やセルロースナノファイバーの原料として知られていますが、リグニンの工業製品としての利用は極めて限定されています。これは、リグニンの化学構造が複雑かつ多岐にわたるため、品質の安定性を要求される化学原料としては利用しにくいためです。しかしながら、芳香核という化学的に強固な構造を有する、天然では稀有な存在であるリグニンを利用しないのはもったいないと考えられます。そこで私たちは、製紙産業とは異なった化学プロセスを用いることで、リグニン構造が比較的一定であるスギ材から化学原料として利用可能なリグニン材料を取り出すことに成功しました。これが「改質リグニン」です。これまでに多数の応用製品を試作してきましたが、令和元年度も、改質リグニンを利用した飛行機用部材やスピーカーコーン、ジビエストレッチャー(捕獲した鳥獣類を運び出す際に使う機器)等、既存製品を上回る物性を有する開発品を多数試作してきました(図1)。スピーカーについては、改質リグニン利用製品第一号として開発元のオオアサ電子株式会社より販売が開始されています。
成果の内容・特徴 ■改質リグニンの新たな機能発現を目指して 
その一方で、改質リグニンを様々な樹脂類と混ぜて使う際には、それらとの相性によっては混ざりにくく、強度等の低下を引き起こす場合もあります。そこで、改質リグニンそのものを樹脂にするべく、フェノール樹脂構造を化学的に付与して成形品を試作したところ(図2)、市販の汎用フェノール樹脂を用いた時と比べて様々な物性が向上し、特に耐熱性を低下させることなく柔軟性を付与することに成功しました(図3)。本来、この二つの物性は相反する関係となっているため、市販されている各種製品では添加剤を加えることで弱点を補っています。しかし、本成果を用いることで、高価な添加剤を使用しなくてもよくなるため、コストダウンにもつながります。
■最後に 
改質リグニンは、天然由来の素材であることからSDGs達成に貢献できることは勿論の事、既存の化石資源由来の樹脂を上回る物性が期待できます。私たちは、改質リグニンを地球の将来を担う新素材として育てるべく、更なる応用研究を進めていきます。
■研究資金と課題 
本研究は、JSPS科研費(JP19K06178)「有機-無機ハイブリッド化による植物由来超高耐熱材料の創製」による成果の一部です。
■文献
大橋康典(他) 樹脂組成物. 特願2020-014946.大橋康典(他) ノボラック型フェノール樹脂および樹脂組成物. 特願2020-014947.
図表1 244848-1.png
図表2 244848-2.png
図表3 244848-3.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p34-35.pdf
カテゴリ 機能性 コスト

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