ビタミンD4、D5、D6、D7の腸管吸収性と予想される機能

タイトル ビタミンD4、D5、D6、D7の腸管吸収性と予想される機能
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門
研究期間 2016~2021
研究担当者 小竹英一
今場司朗
長谷恵
発行年度 2021
要約 ヒト腸管モデル細胞を用いて6種類のビタミンDの腸管吸収性を評価する。ビタミンD5が他より吸収性が低いが他の5種類は同等である。リゾリン脂質は全ビタミンDの吸収を促進する。吸収後に代謝されて機能を発揮する。計算科学的手法により機能を見積もる。
キーワード ビタミンD、Caco-2、混合ミセル、リン脂質、PASS online
背景・ねらい ビタミンDはカルシウムの腸管吸収に加えて様々な機能が報告されている。日光(UVB)により皮膚でビタミンD3を生合成できるが、地理・季節的要因に依存し、日焼け予防や加齢により皮膚が薄くなっても産生しにくい。ビタミンDは食事から摂取できるが、きのこにビタミンD2、魚介類にビタミンD3というように含有食品は限定される。野菜と果物には含まれていないため菜食主義者ではビタミンDを摂取できない。妊婦のビタミンD不足は胎児へも影響する。以上のことから、ビタミンD不足・欠乏によるクル病や骨軟化症が懸念されているだけではなく、様々な疾病とのかかわりも指摘されている。ビタミンDには、図1に示すD4-7も知られている。D5-7の前駆体は植物ステロールの7-デヒドロ体であり、これらが野菜や果物に含まれる可能性も考え、次の2つの視点からビタミンDについて腸管吸収性を評価する:i)ビタミンD2、3以外の種類の腸管吸収性(摂取食品の多様化の可能性)、ii)リゾリン脂質によるビタミンDの腸管吸収促進(少ない摂取機会での吸収効率化)。ビタミンDは吸収後に代謝されて機能を発揮するので、代謝産物の機能をPrediction of Activity Spectra for Substances (PASS)onlineにてシミュレーションする。
成果の内容・特徴 1. ビタミンD5-7の試薬は市販品がないため、本研究では植物ステロールを出発物質として有機合成して得る(図1)。ビタミンD4、6、7も摂取すると、D2、3と同レベルで吸収できる可能性がある(図2左)。また、リン脂質の消化管内での加水分解物であるリゾリン脂質は6種類全てのビタミンDの吸収を促進する(図2右)。
2. リゾリン脂質による促進メカニズムは細胞間結合に作用して細胞との接触面積を増やすことであり、他の脂溶性成分に対しても適用できる可能性がある。
3. ビタミンDは肝臓と腎臓で活性化体へ変換され、これが機能を発揮する(図3)。
4. 活性化体の機能をPASS onlineにより検討した(表1)。入力した構造式から機能が見積もられ、「活性」と「数値」が出力される。表内の「活性」下部が機能を示し、表右側の数値は1.0に近いほど、機能の活性が高いと見積もられる。ただし、PASSでは光学異性体を区別しないため、ビタミンD4、7は同じと見なされる。
成果の活用面・留意点 1. 様々なビタミンDの摂取機会を増やすことはビタミン不足・欠乏の予防になる。ビタミンD4は2012年、ビタミンD5は2018年に天然物中に含まれることが報告されている。ビタミンD6、7についても今後の報告が待たれるが、食品に含まれるのは前駆体でよく、食品に日光(UVB)をあてた後で摂取する。前駆体は(7-デヒドロコレステロールを除いて)おそらく腸管吸収できない。
2. ビタミンDはリン脂質と同時摂取することで、少ない摂取機会でも効率よく吸収できる可能性がある。
3. ビタミンDの活性化体への酵素的代謝変換にはマグネシウムや腸内細菌が重要な影響を及ぼすことが報告されている。したがって、ビタミンDを大量に摂取しても、それに比例して機能を発揮するわけではない。
4. ビタミンD4-7はD2、3に匹敵する機能を有する可能性がある。今後の実験的な機能評価が期待できるが、吸収性も含めて動物試験やヒト試験で検討を重ねる必要がある。
図表1 248925-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nfri/2021/nfri21_s01.html
カテゴリ ICT

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