タイトル | 養豚廃水処理施設に自然発生し優占化するアナモックス菌の特徴 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門 |
研究期間 | 2013~2021 |
研究担当者 |
和木美代子 石本史子 須藤立 長峰孝文 松本敏美 上西博英 安田知子 福本泰之 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 養豚廃水処理施設で優占化するアナモックス菌は、Candidatus (Ca.) Jettenia またはCa. Brocadiaに含まれる3種が優占種である。これらは、曝気槽の溶存酸素濃度が1mg/L以下といった低い濃度の場合によく見いだされる。 |
キーワード | 養豚廃水、活性汚泥処理、溶存酸素濃度、窒素除去、アナモックス菌 |
背景・ねらい | アナモックス反応はPlanctomycetes門に属するアナモックス菌により起こり、アンモニアと亜硝酸を約1:1で消費し、窒素ガスを発生させることができる。その窒素ガスの発生において、従来の脱窒反応のように有機物(BOD)を消費しないことから、有機物/窒素比の低い畜産廃水からの窒素除去への利用が期待されている。 養豚廃水処理施設においてアナモックス菌が高濃度に自生する事例3戸について報告されている(2018年研究成果情報)。しかし、それらの施設の条件や、優占化するアナモックス菌の微生物学的特徴については明らかとなっていない。今回、養豚廃水の活性汚泥処理施設の曝気槽や沈殿槽の内壁にアナモックス菌であると予想される赤色バイオフィルムが存在する事例が8戸見いだされた。そこで、それらの施設の情報を整理し、またアナモックス菌の微生物学的特徴について明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 茨城県、埼玉県、静岡県、および宮崎県における8戸の養豚農家の活性汚泥処理施設で見いだされた赤色バイオフィルムを調査した(図1)。曝気槽および沈殿槽の壁面もしくは浮遊状態で見られた赤色バイオフィルムは、57-843μmo-N2/g-強熱減量/hrのアナモックス活性と、4.3×108-1.6×1012copy/g-強熱減量のアナモックス菌の16S rRNA遺伝子を含み、赤色バイオフィルムは高濃度のアナモックス菌を含むと言える。アナモックス活性はアナモックス菌16S rRNA遺伝子濃度と正の相関を示す(図2)。 2. 菌相解析の結果、アナモックスバイオフィルムは、アナモックス菌が含まれるPlanctomycetes 門(3-62.5% )を含む。優占種は、Candidatus (Ca.) Jettenia asiatica、 Ca. Brocadia flugida、 Ca. Brocadia caroliniensis のいずれかに近縁である(図3)。アナモックス菌は現在6属が提案されているが、これら3種は有機物代謝能力の保持が確認または示唆されており、有機物濃度の高い養豚廃水処理施設における自然集積に適していると考えられる。 3. アナモックスバイオフィルムが存在する施設は、汚水の流れについては回分式活性汚泥、単槽型連続処理、多段型連続処理が含まれている(表1)。曝気方式においては間欠曝気と連続曝気の両方が存在したが、間欠曝気の曝気サイクルは12時間と長めである。汚泥保持手段として膜分離活性汚泥処理も用いられている。また、曝気槽中溶存酸素濃度は1 mg/L 以下(多くは0.5 mg/L以下)のように、一般の溶存酸素濃度推奨値(2mg/L)よりも低い傾向がある。アナモックス菌の集積においては、特定の処理方式である必要は無いが、多段型連続処理で低溶存酸素濃度の連続曝気の割合が高いと言える。 |
成果の活用面・留意点 | 1. アナモックスリアクターの運転条件に利用することができる。 2. 赤色の微生物はアナモックス菌以外にも存在することから、遺伝子の検出、定量評価等で確認する必要がある。 3. 曝気槽や沈殿槽の汚泥を採取するときは浄化槽への転落などに配慮し、安全性に注意する必要がある。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nilgs/2021/nilgs21_s02.html |
カテゴリ | アナモックス菌 豚 |