タイトル | 豚レンサ球菌の血清型の相違は動物への病原性に影響する |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 |
研究期間 | 2016~2022 |
研究担当者 |
大倉正稔 Jean-Philippe Auger 芝原友幸, Guillaume Goyette-Desjardins Marie-Rose Van Calsteren 丸山史人 河合 幹彦 大崎慎人 Mariela Segura Marcelo Gottschalk 高松大輔 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 豚レンサ球菌の自然形質転換能と莢膜の有無を判別するスクリーニング技術を用いることで本菌の血清型を人工的に変換することができる。豚レンサ球菌の血清型を変換すると動物への病原性が変化する。 |
キーワード | 豚レンサ球菌、血清型、抗原性変換、病原性、免疫応答 |
背景・ねらい | 豚レンサ球菌は豚や人に髄膜炎等の重篤な疾病を起こしうる人獣共通感染症の起因菌である。本菌は菌体表層の莢膜の抗原性により、30以上の血清型に分けられており、血清型2型は病豚や患者から最も高頻度に分離される。莢膜は本菌において、病原性にも関与することが明らかになっているが、ほとんどの報告が2型の株によるもので、他の血清型についての情報は乏しく、血清型の相違が病原性にどのように影響するかについては全くわかっていない。本菌では、血清型が異なる株間では、通常、血清型以外の遺伝学的背景も大きく異なる。したがって、血清型の違いが菌の病原性にどの程度影響しているのかを評価するためには、遺伝的背景が同一で血清型だけが異なる株間で比較する必要がある。特定の豚レンサ球菌株から血清型だけを変換した株を作ることができれば、そのような比較が可能であるが、本菌の血清型を変えるためには、10以上の莢膜合成関連遺伝子を全て別の血清型のものと交換する必要がある。しかし、そのような方法は確立されていない。 そこで、本研究では豚レンサ球菌の莢膜合成関連遺伝子を異なる血清型のものと交換し、血清型を変換した株を作出する方法を開発し、血清型2型株の血清型を変換した株を作出する。また、動物への感染試験(in vivo)やin vitroの実験系により、元の血清型2型株と血清型変換株の病原性を比較し、血清型の相違が豚レンサ球菌の病原性に影響するかを明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 豚レンサ球菌の自然形質転換能と莢膜の有無を判別するスクリーニング法を用いることで、血清型2型株を3型、4型、7型、8型、9型及び14型に変換することができる。 2. 豚レンサ球菌は血清型が変わることにより、豚上皮細胞への付着率、宿主血中での生残性およびマウス樹状細胞からのサイトカイン産生誘導能が変化する。すなわち、血清型の相違は宿主細胞との相互作用にも影響する(図)。 3. 特に、2型から8型に変換した株は2型株よりも宿主血中での生残性が高くなることで、強毒化する。一方、3型や4型に変換すると血中での生残性が低下し、2型よりも弱毒化する(図)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本研究で開発した血清型変換法では、少数ではあるが莢膜合成関連遺伝子以外の遺伝子にも変異が入り、その変異が菌株の病原性などに影響を及ぼしている可能性がある。そのような変異の影響についても精査していく必要がある。 2. 2型強毒株が8型に変わることにより、より強毒化する可能性が示唆されるため、今後、そのような血清型変換株が出現しないかを監視していく必要がある。 3. 血清型により病原性が変化した要因について、莢膜の構造が影響しているのかを明らかにする必要がある。 4. 本菌については2型の不活化ワクチンが市販されているが、他の血清型株への効果は低いと考えられている。本研究成果は今後、他の血清型にも対応した本菌防除法開発の一助になる。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/niah/2021/niah21_s19.html |
カテゴリ | 豚 防除 |