豚に高い親和性を示す非典型的な口蹄疫ウイルスの伝播リスク

タイトル 豚に高い親和性を示す非典型的な口蹄疫ウイルスの伝播リスク
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
研究期間 2019~2020
研究担当者 西達也
森岡一樹
川口理恵
山田学
生澤充隆
深井克彦
発行年度 2021
要約 血清型OトポタイプCATHAY株に感染した豚は、症状を示す前から豚の最小感染量を大幅に超えるウイルスを排泄している。一方、牛は同株に感染しても明確な症状を示さずウイルス排泄量も限定的である。これらの知見は口蹄疫発生時の適切な診断体制の構築と防疫対策に貢献する。
キーワード 口蹄疫ウイルス、動物感染実験、感染動態、ウイルス排泄
背景・ねらい 口蹄疫ウイルスは血清型や株により抗原性や病原性が異なり、中でも血清型OトポタイプCATHAYウイルス株は台湾、中国、東南アジアの養豚農場で流行し、豚に高い親和性を持つと言われるがその性状には不明な点が多い。また、抗原性が他株と異なり既存のワクチンによる効果が低いため、まん延防止措置は殺処分と移動制限が中心となる。まん延防止措置策定には本ウイルスの伝播リスクを推量することが重要であるが、本ウイルスに感染した動物からのウイルス排泄、抗体産生の量と時期については知見が乏しい。本研究では、知見の乏しい本ウイルスについて実験的に豚および牛に感染させ、感染動態を明らかにする。
成果の内容・特徴 1. 豚に対し血清型OトポタイプCATHAY株を自然感染を模した嚥下により投与した場合、105.5 TCID50(50%細胞感染価)以上を投与した群で感染が成立する。感染した豚は発熱、歩行困難、蹄および鼻と口周辺で水疱形成が見られる(図1A)。
2. 典型的な口蹄疫と同様、感染した豚の血清、唾液、鼻汁中のウイルス量は、明らかな症状が出る前日に最大量となり1mlあたり108 TCID50以上に達する。その後中和抗体の産生に伴い発症から5日以内にウイルス量は検出限界を下回る(図2A)。
3. 同株を舌皮内に107.0 TCID50接種した黒毛和種牛は発熱、水疱形成等の症状を示さない(図1B)。血清、唾液および鼻汁中のウイルス量は豚への感染量である105.5 TCID50に満たず、中和抗体の産生に伴い発症から3日以内に検出限界を下回る(図2B)。
4. 無症状かつ排泄ウイルス量が少ないため、感染牛を臨床所見やウイルス抗原の検出によって摘発することは難しい可能性がある。一方で、血中の中和抗体およびELISA抗体は豚と同時期に検出が可能であるため、抗体サーベイランスは有効である。
成果の活用面・留意点 1. 典型的には、牛は口蹄疫ウイルスに最も感受性が高く症状を顕著に示す動物の一つで「検出器」と称されるが、血清型OトポタイプCATHAYのウイルスにおいてはそれが成立しない非典型的な株であることを実証した。
2. 本課題で得られた成績は、口蹄疫発生時の適切な診断およびサーベイランス体制の構築と防疫対策に貢献する。
図表1 248961-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/niah/2021/niah21_s09.html
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