タイトル | 薬剤耐性遺伝子領域の重複は大腸菌の薬剤耐性を増強する |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 |
研究期間 | 2018~2020 |
研究担当者 |
玉村雪乃 岩田剛敏 渡部綾子 新井暢夫 楠本正博 丹羽秀明 木下優太 内田英理 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 国内の競走馬由来大腸菌において、第3世代セファロスポリン系抗菌剤に耐性を示し、染色体上に当該薬剤の耐性遺伝子を保有する株が認められる。このうち、当該遺伝子を含む薬剤耐性遺伝子領域の一部が重複している株では、より高濃度の抗菌剤に耐性を示す。 |
キーワード | 薬剤耐性、大腸菌、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ、競走馬 |
背景・ねらい | 薬剤耐性菌、特に第3及び第4世代セファロスポリン系抗菌剤に耐性を示す、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌が世界的に問題となっている。ウマにおけるESBL産生菌の保有状況は世界各国で報告されているが、分離株のESBL遺伝子周辺の遺伝子構造の詳細な解析は行われておらず、ウマ由来株における薬剤耐性獲得のメカニズムは明らかにされていない。本研究ではウマ由来大腸菌の薬剤耐性獲得メカニズムを明らかにすることを目的とし、2001~2018年に国内の病気の競走馬から分離された大腸菌のうち、第3世代セファロスポリンに耐性を示したESBL産生株2株(E148株及びE189株)についてゲノム解析を実施する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 2株おいてESBL遺伝子は、その他の複数の薬剤耐性遺伝子とともに染色体上の一領域に存在している。当該領域の大部分は海外のウマ由来大腸菌が保有するプラスミドpEQ1と類似し(図1)、大腸菌の染色体にpEQ1上の薬剤耐性遺伝子領域が挿入されて、E148及びE189が生じたことが考えられる。 2. E189株では、ESBL遺伝子を含む薬剤耐性遺伝子領域の一部が、2コピー存在する(図1)。このことからE189株は、E148類似株の薬剤耐性遺伝子領域の一部が重複して生じたと考えられる。また、E189株はE148株と比較して高濃度のセフチオフル(第3世代セファロスポリン系抗菌剤)に耐性を示す(表1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 薬剤耐性遺伝子周辺の構造に関する情報は、新たな薬剤耐性菌検出法の開発に利用できる可能性がある。 2. 抗菌剤を用いた治療による選択圧が、薬剤耐性遺伝子領域の重複に関連した可能性があることに留意し、抗菌剤の慎重使用を徹底する必要がある。 3. ESBL遺伝子を保有するプラスミドが海外の複数の国の馬由来株で検出されている。馬由来株間で本薬剤耐性遺伝子領域が維持されている可能性があることから、今後も分離株のモニタリングを継続して本遺伝子領域の拡散に注意する必要がある。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/niah/2021/niah21_s04.html |
カテゴリ | 馬 耐性菌 モニタリング 薬剤 薬剤耐性 |