タイトル | 黒毛和種におけるカラードプラによる黄体機能の推定 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 | 2015~2018 |
研究担当者 |
竹之内直樹 伊賀浩輔 法上拓生 阪谷美樹 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 黄体の血流面積(blood flow area: BFA)は黄体組織における血管の進行性ならびに退行性変化をよく反映して推移し、発情周期中ではBFAと血中黄体ホルモンとの相関は高く、黄体のBFAは黄体機能を推定する指標となる。 |
キーワード | ウシ、超音波画像診断、黄体、カラードプラ、黄体ホルモン |
背景・ねらい | ウシの生殖器観察は適正な繁殖管理に有用であり、特に妊娠の成立維持や発情周期の同調で使用するホルモン剤の感受性に強く関連する黄体の状態または機能を把握することは重要である。黄体機能の正確な把握のためには黄体を分泌母地とする血中黄体ホルモンの測定が有効ではあるが、その測定は研究機関等に限定され、生産現場で簡便に実施可能な手法の開発が求められている。 そこで、本研究では、ヒト循環器領域の超音波画像診断として普及定着している二次元断層面画像上に生体内の血行動態に色を付与しリアルタイムに観察できるカラードプラの活用により、ウシの黄体機能を客観的に把握できる技術を開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1. カラードプラ画像はプローブの走査ビーム面に近づくまたは遠ざかる赤血球からの反射信号をそれぞれ暖色系(赤)、寒色系(青)で表示し、黄体では両色調が混在し黄体を取り囲むように描出される。BFAは黄体上のカラードプラ面積を意味し、黄体開花期では最も大きく観察される(図1 1a-c)。黄体退行期ではBFAは急激に減じ発情日までに消失する(図1 2a-c)。黄体発育期では排卵翌日にはBFAが出現し(図1 3a-b)、日数経過に伴いBFAは拡大する(図1 4a-c)。 2. 黄体ホルモンの分泌が開始していない排卵翌日でのBFA出現(図1 3a)や黄体退行期の色調の単色化(図1 2b)はカラードプラ画像での特徴的所見であり、黄体組織に分布する血管の進行性や退行性変化を反映するものである。 3. 発情周期中のBFA推移は黄体ホルモン推移とよく一致する(図2)。特に黄体退行期での低下は黄体直径より黄体ホルモンと一致して低下する。 4. 黄体BFAと血中黄体ホルモン濃度とを比較すると、黄体発育期、黄体退行期~発情日の順に相関は高く、発情周期全体では高い相関(r = 0.7901、 P < 0.001)を認め(図3)、黄体のBFAから黄体機能を推定することができる。なお、黄体開花期では相関性は認めないが、BFAは発情周期中で最大値を維持しており、このことは黄体開花期であることの診断基準となる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. プローブ(指先探触子EUP-F531、日立アロカメディカル、東京)を装着した超音波画像診断装置(HI VISION Avius、日立アロカメディカル、東京)を用い、カラードプラモードはB-mode frequency: 9-3 MHz、digital harmonic imaging; gain: 27; dynamic range: 70; color doppler frequency: 5 MHz; gain: 39; velocity: 14.9 cm/sの条件下により実施。本条件下で実施することが、マニュアルとして適切である。 2. BFA画像は、カラードプラモードによりBFA最大の周辺断面を3画像取得。BFA計測はPixel Flux(Chameleon Software GMBH、Germany)により行い、3画像の平均値をBFAとして算出。 3. ウシにおけるカラードプラ技術については、受胚牛の選抜、交配後14日目の超早期妊娠診断、交配後21日前後の妊娠診断(不受胎牛の摘発)ならびに卵巣を原因とする繁殖障害の診断・予後判定等への利用が期待できる。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/karc/2021/karc21_s01.html |
カテゴリ | カラー 繁殖性改善 |