茶園の窒素利用効率の向上と緑茶の消費スタイルの変化による窒素環境負荷の減少

タイトル 茶園の窒素利用効率の向上と緑茶の消費スタイルの変化による窒素環境負荷の減少
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門
研究期間 2016~2020
研究担当者 廣野祐平
佐野智人
江口定夫
発行年度 2021
要約 日本で消費される緑茶の仮想窒素係数(VNF)は、1991年の54.5から2016年には30.8に減少した。この窒素環境負荷の減少は主に、茶園での生産時の窒素利用効率の向上と、ドリンク茶、抹茶・粉末茶の消費量の増加に伴う、消費者による緑茶からの窒素摂取効率の向上によるものである。
キーワード 窒素利用効率、仮想窒素係数、ドリンク茶、抹茶、茶殻
背景・ねらい 農地への窒素肥料の過剰な投入は、周辺水系の窒素汚染や温室効果ガスでありオゾン層破壊物質でもある一酸化二窒素の発生など、さまざまな環境問題を引き起こすことが報告されている。面積当たりの窒素施用量が特に多い茶栽培では、窒素汚染対策のために窒素施肥量の削減が進められてきた。また、近年は、食生活などの食品の消費スタイルも環境への窒素負荷に大きな影響を及ぼすことが明らかになっており、環境へ排出される窒素負荷の低減のためには、農地に加えて消費まで含む窒素フローを適正化することが必要である。本研究では、人間の生産・消費活動に伴う窒素負荷の程度を表す指標である仮想窒素係数(VNF、定義は後述)を用いて、1965年から2016年に日本で消費された緑茶の生産と消費に関する窒素フローの長期変遷を評価し、その変動要因を明らかにする。
成果の内容・特徴 1. 緑茶の生産から消費に伴う窒素フローを次のように扱う(図1)。茶園に施用された肥料中の窒素は、一部が収穫物として茶園から持ち出され、残りは土壌から溶脱するか大気中に排出されるとみなす。茶葉の種類として、一番茶、二番茶、三番茶、四番茶、秋冬(春)番茶、玉露、かぶせ茶、てん茶の8種類を考慮し、茶の消費方法は、急須またはティーバッグで抽出、抹茶・粉末茶、ドリンク茶(ペットボトル等)の3種類とする。緑茶の輸出入も考慮する。
2. 窒素利用効率(NUE)は、茶園への窒素施用量を分母、収穫物として茶園から持ち出される窒素量を分子とする比である。海外での茶園におけるNUEは、日本と同じ値を使用した。VNFは、消費者が摂取する緑茶に含まれる窒素量を分母に、緑茶の生産・消費活動に伴い環境中へ排出される窒素量を分子とする比である。
3. NUEは、1965年から1991年までは減少、1991年から2004年までは増加、2004年以降は徐々に減少する傾向が見られる(図2b)。1965年から1991年にかけてNUEが減少した原因は、主に茶園における窒素施肥量の増加による。1991年から2004年までのNUEの増加は、茶園における施肥窒素量の減少と収穫物として持ち出される窒素量の増加(図2a)によって、2004年以降のNUEの減少は収穫物として持ち出される窒素量の減少によって説明できる。
4. 日本で消費される緑茶のVNFは、1965年から1991 年まで増加し、1991年に54.5を示した(図2c)。これは、茶園における生産時のNUEが減少したことによる。1991 年から 2004 年にかけてVNFは減少し、2004年に30.8になった。これは、生産時のNUEの増加およびドリンク茶、抹茶・粉末茶の消費量の増加を反映している。
5. 日本で流通する緑茶に含まれる窒素のゆくえとして、茶殻として環境中に廃棄される窒素の割合が最も大きい(図3)。このため、茶殻を廃棄せずに飼料や堆肥としてリサイクルすることは、茶生産・消費に起因する窒素環境負荷を低下させるために有効である。
6. 近年、緑茶に含まれる窒素のゆくえに対して消費者の窒素摂取量の割合が高まっている原因は、ドリンク茶、抹茶・粉末茶の消費量が増えたことで、消費者による緑茶からの窒素摂取効率が向上したことによる(図3)。
7. 1991年には、緑茶に含まれる窒素のほとんどが煎茶として摂取されていたが、その後、ドリンク茶、抹茶・粉末茶の寄与が増加した(表1)。2004年以降、消費者の窒素摂取量は減少し、特に煎茶からの摂取量が大幅に減少した。
成果の活用面・留意点 1. 本成果は、農地から食卓までの緑茶の流通の中で、窒素負荷低減に有効な生産・消費スタイルを検討する際の基礎データとして活用できる。
2. 本研究で推定された緑茶のVNFは、穀類、豆類、野菜、魚などの他の食品のVNFよりも高く、日本で生産される牛肉のVNFと同程度であった。これは茶園でのNUEが低いことに加え、茶の消費の大部分は、カフェイン、テアニン、その他の遊離アミノ酸などの可溶性窒素の一部のみが抽出されたものが消費者に摂取されるという形であることに起因している。
図表1 249046-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nifts/2021/nifts21_s13.html
カテゴリ 肥料 施肥 てん茶 抹茶 輸出

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