シロイヌナズナを用いた積雪下の病害抵抗性を分子生物学的に解析できるモデル実験系

タイトル シロイヌナズナを用いた積雪下の病害抵抗性を分子生物学的に解析できるモデル実験系
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2006~2021
研究担当者 佐々木健太郎
今井亮三
宇梶慎子
梅木菜月
星野保
佐分利亘
松井博和
発行年度 2021
要約 シロイヌナズナを用いて、コムギ等越冬性作物の重要病害である雪腐病に対する抵抗性を評価できる実験系である。本実験系とシロイヌナズナの変異体等豊富な実験リソースを用いることにより、品種改良に必要な雪腐病抵抗性のメカニズム解明の進展が期待される。
キーワード 雪腐病、シロイヌナズナ、低温馴化、ジャスモン酸、エチレン
背景・ねらい 積雪下で増殖する好冷性糸状菌等により引き起こされる雪腐病は、北海道などの積雪地帯におけるコムギ等越冬性作物の主な減収要因である。雪腐病の被害が拡大すると廃耕になる危険性があるため、一般的に農薬による防除が毎年行われている。そのため、雪腐病に対して強い抵抗性をもつコムギ品種等の開発が望まれている。しかし、積雪の深さや場所などの環境的要因により被害の程度が異なるため、品種改良に必要な抵抗性個体を選抜するのは非常に困難である。また、雪腐病菌は目に見えない積雪下で感染が進行するため、他の植物病原菌と比べて品種改良に必要な抵抗性メカニズムに関する知見が少ない。
そこで、本研究では植物の雪腐病抵抗性のメカニズム解明に向けた第一歩として、モデル越冬性植物であるシロイヌナズナを用いて、実験室内で雪腐病菌に対する抵抗性を評価できる実験系の開発を試みた。
成果の内容・特徴 1. 本研究で使用する雪腐黒色小粒菌核病菌WSL9-5株は、海外を含むシロイヌナズナの生態型18種を北海道農業研究センター(札幌市)の野外において越冬させた結果、Eniwa株の感染葉から分離された3種の雪腐病菌(雪腐黒色小粒菌核病菌、雪腐褐色小粒菌核病菌、雪腐菌核病菌)の1つである(図1)。
2. WSL9-5株は、牧草等から分離された株よりシロイヌナズナへの感染力が強く、実験室条件で標準株であるコロンビア株にも感染する。単離ロゼット葉片を用いた菌糸の接種と積雪環境をモデル化させたプレート培養法により、感染力、宿主抵抗力を定量化することができる(図2)。
3. コムギ等で報告されていた、低温馴化により雪腐病抵抗性が向上する現象は、シロイヌナズナにおいても観察される(図3)。
4. シロイヌナズナのジャスモン酸生合成変異株(jar1)では低温馴化による雪腐病抵抗性獲得が消失するため、ジャスモン酸は雪腐病抵抗性獲得の正の制御因子である(図4)。
5. エチレン非応答性変異体(ein2)では低温馴化による雪腐病抵抗性獲得が強まることから、エチレンは抵抗性獲得の負の抑制因子である(図4)。
成果の活用面・留意点 1. 雪腐病抵抗性獲得の分子レベルでの機構解明と抵抗性に寄与する主要遺伝子の特定に活用できる。
2. 低温積雪下における作物と病原菌の相互作用と生理現象の解明に利用できる。
3. シロイヌナズナEniwa株は理化学研究所バイオリソースセンターから配布を受けた。
4. 単離された雪腐黒色小粒菌核病菌WSL9-5株及び雪腐褐色小粒菌核病菌WSL9-1株は農研機構・遺伝資源センタージーンバンクより配布可能(登録番号:MAFF 247219及びMAFF 247218)。
図表1 249071-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nias/2021/nias21_s12.html
カテゴリ 遺伝資源 抵抗性 農薬 病害抵抗性 品種 品種改良 防除

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