タイトル | ゲノム編集酵素直接導入によるDNAフリーで培養不要の作物ゲノム編集技術 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 |
研究期間 | 2016~2020 |
研究担当者 |
今井亮三 熊谷祐也 Yuelin Liu 濵田晴康 Weifeng Luo Jianghui Zhu 黒木美沙 柳楽洋三 田岡直明 加藤悦子 |
発行年度 | 2021 |
要約 | コムギ茎頂にパーティクルガンを用いて金粒子に付着させたゲノム編集酵素を送達し、ゲノム編集された個体を取得する技術である。培養適性がなく、ゲノム編集が困難だった多くの実用作物品種に適用できる。また、外来DNAを使わないことから、社会から受容されやすい技術である。 |
キーワード | DNAフリーゲノム編集、コムギ、ジベレリン、緑の革命、 |
背景・ねらい | 現在の作物ゲノム編集技術は、培養・再分化工程を経るため、培養や再分化が困難な多くの実用作物品種においてはゲノム編集の実施が難しい。コムギにおいても、「Fielder」など培養適性の高い特定品種においてゲノム編集が可能であるが、国産品種への適用は困難である。培養を使わずにゲノム編集を行う技術の開発が求められている。 そこで、本研究ではin planta Particle Bombardment(iPB)法を用いてゲノム編集酵素を直接コムギ茎頂に導入し、そこから成長する植物体において変異体を検出、分離する技術を確立する。更に、開発した技術を国産主要品種に適用し、「緑の革命」変異(Rht1)をもつ現行コムギ品種にイネ型「緑の革命」変異(sd1)を導入し、更なる短稈化を目指す。 |
成果の内容・特徴 | 1. 本技術では、ゲノム編集酵素(Cas9およびガイドRNA)を金粒子に付着させパーティクルガンを用いてコムギ種子茎頂組織に導入する。茎頂から成長させた植物体の当代及び次世代においてCAPS解析を行い、ゲノム編集系統を選抜する(図1)。 2. TaQsd1, TaOr, TaHRGPL1をターゲットにした変異創出ではE0当代においてそれぞれ8.3%、3%、6%の個体から変異が検出される。E0からE1への変異の遺伝率は平均30%である。 3. 当代(E0世代)において第5葉を用いた変異解析次世代で選抜されたH7-1系統は、A,B,D何のサブゲノムのTaSD1遺伝子にも変異が導入された三重変異体である(図2)。 4. H7-1系統では未成熟終始コドンが導入されるため、mRNA分解機構によりTaSD1の発現がほぼ検出されない(図2)。 5. H7-1(tasd1)系統では原品種「春よ恋」に対して10%程度短稈化するが、収量は低下しない(図2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本技術は培養を使わないため、基本的には品種に依存しない。コムギの全品種に適用可能と考えられる。 2. 種子胚茎頂や腋芽茎頂を用いることで、コムギ以外の広範な作物種に適用できる可能性がある。 3. 収量性は人工環境下でのポット試験の結果であり、圃場における多肥栽培により、原品種より高収量を示す可能性もある。 4. 本技術の国内における商業利用には農研機構とカネカ(株)からの許諾が必要である。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nias/2021/nias21_s11.html |
カテゴリ | 品種 |