豚の感染症による斃死を抑えるDNAマーカー

タイトル 豚の感染症による斃死を抑えるDNAマーカー
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2017~2021
研究担当者 上西博英
鈴木香澄
新開浩樹
吉岡豪
松本敏美
田中純二
林登
北澤春樹
発行年度 2021
要約 豚のNOD2遺伝子の特定の遺伝型はウイルス感染症における斃死を有意に抑制でき、豚の抗病性改良のためのDNAマーカーとしての利用が可能である。
キーワード 豚、抗病性、パターン認識受容体、DNAマーカー、豚サーコウイルス2型
背景・ねらい 豚では肺炎・下痢等の慢性感染症が生産性を低下させる大きな要因となっている。対策としての抗菌剤の多用には薬剤耐性菌の出現リスクがあり、ワクチンについては病原体の多様さや変異の問題から効果に限界が存在する。これらのことから、豚自身の抗病性の改善による生産性の改善が強く求められているところである。
担当者らは、病原体に由来する様々な分子の認識に関与し、感染初期の免疫応答において重要な役割を担っているパターン認識受容体(PRR)に着目し、PRR遺伝子の塩基配列多型の、分子機能や豚の抗病性に与える影響について解析を行っている。本研究では、細菌のペプチドグリカンの構成成分を認識する細胞内のPRRであり、宿主のウイルス感受性にも影響を与えることが知られているNucleotide binding oligomerization domain 2(NOD2)において、その機能に影響を与えることを豚において既に明らかにしている遺伝子コード領域2197番目のアデニン(A)/シトシン(C)の多型(NOD2-2197A/C)が、豚サーコウイルス2型(PCV2)の浸潤により斃死が多発している豚群中で与える影響について検討を行い、抗病性DNAマーカーとしての利用可能性について明らかにする。
成果の内容・特徴 1. PCV2の浸潤により損耗、斃死が多発している豚群(デュロック種)において、NOD2の遺伝型(通常型:2197A、機能亢進型:2197C)と斃死との関連性を検討すると、機能亢進型をホモ型に持つ個体の生存率の有意な上昇が確認される。PCV2の浸潤前や、ワクチン接種により斃死率が低減した後には遺伝型の影響は観察されず、NOD2の機能亢進型はPCV2に起因する斃死を抑制するものと考えられる(図1)。
2. PCV2の浸潤前と流行終息後の豚群中のNOD2遺伝型の分布を比較すると、機能亢進型ホモの個体数が有意に上昇する。当該豚群は外部からの新規豚個体の導入を行わずに維持されており、PCV2による斃死多発時に機能亢進型ホモの個体の生存確率が高いため、機能亢進型の遺伝子頻度が高くなるものと考えられる(表1)。また、機能亢進型のNOD2遺伝子を保有する豚は、保有しない豚と比較してPCV2流行下において成長阻害を起こしにくい傾向を示す(図2)。
成果の活用面・留意点 1. 本研究はデュロック種の豚群で検討を行ったが、NOD2-2197A/Cの多型は他の商用豚品種においても確認されており、幅広い豚の集団での抗病性改良への使用が期待される。
2. NOD2は細菌細胞壁のペプチドグリカンの特定の分子構造(ムラミルジペプチド)を認識することが知られており、NOD2-2197Cはムラミルジペプチドに対する応答がNOD2-2197Aよりも高いことが確認されている。一方、NOD2はウイルス認識への関与も知られており、PCV2が引き起こす斃死のNOD2-2197Cによる低減効果が、細菌二次感染の抑制か、直接的なウイルス増殖抑制によるものかの解明には今後の検討が必要である。
3. 本研究ではPCV2が浸潤した農場における豚の抗病性改善の効果を検討したが、他のウイルスや細菌感染症に対する効果についても引き続き検討する予定である。
図表1 249076-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nias/2021/nias21_s07.html
カテゴリ 耐性菌 DNAマーカー 品種 薬剤

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