乾燥耐性細胞Pv11のゲノム編集技術

タイトル 乾燥耐性細胞Pv11のゲノム編集技術
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2015~2021
研究担当者 黄川田隆洋
宮田祐吾
徳本翔子
コルネット・リシャー
Elena Shagimardanova
Oleg Gusev
発行年度 2021
要約 常温乾燥保存可能な細胞であるPv11のゲノム編集技術を構築する。この技術によりPv11細胞の乾燥耐性能を維持したまま、正確な遺伝子導入と恒常的な遺伝子発現が可能となる。この成果は今後、Pv11細胞に任意のタンパク質を発現させて、そのまま常温乾燥保存する技術の中核となる。
キーワード ゲノム編集、常温乾燥保存、細胞工学、タンパク質発現、乾燥耐性機構
背景・ねらい 乾眠と呼ばれる極限的な乾燥耐性機能により、ネムリユスリカは、カラカラに干からびても蘇生可能な状態を維持しつつ代謝を完全に停止させて、好適な環境の到来を10年以上待つことができる。乾眠の仕組みを応用すれば、タンパク質や核酸などの多様な生体高分子化合物を常温乾燥保存することが可能になると期待される。そこで本研究では、ネムリユスリカ由来の培養細胞Pv11の乾燥耐性能を維持したまま外来遺伝子を発現させるために、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集技術の構築を行う。またこれまでにトレハロースの蓄積がネムリユスリカの乾眠に重要である事が明らかになっているが、乾眠の分子機構には、まだ多くの謎が残されている。そこで、培養細胞Pv11の遺伝子機能を、ゲノム編集技術を用いて解析し、乾眠誘導の分子メカニズムを調べる。
成果の内容・特徴 1. 昆虫細胞で強力なタンパク質発現を実現するネムリユスリカの121プロモーターと短鎖のRNA発現を制御するPvU6プロモーターを利用して、Pv11細胞でCas9タンパク質とガイドRNAを同時に発現させることで、CRISPR/Ca9システムを駆動させる。
2. CRISPR/Cas9システムを利用して外来性遺伝子を正確に導入する系(いわゆるノックイン技術)として知られるCRIS-PITCh(Precise Integration into Target Chromosome)法を適用する(図1)。Pv11細胞内で最も高い発現を示すPv.00443遺伝子に、GFPをコードする遺伝子を正確に挿入する。その結果、乾燥耐性能を損なう事無く、緑色蛍光を示すPv11細胞の樹立が実現する(図2)。
3. CRIS-PITCh法を活用した遺伝子機能解析により、ネムリユスリカ(Pv11細胞)の乾眠の誘導機構に、2つのカルシウムシグナル伝達経路(図3)とHSF1転写因子による遺伝子発現調節(図4)が重要な役割をもつ事を解明する。
成果の活用面・留意点 1. 乾燥状態のPv11細胞は、外来性の遺伝子産物であっても長期間の常温保存が可能である。CRIS-PITCh法を用いて狙った位置に、正確に遺伝子ノックインさせることで、Pv11細胞に任意のタンパク質を自由自在に発現させたまま、細胞を長期間、常温乾燥保存する事が可能となる。活性を維持した状態での生理活性物質の長期乾燥保存法の開発が期待される。
2. Pv11細胞におけるゲノム編集技術とゲノム情報との組み合わせにより、部位特異的な遺伝子破壊と遺伝子導入が可能となったため、乾眠の分子機構をより詳細に解析することが可能となる。
図表1 249078-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nias/2021/nias21_s05.html
カテゴリ 乾燥

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