タイトル | ミノムシ糸の産業利用加速化に繋がる、ミノムシの吐糸目的、吐糸様式、吐糸機構 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 |
研究期間 | 2015~2020 |
研究担当者 |
吉岡太陽 亀田恒徳 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 常時ミノを背負っているミノムシは、ハシゴ状の足場に胸脚を掛けて歩行する。足場はジグザグに吐糸した糸を折り返し点で接着物質により基板へ固着して作られる。糸と接着物質は、芯鞘二層構造からなる吐糸管から個別に吐糸・吐出される。 |
キーワード | ミノムシシルク、高タフネスシルク、脱炭素素材、脱石油構造材料、絹糸昆虫 |
背景・ねらい | 高強度、高弾性率、高タフネス性を兼ね備えたミノムシ糸の産業利用に向け、長繊維の効率的回収技術の開発ならびに、糸表面に不連続に付着する接着成分の不連続性の解明と削減技術の開発が急務とされ、これらの解決に向けたミノムシ吐糸行動そのものの十分な理解が求められている。 そこで本研究では、ミノムシの吐糸目的、吐糸様式、吐糸機構を解明し、吐糸行動を理解することで、長繊維回収技術の開発、表面付着接着物質の不規則性の原因解明、ならびにその削減技術の開発に繋げる。 |
成果の内容・特徴 | 1. 常時ミノを背負って移動するミノムシはイモムシの一般的な歩行行動をとれないため、歩行の際ハシゴ状の足場を作り、足場に胸脚を掛けることで歩行する(図1)。(吐糸目的) 2. 足場は、糸(シルク)をジグザグに吐糸し、折り返し点を接着物質で基板に固着することで作られる(図2)。一回の歩行で作られる足場は一本の連続した糸から成る。足場の幅は胸脚の幅と対応し、その間隔で接着物質が吐出されるため、糸には凡そ胸脚の間隔で接着物質が不連続に付着する。(吐糸様式) 3. ミノムシは1本の吐糸管のみを有する。吐糸管の3次元X線トモグラフィー解析ならびに切片の顕微鏡観察は、吐糸管が芯鞘二層構造であることを示す(図3)。ミノムシは、芯の部分から糸を、鞘の部分から接着物質を個別に吐糸・吐出することで、連続的な糸の吐糸とは独立した不連続な接着物質の吐出を可能とする。(吐糸機構) |
成果の活用面・留意点 | 1. 本研究で明らかにしたミノムシの吐糸目的と吐糸様式は、長繊維を効率的に回収するためのミノムシの行動制御に利用でき、産業利用の加速化に繋がる。 2. 本研究で明らかにした吐糸管構造ならびに吐糸機構は、接着物質の吐出量を抑制する技術の開発に利用できる。 3. ミノムシの巧みな吐糸機構を模倣することで、高タフネスシルクを人工的に創り出すための人工紡糸技術の開発に繋がる。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nias/2021/nias21_s01.html |
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