ナシ葉退緑斑点随伴ウイルスの日本での発生および国内分離株の遺伝的多様性

タイトル ナシ葉退緑斑点随伴ウイルスの日本での発生および国内分離株の遺伝的多様性
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 植物防疫研究部門
研究期間 2017~2021
研究担当者 久保田健嗣
千秋祐也
栁澤広宣
竹山さわな
土`田聡
鈴木良地
神山光子
堀川拓未
上遠野冨士夫
発行年度 2021
要約 日本のナシにおいて報告されている葉の退緑斑点症状からは、新種エマラウイルスのナシ葉退緑斑点随伴ウイルスが検出され、ニセナシサビダニ虫体内からも同ウイルスが検出される。同ウイルスは日本の広い範囲に分布するが、それら分離株の遺伝的多様性は低い。
キーワード pear chlorotic leaf spot-associated virus (PCLSaV)、Emaravirus、ナシ、ニセナシサビダニ、遺伝的多様性
背景・ねらい 近年、東北から九州の各地方でニホンナシおよびセイヨウナシに葉の退緑斑点症状(図1A-C)や著しい落葉が発生している。ニホンナシでは葉にさび症状を引き起こすフシダニの一種、ニセナシサビダニ(図1D)の寄生が、退緑斑点症状の発生にも関与することが気づかれていたが、その症状から、なんらかの植物ウイルスの関与も疑われている。
そこで、本研究では、本症状への植物ウイルスの関与を検討し、見出されたウイルスについて、その感染と全国のナシ産地で発生した退緑斑点症状との関係を明らかにする。また、本ウイルスの日本国内分離株の塩基配列の比較、分子系統樹解析により、国内分離株の遺伝的多様性を明らかにする。
成果の内容・特徴 1. 2018年にニホンナシ(豊水)の退緑斑点症状発症葉から抽出したRNAの次世代シーケンスにより、エマラウイルスの分節RNAに共通性を有する1本鎖(マイナス)RNAが5種検出された(図2)。本ウイルスは、中国で同様の症状を呈するナシの葉から見出されたpear chlorotic leaf spot-associated virus (PCLSaV)と同種であり、ナシ葉退緑斑点随伴ウイルスと命名された。PCLSaVは、退緑斑点症状を示すニホンナシおよびセイヨウナシに寄生するニセナシサビダニからも検出される(結果省略)。
2. 2017~2020年に東北から九州の計13県で採取したナシ葉サンプルについて、RT-PCR法によりPCLSaVの検出を行った。退緑斑点症状発症葉からは全てのサンプルでPCLSaVの全分節が検出されたのに対し、非発症葉からは検出されなかったことから、PCLSaVが国内に広く分布しているとともに、ナシの退緑斑点症状の発生に関与していることが強く示唆される(表1)。
3. 中国および日本のPCLSaV分離株の間で各分節RNAのオープンリーディングフレーム(ORF)の全長塩基配列の配列同一性は、中国の3分離株間の90.4~99.5%に対して、日本の分離株では5分節共に99.2%以上と高かった。また、分子系統樹解析でも、5分節とも日本の分離株のみで一つのクレードを構成し、中国の3分離株と比較して互いにごく近縁であり(図3、結果省略)、日本国内のPCLSaV分離株は、遺伝的多様性が低いと考えられる。
成果の活用面・留意点 1. PCLSaVの感染と退緑斑点症状の発症の因果関係、およびニセナシサビダニによるPCLSaVの媒介性は実験的には証明されていないが、春季の殺ダニ剤散布により、退緑斑点症状を抑制できることが報告されている(清水ら、関東東山病虫研報、66:113-114、2019)。
図表1 249126-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nipp/2021/nipp21_s04.html
カテゴリ 植物ウイルス ニセナシサビダニ

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