微生物によるダイオキシン分解機構を解明

タイトル 微生物によるダイオキシン分解機構を解明
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 鈴木 悠造
大塚 祐一郎
中村 雅哉
発行年度 2021
要約 広く薄くダイオキシンに汚染された環境の修復には、環境に負荷をかけない微生物の機能を利用した バイオレメディエーションが適しています。私たちはダイオキシン分解微生物を単離し、毒性がない 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin(2,7-DCDD)を試験用ダイオキシンとして用いて分解物の解析を 行いました。その結果、2,7-DCDD分子内の2つのエーテル結合が2段階で開裂する分解機構である ことが明らかになりました。この分解機構で毒性がある2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (2,3,7,8-TCDD)も分解すると考えられます。
成果の内容・特徴 ■ダイオキシンとは 
ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンと称された化学物質は、約20年前に社会問題となり、ダイオキシンによる汚染の修復に関する技術開発は世間の注目を浴びました。一方、平成12年に施行された「ダイオキシン類特別措置法」により、発生源の改善策が進められたため、産業廃棄物処理施設などからのダイオキシンの排出量は大幅に減少しました。しかし、一度排出されたダイオキシンは環境中に残存したままとなっており、低濃度の汚染であっても食物連鎖を通じて生態系の上位に向けて生物濃縮が進んでしまいます。さらに、現在でも医学分野では毒性がある2,3,7,8-TCDDによる奇形誘発やガン発症の分子機構の解明が続けられており、広く薄くダイオキシンに汚染された環境の修復技術研究の重要性を改めて提起しています。
■ダイオキシン分解微生物の分解機構 
広く薄くダイオキシンに汚染された環境の修復には、環境に負荷をかけない微生物の機能を利用したバイオレメディエーションが適しています。そこで、自然界からダイオキシン分解微生物の探索に着手しました。その結果、剪定枝条を積んで堆肥化させている箇所から高熱性微生物を単離し、その中に2,3,7,8-TCDDをはじめ様々な種類のダイオキシンを網羅的に減少させる能力を有する株があることが判りました(図1)。 微生物によるダイオキシンの分解を評価する際、脂溶性の高いダイオキシンが微生物の細胞表面に吸着して離れず、検出される量が減少することがあります。このため、分解していなくても一見分解しているような結果になってしまいます。そこで、私たちは微生物の細胞を破砕することで調製した細胞抽出液をダイオキシンと反応させ、分解物を検出できれば分解を正確に証明できると考えました。分解試験には、毒性がある2,3,7,8-TCDDの代わりに、毒性がない2,7-DCDDを用いました(図2)。その結果、2,7-DCDD分子内の1つのエーテル結合が開裂した化合物と、2つのエーテル結合が開裂した化合物が検出されました(図3)。これらの結果から、2,7-DCDDの分解は、1つ目のエーテル結合が開裂し、次いで2つ目のエーテル結合が開裂するという2段階の分解機構であることが明らかになりました。このエーテル結合が開裂する部位の構造は、毒性がある2,3,7,8-TCDDにも共通していることから、2,3,7,8-TCDDにも起こりうる分解機構であると考えられます。この研究成果は、ダイオキシンにより広く薄く汚染された環境の修復技術の開発に貢献するものです。
■研究資金と課題 
本研究は、JSPS科研費(JP21248037)「ダイオキシン「2,3,7,8-TCDD」を標的とする持続的広域的環境修復技術の創出」による成果、および実施課題*「きのこ及び微生物が有する生物機能の解明と新たな有効活用」による成果の一部です。
■文献
Suzuki, Y. et al. (2011) Novel enzymatic activity ofcell-free extract from thermophilic Geobacillus sp. UZO3 catalyzes reductive cleavage of diaryl ether bonds of2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin. Chemosphere, 83,868-872.
■専門用語
バイオレメディエーション:微生物が持つ化学物質の分解能力、蓄積能力などを利用して土壌や地下水等の汚染修復を図る技術。
エーテル結合:1個の酸素原子に2個の炭素原子が結びついている結合部位
生物濃縮:代謝を受けにくい化学物質が食物連鎖を通じて生態系の上位に向けて生体内に濃縮されてゆく現象
図表1 249193-1.png
図表2 249193-2.png
図表3 249193-3.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2021/documents/p40-41.pdf
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