課題名 | c.高品質安定生産のための農業気象災害警戒システムの開発 |
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課題番号 | 2009013893 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,農業気象災害研究チーム |
研究期間 | 2006-2010 |
年度 | 2009 |
摘要 | 水稲の高温障害発生警戒システムを開発するため、1)稲作況基準筆調査・品質調査の生育調査結果(2001~2005年)とアメダスメッシュ値を用いて「コシヒカリ」、「ヒノヒカリ」等の発育段階予測式を作成し、任意の発育段階で遭遇する気象環境を推定可能とした。本予測式を用いて登熟期の気温・日射量と白未熟粒発生割合との関係を解析し、「ヒノヒカリ」の白未熟粒は、出穂後10~20日の低日射、出穂後20~30日の高温・高日射で多発する傾向にあるが、発生割合のばらつきが大きいことを明らかにした。2)「コシヒカリ」等8品種について、開花日のばらつきを近似する関数及び開花期の最高気温と稔実歩合との関係から、最高気温を用いて高温による不稔の発生率を推定する方法を開発した。高温との遭遇が問題となる出穂期及び登熟期間について、早期水稲と普通期水稲の奨励品種決定試験結果に基づき過去30年間の変化を解析し、移植から出穂までの出穂日数が早期栽培では7~9日、普通期栽培では0~5日短縮しているが、登熟期間は変化していないことを明らかにした。温度と日長が発育に及ぼす影響を実験的に調査し、出穂日は、基本栄養生長期の水温が2℃上昇すると早生品種ほど早くなり、最大で3日前進すること、長日では3~9日遅くなり、その程度は晩生品種ほど大きいことを明らかにした。3)アジアの多様な環境下で生育した稲9品種のN吸収、LAI、乾物生長、穎花数、籾収量を、初期値と気象条件、土壌パラメータに基づいて、同時に高い精度で説明する機構的モデルを開発した。 小麦の穂発芽危険度警戒システムの開発に向けて、1)西日本で広く栽培されている「シロガネコムギ」の穂発芽特性を調査し、登熟気温が同じ条件下では「農林61号」よりも発芽率が30%以上高くなること等を明らかにした。2)発育予測モデルの適応性を作期移動試験で確認し、アメダス要素あるいは3時間ごとの気象値からの相対湿度予測値を用いることで、気象情報から穂発芽を予測することを可能とした。3)西日本における小麦主要3品種の赤かび病の第1回目防除適期を予測するモデルを作成し、リアルタイムアメダスを用いて予測した結果をWeb上で公開するシステムを構築し、運用を開始した。また、20年度に引き続き、赤かび病感染後の濡れ時間がかび毒の蓄積に及ぼす影響を確認し、追加防除の要否を判定可能とした。4)公立試験研究機関の長期栽培試験結果や農林水産省の統計調査データを用いて、麦収量の変動に及ぼす気象の影響を解析し、湿害発生率と水田面積率の相関が高いことから、収量予測には土壌水分の影響評価が重要であることを明らかにした。また、降雨による土壌水分の上昇過程や降雨後の乾燥過程を推定可能な土壌水分モデルを開発した。 大豆の干害警戒システムの開発に向けて、1)土壌水分予測モデルを改良し、耕うん法の異なるほ場で、うねの形状が異なっても、それらを考慮することで適用できることを明らかにした。また、大豆の蒸散抑制は土壌体積含水率が0.39m3/m3 以下で生じ、かん水を行うことで収量が増加することを明らかにし、干害警戒システムにおける警戒レベルを決定した。2)ポーラスカップの空気侵入特性を利用して土壌の乾燥程度等を測定する手法を開発した。これに基づき、真空計を用いない簡易な測器を開発し、特許を申請するとともに、特許の実施許諾により製品化に至った。さらに、本測器を用いて黒大豆のかん水時期を把握する手法を開発するとともに、モニター農家の要望に基づき測器をより使いやすいように改良した。 栽培適地・適作期判定支援システムを開発するため、1)キャベツ等主要野菜4品目について、主産県の生産・出荷データを網羅的に整備することにより、生産統計から推定した産地の位置、市場統計から推定した出荷日及び多品種に適用可能な発育段階予測モデルを用いて、平年の日別作付面積の推移を推定し、年度ごと産地ごとの出荷パターンをほぼ再現することを可能とした。また、短期間(月別)の気象条件が10a当たり収量に及ぼす影響を解析し、豊作年は一球重が大きいだけでなく、分散が小さくなるのに対して、凶作年は一球重の減少はわずかであるが、分散が大きく増大することから、収量を予測するには一球重の分散に及ぼす気象の影響に着目することが重要であることを明らかにした。2)長野県及び新潟県を流れる関川を対象に、流域の積雪相当水量、融雪量等の30年分のメッシュ統計データを整備し、積雪モデルを用いて河川流量を予測することを可能とした。 |
カテゴリ | 乾燥 キャベツ 高温対策 湿害 出荷調整 水田 水稲 品種 防除 |