(3)熱帯・亜熱帯地域における家畜飼養技術の高度化とアジアの乾燥地における持続可能な農牧業生産システムの構築

課題名 (3)熱帯・亜熱帯地域における家畜飼養技術の高度化とアジアの乾燥地における持続可能な農牧業生産システムの構築
課題番号 2010015011
研究機関名 国際農林水産業研究センター
研究分担 (独)国際農林水産業研究センター,畜産草地領域
協力分担関係 モンゴル国立農業大学
研究期間 2006-2010
年度 2010
摘要 ・ タイ畜産振興局のグループが中心となって、これまで同局が蓄積したデータならびに本プロジェクトで共同研究を行った各大学が分析した飼料成分データの取りまとめを行い、昨年度試作した肉用牛飼養標準にさらなるデータを追加し、“インドシナ半島肉用牛飼養標準”に“飼料成分表”として収載した。・ 昨年度に組織した肉牛飼養標準編集委員会が中心となって、 “試作版肉牛飼養標準”に基づいて内容の再検討や編集方針について討議した。数回の編集会議を経て、10月にコンケン大学において国際シンポジウムを開催して“インドシナ半島肉用牛飼養標準”を出版・披露した。また、同飼養標準をベトナム、ラオス、カンボジア、マレーシア、タイの関係する各大学・機関に配布した。・ タイ畜産振興局チェンマイ家畜繁殖センターならびにバトンタニー研究センターが中心となって開発してきた“飼料設計プログラム”について、”インドシナ半島肉用牛飼養標準”編集会議を受けてデータの一部変更や追加を行った。また、昨年度開催した、畜産振興局の研究員や技術普及員等を対象に実施した3回の講習会時の意見ならびに指摘を受けて、使用勝手の改善やプログラムのバグを訂正した。・ ラオス国立大学の研究グループによって飼料成分分析が行われた牧草の同定、ならびにラオスで牛が食する在来植物に関する基礎的知見を集積するため、専門家を2名派遣し現地調査を行い、延べ115種類400枚の植物標本を作成した。中央部と北部地域から収集されて分類を行った約30種のうち、約半数の植物を同定することができた。しかし、残りの半分は同定が難しい花や果実が見られない状態、もしくはラオスの植物に関する学術的情報が不足しているために同定に至らなかった。・ DREB1A遺伝子を導入したルジグラス(B. ruziizensis)の形質転換体12系統の内、順調に生育した6系統を解析した結果、5系統で導入遺伝子のバンドが認められ、そのコピー数は平均2~3コピーと比較的少なかった。遺伝子導入が確認できた5系統の内4系統では、mRNAレベルでDREB1A遺伝子の発現が認められた。・ 4倍体ルジグラスF0、F1およびF2世代において、幅広い変異をもつ有性生殖集団が形成されていることが確認された。また、4倍体ルジグラスにおける主要な飼料特性、即ち、可消化養分総量(TDN)、細胞内容物(OCC)及び総繊維(OCW)の値はそれぞれ、61.4%、36.6%、及び53.7%で、TDN及びOCCでは他の系統よりも高く、OCWは低い値であり、飼料としての品質に優れていることが示された。・ 4倍体系統の花粉を3倍体系統に授粉し種子稔性の調査した結果、2ヵ年の平均ではrMA3x-1、rBa3x-11及び-16が10%前後で、高い種子稔性を示した。また、昨年温室のポット栽培で比較的良好な草勢を示した3倍体16系統をつくばの圃場で4品種系統(Marandu、MulatoI、Kennedy、4倍体ルジグラス)とともに栽培し、飼料特性を分析した結果、主な飼料特性と考えられるTDN、OCC及びOCWにおいて、3倍体系統と4品種系統の平均値はほぼ同等であった。また、4倍体ルジグラスを凌ぐ3倍体系統も見られた。・ モンゴル国及び内モンゴルの農牧業の実態と政策動向を調査した結果、両国とも経済発展が著しく、GDPの農牧業割合は低下し、所得格差が拡大している。内モンゴルでは、草地劣化が著しいので、草地の共同利用や転業等の新たな対応が認められる。モンゴル国では、牧畜業発展にむけ、遊牧地域と定住畜産地域のゾーニング、家畜生産性向上、市場開発、疾病対策等を重点施策化している。・ モンゴル国と内モンゴルの牧民経営を比較した結果、土地の個別的利用権があること及び牧民あたりの草地面積の減少により、購入飼料への依存度が高くなることが明らかとなった。牧民の人口圧が高まる場合、草地の利用権制度を明確化することにより土地生産性(所得)を上げることができる。また、モンゴル国の都市部牛乳購入状況調査から、牛乳価格が5年間で2倍になっているにも関わらず、牛乳購入量が2倍に増え、それに対応する形で都市周辺の定住型酪農経営体が増加している。定住型酪農経営体の経営の安定には飼料の安定供給、牛乳の品質管理、協同組合化等が課題であり、また、耕畜連携等の推進も必要である。・ リモートセンシングによる牧草現存量推定手法の開発では、高解像度衛星データから中低解像度・高頻度観測衛星データへのデータ利用の橋渡しが可能であることを実証し、さらに森林等の草原以外の地域を除外する処理により、広域草量マップの作成が可能なことを示した。・ 畜種別の放牧による草量地上部現存量は牛<山羊<羊区の順となり、草量が多い条件では牛の採食量が多くなると推定した。植生荒廃効果を加味したモデルを構築し、10年間放牧した場合の変化をシミュレートし、2~2.5頭/haの放牧圧であれば草地を持続的に利用できると推察した。・ 寒冷季の羊へのフスマ給与は、0歳及び1歳の斃死率の低減及び翌春の体重増加には効果的であったが、夏以降にはその効果は消失した。ビール粕に水分含量を低下させるためフスマ及び小麦選別屑を10~20%添加すると良好に乳酸発酵し、有機酸組成からみてビール粕へのフスマ添加は、小麦選別屑添加より良好なサイレージ生産を可能にした。・ 植生・畜産経営統合モデルを改良してシナリオ予測を行い、牧民協調による家畜頭数コントロールを行うと植生を保全しながら高所得が得られることを推定した。若齢屠殺、補助飼料給与による早期出荷、牧民数の増加抑制などは、単独では植生保全や所得増加の効果は限定的だが、複数施策の実施で家畜頭数抑制と所得向上の達成は可能である。・ ウブルハンガイ県のステップ草原では、放牧圧を変えた試験を実施し、採食量が小さくかつ放牧後の残草量のばらつきが小さいほど牧草の食べ尽くされた度合いが大きいことを指標に放牧圧の過不足を推定し、現地の夏季草地の標準放牧圧(6頭/ha)では草が採食され尽くすため、植生や放牧時期によって標準放牧圧を修正する必要性が示唆された。また、調査地に出現した草種の内、Allium、Carex、Stipaは出現率が10%以上であり、現地の草原植生を分類するための指標草種となる可能性が示唆された。・ 酪農家の糞尿処理への意向を分析したところ、増頭余地のある酪農家の環境対策意識が低いと推測され、無理な増頭計画を改め一頭当たりから得られる所得向上の方向に農家を誘導することと、そのために必要な技術開発を推進することの必要性が明らかになった。・ 野菜農家は、より価格の安い牛糞、あるいは堆肥化がより簡単な豚糞を求め、畜糞購入先の範囲を広げている。一方、酪農家は、糞尿処理の遅滞による衛生管理の問題や乳房炎の発生等を招いている。こうした結果から、立地条件別や規模別の状況に応じたきめ細かい環境対策の指導と情報伝達の必要性が明らかになった。・ 北部地域では、農家は牛糞堆肥がアルカリ土壌改良に有効と認識し積極的に投入していることが明らかになった。しかし、冷涼な気候条件のため、未熟堆肥投入による雑草多発、窒素飢餓等が起こり、それが、除草剤汚染の進行や栄養障害を病害発生と誤解した農薬多投等につながり、堆肥施用がかえって食品安全性の低下や経営コストの上昇を招いている実態が明らかになった。・ 都市部と農村部の1人当たり年間牛乳消費量の調査から、経済発展とともに牛乳需要の伸びる余地が大きいこと、特に農村部での所得向上が今後の牛乳消費量を押し上げる要因として強く働く可能性があること明らかになった。・ 北京市住民を対象とした牛乳購買行動の調査結果から、品質の善し悪しを牛乳の鮮度と産地の衛生状態に求めている消費者が43%存在し、低所得者層を除けば価格が及ぼす影響は相対的に小さいことが明らかになった。また、酪農が周辺環境に与える負荷を気にしている消費者は91%、内32%は非常に関心があると回答している。・ 研究者側が考えている制約要因と農民側が考える制約要因とには隔たり (黒龍江省においては、研究者側は「土壌のアルカリ化」を、農民側は「土壌の透水性の悪さ」を最大のボトルネックと認識) があることが明らかになるとともに、農家側が提供する情報・要望をもとに技術を再構築することによって、経営的にもより有利な生産体系を組み立てられる可能性が明らかになった。具体的には、黒龍江省のアルカリ土壌地域においては難分解性有機物の心土埋設による草地改良、内蒙古自治区の砂漠化地帯においては有機物表層マルチによる土壌肥培管理に関わる試験を開始したが、黒龍江省の強アルカリ土壌(pH9.7)でもアルファルファが正常に生長することを確認した。
カテゴリ 病害虫 亜熱帯 アルファルファ 環境対策 乾燥 管理技術 経営管理 コスト 雑草 出荷調整 除草剤 飼料設計 土壌改良 肉牛 乳牛 農薬 繁殖性改善 肥培管理 品種 山羊 リモートセンシング

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる