摘要 |
「なし・もも等の果実形質等重要形質に関連する遺伝子(群)や、かんきつ類の完全長cDNA 4,000個を単離・解析して果樹のゲノム情報を集積する」に関しては、1) かんきつの重要機能性成分であるカロテノイドの合成に関わる酵素ZEP(Zeaxanthin epoxidase)遺伝子をウンシュウミカンから単離して解析した結果、同一遺伝子座のアレルである ZEP-1m/2mの発現が、果実成長に伴って増加するカロテノイド蓄積と連動することを見いだした。2) 合計33のなし品種・系統で単為結果性を評価した結果、「ラ・フランス」が安定した単為結果性と果実肥大性を有し後代に遺伝することが確認された。また、マイクロアレイ解析から、フェニルプロパノイド関連遺伝子等の単為結果性への関与が示唆された。うんしゅうみかんの単為結果性への関与が示唆されているジベレリン代謝遺伝子11種類を同定し、3つの遺伝子座を遺伝連鎖地図にマップした。また、ジベレリン20酸化酵素遺伝子の活性を上昇させる転写因子を見いだした。3)かんきつを始めとする主要果樹のマイクロアレイ実験によって得られた発現データをデータベース化するとともに、物理地図と遺伝子発現データとを対応させたデータベースを構築し、果樹ゲノム・エンサイクロペディアの基本的構造とした。「500種類以上の共優性DNAマーカーによるもも・なしの高密度連鎖地図およびBACを利用したかんきつの高精度遺伝地図を作成し、かんきつの無核性・カンキツトリステザウイルス(CTV)抵抗性、なしの黒星病抵抗性等を早期選抜するためのDNAマーカーを開発する」に関しては、1)なしで、合計1,512種類の共優性DNAマーカーを作成し、そのうち821座のDNAマーカーについて座乗連鎖群と位置(領域)を同定し、「バートレット」と「豊水」で高密度連鎖地図を構築した。また、かんきつで、ゲノム情報をもとに1,040マーカーを開発し、246マーカーを用いて9連鎖群に収束した548 cMの連鎖地図を構築するとともに、CTV抵抗性の遺伝子座を位置づけた。 2)かんきつのCTV抵抗性連鎖マーカーを利用して、育種実生9交配組合せ954個体について本抵抗性連鎖マーカーを保持する370個体を早期選抜し、圃場に植栽して、CTV抵抗性等の評価を継続した。また、日本なし品種「巾着」に由来する日本なし黒星病抵抗性について新たに4種類の連鎖マーカーを開発し、合計16交配組合わせ2,000個体についてDNAマーカーによる評価・選抜を行った。「花成制御遺伝子を利用したかんきつの早期開花素材の作出と世代促進技術を開発する」に関しては、1)かんきつの早期開花性遺伝子を導入した組換え体を交配して得られたBC1世代の順化個体について、栄養生育特性を調査した結果、カラタチに由来する三出葉の発生率やトゲ長で明瞭なQTLが検出された。外来CiFT遺伝子を保持するBC1個体で、導入遺伝子であるCiFTが継続して発現していることを確認した。
|