課題名 | 道産小麦の需要を拡大する品質向上・安定化技術の開発促進 |
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研究機関名 |
地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部北見農業試験場 |
研究分担 |
麦類グループ |
研究期間 | 継 、H22~27 |
年度 | 2011 |
摘要 | a 道産小麦需要拡大に対応した品質向上 、(a) 中華めん用小麦品種の開発促進 、 (1)初期世代の品質検定 、 1) 試験目的:道産小麦の用途拡大のため、加工適性に優れる中華めん用秋まき硬質小麦品種の開発を促進する。 、 2) 試験方法:初期世代からDNAマーカーや機器等による品質分析を行い、高品質系統を効率的に選抜する。 、 3) 成績の概要: DNAマーカー検定は、F1世代はGluD1-d等に分離 、 (2)中後期世代の品質検定 、 1)試験目的:道産小麦の用途拡大のため、中華めん用高品質秋まき硬質小麦の品種開発を促進する。 、 2)試験方法:農業特性の優れる中後期世代についてビューラー製粉を実施し、各種品質検定を実施した。一部系統の中華めん官能試験を実施した。 、 3)成績の概要:選抜された硬質系統には、原粒蛋白が「キタノカオリ」並の材料が認められた。製粉歩留についてはほとんどの供試系統が「キタノカオリ」より優れていた。選抜系統のアミロ最高粘度については、すべて300B.U.以上を示した。中華めん官能試験において「北系1882」、「22181」については色の評点は「キタノカオリ」よりやや高く、食感の評点はほぼ「キタノカオリ」と同等であった。 、 (3)中華めん適性に関わる要因解析と適性評価方法の確立 、 1)試験目的:道産小麦の用途拡大のため、中華めん用高品質秋まき硬質小麦の品種開発を促進する。品質選抜をより効果的に行うため、中華めん適性に関わる要因について解析する。 、 2)試験方法:硬質母材として「Jagger」、反復親として「北見82号」を用いた戻し交配を行い、解析材料を養成した。 、 3)成績の概要: 、 平成22年播種で圃場に展開したBC4F5世代について、5つの遺伝子型別に固定した系統32タイプの解析材料を得た。今後ブラベンダージュニアテストミルによる製粉を行い、中央農試農産品質Gにおいて品質検定と遺伝子の効果を解析する。 、 また、Pina、Glu-D1が「Jagger」型に固定していた系統のうち、Glu-B1、Glu-B3、Wx-B1の遺伝子型が異なる8系統をドリル播種した。次年度産物はビューラー製粉に供試し、これら3遺伝子の効果を調査する予定である。 、 (b) パン用小麦品種の開発促進 、 (1)パン用春播小麦品種の開発促進 、 1)試験目的:初期世代および中期世代の品質検定を行い、パン用高品質小麦を育成する。 、 2)試験方法:比較品種および系統選抜した初期世代715点についてブラベンダーテストミルで製粉し、製粉歩留、製粉効率、蛋白含量、粒度、グルテンインデックス、ミキソグラフおよび高分子グルテニンサブユニット構成を調査し、選抜した。 、中期世代は小規模生産力試験に供試した系統のうち、農業特性等で選抜した系統および比較品種108点をビューラーテストミルで製粉し、製粉歩留、ミリングスコア、水分、灰分、蛋白含量、粒度、グルテンインデックス、高分子グルテニンサブユニット構成、RVA最高粘度、生地特性(ファリノグラフ)および製パン性などを検定した。 、 3)成績の概要:系統選抜された初期世代および比較品種系統について品質検定を行い、309系統を選抜した。 、中期世代では「23S23」、「23S63」などの製パン性に優れる系統があった。これらの系統は製パン時の生地のベタつきが少なく、ファリノグラムのD.T.(生地形成時間)やS.T.(安定度)が「1CW」に比較的近い値を示したことから、生地物性が改良されていると考えられた。 、 (c) 日本めん用小麦品種の開発促進 、(1) 試験目的:初期・中期世代の品質検定による育成系統の選抜強化と半数体育種法による育種年限短縮等により「ランク区分」に対応可能で、重要病害・障害抵抗性に優れる高品質日本めん用小麦の早期開発を行う。 、(2) 試験方法: 、1) 初期世代(F3~F4世代)および中期世代(小規模生予1年目系統) 、 2011年産の初期世代と親・比較品種を含めて計1,038系統について、製粉性(ブラベンダーテストミルで原麦50gを製粉)、蛋白含量・粒度(Infratec 1241)、アミロース含量(オートアナライザー)および粉色(測色色差計)を調査した。 、また、中期世代と親・比較品種を含めて計128系統について、 製粉性(ブラベンダーテストミルで原麦100gを製粉)、蛋白含量・粒度、アミロース含量および粉色に加え、 RVAによる最高粘度を調査した。 、2) 中期世代(小規模生予2年目系統以降) 、2011年産の小規模生予供試2年目以降の43系統および比較品種について、製粉性(ビューラーテストミルで原麦1kg製粉)、灰分および蛋白含量、粒度、アミロース含量、粉色、RVAによる最高粘度および製めん性について調査した。Wx遺伝子の検定については、小規模生予供試2年目以降の基本系統など78群360系統に対して、Wx-B1遺伝子の有無をDNAマーカー(共優性マーカー)により検定した(中央生工G)。 、3)2010年産「きたほなみ」およびその系譜材料22点について、ブラベンダーによる製粉歩留・製粉効率、粉蛋白含量(Infratec1241)、細胞壁多糖含量、測色色差計による粉色を調査した。 、(3) 成績の概要: 、1)系統選抜1年目(F3世代)の製粉歩留とL*値は、「きたほなみ」並からそれ以上の組合せが多く認められた。F3世代は品質による選抜を行っていない世代であることから、継続的な品質選抜により交配母材自体の能力が向上したためと考えられる。 、2) 灰分は初期世代で選抜していないが、小規模生予1年目系統(F5世代)の中では、「きたほなみ」後代の灰分が明らかに少なかった。 、3)良粉色・高製粉性に優れた4系統を系統適応性検定試験に継続供試し、さらに4系統を新たに供試した(表4)。昨年から奨励品種決定基本調査に供試した「北見86号」、「北見87号」は、H22年産でも「きたほなみ」並の優れた製粉性を示した。 、 4)2010年産と2011年産のA粉のアラビノキシラン含量には高い正の相関が認められたことから、品種間のアラビノキシラン含量順位は年次間で大きな変動はないといえる。また、A粉のアラビノキシラン含量と全細胞壁多糖量(以下、全糖量)にはきわめて高い相関関係が認められた(2009年産 r=0.971**、N=52、2010年産 r=0.993**、N=22)。アラビノキシラン含量と製粉歩留には負の相関関係があることから、全糖量と製粉歩留について検討した結果、アラビノキシラン含量と同様の結果が得られた。 、 b 道産小麦安定供給のための品種開発促進 、 (a) 雨害耐性小麦品種の開発促進 、 (1)赤かび病抵抗性小麦の開発促進(DNAマーカーを利用した赤かび病抵抗性系統の作出(春まき小麦)) 、 1)試験目的:赤かび病抵抗性QTLを交配後代に導入するためにDNAマーカー検定を行い、農業特性の改良された赤かび病抵抗性系統を効率的に選抜する。 、 2)試験方法:麦類Gにて育成した系統の葉鞘をサンプリングし、中央農試生物工学Gにて検定を行った。 、 3)成績の概要:F1集団10組合せ782個体のDNAマーカー検定を行い291個体を選抜した。小規模生予系統においても抵抗性QTLを保有し、赤かび病抵抗性に優れる系統を選抜した。 、 (2)赤かび病抵抗性小麦の開発促進(秋まき小麦) 、 1)試験目的:赤かび病抵抗性に優れ、DON汚染程度の少ない小麦品種の開発を促進する。 、 2)試験方法:圃場にスプリンクラーを設置し、1時間毎に6分間ミスト灌水した。感染源としてF.graminearumを培養したエン麦粒を6月6日に畦間にばらまいた。一部材料は穂への噴霧接種を実施した。噴霧接種区については接種3、4週間後に、エン麦散布区については50%程度の小花が開花した時期から3、4週間後に1材料あたり20または10穂の発病指数を0~8で調査し、平均値を求めた。 、 3)成績の概要:試験区の出穂はほぼ平年並であった。試験区の発病程度も概ね平年並となった。供試系統の抵抗性は開花時期ごとの指標品種の発病指数を参考にして、エン麦粒接種区の早生材料は4週間後、それ以外は3週間後の発病指数から評価し、選抜に利用した。 、 本年の小規模生予供試2年目以降の系統は、前年の小規模生予供試初年目と比較して抵抗性程度の優れる系統の頻度が高く、抵抗性“やや強”以上の系統が60%以上を占めた。前年に引き続き、検定と選抜の効果が確認できた。 、 (3)穂発芽耐性小麦の開発促進(春まき小麦) 、1)試験目的:初期世代から穂選抜・発芽試験を行うことで穂発芽耐性に優れる系統を選抜する。 、 2)試験方法:集団から穂選抜を行い、次年度穂別系統を展開する。穂を収穫後、15℃5~7日間または10℃24時間後に15℃5~7日の人工降雨処理を行った後、穂発芽程度(0~5)を調査した。初期世代については休眠性検定(15℃7日間の発芽試験)を行った。 、 3)成績の概要:穂選抜は18組合せ実施し、穂発芽性“難”と思われるものを選抜した。休眠性選抜は、休眠性が「BW148(穂発芽性“難”)」並かそれ以上の系統を選抜した。 、小規模生予供試系統には全て「春よ恋」より穂発芽性が優れていることを確認した。 、 (4)穂発芽耐性小麦の開発促進(秋まき小麦) 、1)試験目的:中華めん用秋まき小麦では“やや難”以上、日本めん用秋まき小麦では穂発芽性“難”以上を選抜目標として、穂発芽耐性に優れた系統開発を促進する。 、2)試験方法:F2~F3世代11組合せ(うち8組合せは中華めん用)を供試材料とし、1組合せにつき952~2019穂を成熟期後7日頃に収穫。収穫後、10~15℃で7~12日間朝夕人工降雨処理を実施。穂発芽程度(0:無~5:甚)を調査した。 、3)成績の概要:中華めん用の交配9組合せから計13,740穂を穂収穫し、穂発芽性“やや難”の「きたほなみ」の穂発芽程度を選抜基準として設定し、9組合せ計1864穂を選抜した。その後、さらに外観品質等で選抜を行い、1064穂を穂別系統として播種を行った。 、 日本めん用は、「北系1838」など穂発芽極難系統を交配親に用いたF2~F3世代2組合せ計2,122穂を穂収穫した。穂発芽検定は、穂発芽性“極難”の「北系1838」、“やや難”の「きたほなみ」の穂発芽程度を選抜基準として設定し、穂発芽性“難”以上を目標とした選抜を行い、2組合せ404穂を選抜した。その後、さらに外観品質等で選抜を行い、400穂を穂別系統として播種を行った。訓交4672の穂発芽選抜時、休眠が深く15℃8日間の処理では十分に発芽しなかったため、10℃で1日処理を行ったのち、再度15℃で3日間処理し選抜を行った。一方で、検定初日から10℃で2日処理を行った訓交4533では、8日間の処理で選抜するのに十分な穂発芽性の検定が可能であった。 |
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