課題名 | ② 作物の感染応答機構の解明と複合病害抵抗性育種素材の開発 |
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課題番号 | 2012020463 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究分担 |
高辻 博志 林 長生 南 栄一 西澤 洋子 森 昌樹 姜 昌杰 菅野 正治 山崎 宗郎 ?橋 章 井上 晴彦 大竹 祐子 |
協力分担関係 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 国立大学法人京都大学 国立大学法人筑波大学 国立大学法人東北大学 公立大学法人首都大学東京 北興化学工業(株) 学校法人近畿大学 (公財)岩手生物工学研究センター 国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 東京農業大学 |
研究期間 | -4 |
年度 | 2012 |
摘要 | 1.いもち病感染によってイネに発現誘導される新規転写因子DPF ( diterpenoid phytoalexinfactor)の遺伝子を過剰発現するイネには、多量のジテルペン型ファイトアレキシン(DP)が蓄積し、DP合成に関わる多数の遺伝子が発現上昇していることがわかった。一方、DPF遺伝子を抑制したイネでは、DP合成遺伝子の発現量が低下していた。また、イネ葉鞘での一過的遺伝子発現の結果から、DPF合成遺伝子CPS2のプロモーターがDPFにより活性化することがわかった。これらの結果から、DPFはいもち病感染に応答してDP合成遺伝子群の転写を制御する転写因子であることが示された。 2.WRKY45過剰発現イネの生育および収量が悪化させる原因となる環境要因の特定を試みた結果、WRKY45過剰発現イネは低温に対する感受性が強く、著しい生育障害または枯死に至ることがわかった。また、高塩濃度に対しても高い感受性を示した。遺伝子発現の変化を調べた結果、PR遺伝子を含む防御遺伝子の発現が、低温および高塩濃度処理により、対照の日本晴ではほとんど変化しないが、WRKY45過剰発現イネでは高レベルに上昇していた。このことから、防御遺伝子の発現上昇が低温および高塩濃度感受性の原因である可能性が示唆された。一方、発現レベルを最適化した改良型WRKY45発現イネでは、これらの環境因子の影響がほぼ回避できていることがわかった。改良型WRKY45発現飼料イネについては、国内での隔離ほ場栽培を初めて行い、系統の選抜に向けて農業形質の調査を行った。 3.病原菌の感染過程における宿主植物と病原菌の相互作用を明らかにするため、感染過程の動的変化を観察する方法を開発した。具体的には、細胞内小器官をGFPで標識したイネやプロモーターに連結したRFPを導入したいもち病菌を用いて高速共焦点顕微鏡下で経時観察する方法を検討し、イネ細胞を生かしたまま、菌付着器の成熟(メラニン化)前からイネ細胞への菌の侵入・伸展を48時間以上にわたりモニタリングすることができた。 4.イネのType IIa WRKY型転写因子WRKY76の遺伝子を恒常的に過剰発現させたイネに親和性のイネいもち病菌を接種すると、非形質転換イネと比較して病徴が著しく進展し、ファイトアレキシンの蓄積が顕著に遅延した。マイクロアレイ解析の結果、これらの形質転換イネでは、いもち病菌接種に応答したPRタンパク質やファイトアレキシン合成酵素の遺伝子群の発現誘導が著しく抑制されていることが明らかとなった。これらの結果から、WRKY76過剰発現イネでは親和性相互作用における基礎的抵抗性が著しく抑制されていると考えられた。 5.ダイズ茎疫病はPhytophthola sojaeによる大豆の重要病害である。エチレンおよびサリチル酸処理した大豆には茎疫病抵抗性が誘導されることがわかった。一方、アブシジン酸およびジベレリンでは茎疫病抵抗性が低下することがわかった。 |
カテゴリ | 育種 いもち病 大豆 抵抗性 病害抵抗性 モニタリング |