課題名 | 生殖工学を用いた有用家畜作出技術の開発 |
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課題番号 | 2013023031 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
下司雅也 |
協力分担関係 |
(独)家畜改良センター (独)農業生物資源研究所 東京農業大学 神戸大学 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2013 |
摘要 | 遺伝子発現やエピジェネティクス情報等を活用したクローン胚等の品質評価法に関しては、核移植胚をマイクロブレードにより切断した 少数細胞部分と切断後の胚との遺伝子発現の比較において、両者の発現量が一致しない胚が認められること、また、核移植胚への1μMのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤オキサムフラチン処理は体外発生能に影響を及ぼさないことを明らかにした。 個体への発生能の高い生殖細胞の生産に関しては、a) 始原生殖細胞の分化誘導技術の開発においては、ブタES細胞株の樹立率向上及び高 品質化に合成mRNA導入法が適用できる可能性があること、鶏との異種間キメラ作成には、放卵直後の胚組織に1,000個(0.5μL)の細胞注 入が適していることを明らかにした。b) 8~11か月齢の牛から採取して体外発育させたウシ卵母細胞の胚発生能は、同じ卵巣の体内発育卵母細胞の胚発生能と同等であること、実験モデルとして使うマウス卵母細胞の胚発生能も体外発育と体内発育で近い成績であることを明らかにした。また、培養液へのポリビニルピロリドン(PVP)添加による顆粒膜細胞における変動遺伝子の候補を選定した。c) 生体内卵子吸引法(OPU)で採取したウシ未成熟卵子及び体内成熟卵子の体外受精後の細胞内カルシウムイオン測定の結果から、ウシ卵子の発生能力の 向上は周期的なカルシウムイオンの上昇(カルシウムオシレーション)の正常化と無関係であることを明らかにした。また、ブタ卵丘細胞卵子複合体では、成熟培地への組換えブタ白血病阻止因子rpLIFの添加によってブタ卵丘細胞卵子複合体のSTAT3遺伝子を活性化し、卵成熟率を向上させることに成功した。 個体への発生能の高い胚の生産に関しては、a) ホルスタイン種牛において、性選別精子と体内成熟卵子による体外受精胚を用いた場合、 第1卵割が一定時間内に終了し、かつ、卵割パターンが正常卵割を示した胚盤胞を選抜することにより発生能の高い胚の選抜を可能とした 。b) 食肉検査所由来の親豚卵巣卵子を個体ごとに培養する場合、得られた卵子の形態ランクにかかわらず1頭当たり8~9個前後の胚盤胞を作出できることを確認した。また、胚生産時の遺伝子発現の解析のため、gp130遺伝子のリアルタイムPCR検出系を確立した。c) 精子の品 質評価において、DNAの断片化を検出するTUNEL解析で保存後も比較的安定したDNA損傷精子率が判定できること、また、YO-PRO-1色素を用 いて精子頭部の細胞膜状態を評価できることを明らかにした。 長期保存技術に関しては、a) 凍結精液による人工授精技術の開発において、「人工授精技術者のための牛人工授精マニュアル」を作成し た。b) 豚の受精卵移植技術の高度化において、径の細い改良型子宮深部注入用カテーテルを試作し、従来のカテーテルよりも容易に子宮 内へ挿入できることを確認した。また、アルブミン製剤AlbuMaxは胚盤胞の発生促進作用を示し、AlbuMaxに含まれる脂質がブタ胚の発生を促進する可能性を見出した。c) 発育途上卵母細胞の長期保存技術開発のため、マウスの卵胞腔形成前卵胞を組織培養用メンブレンに張り 付けて培養後にメンブレンごとガラス化保存・加温することにより、発育培養後に44%の卵母細胞を回収し、そのうち56%を胚盤胞期へと発生させることに成功した。d) ソリッドサーフェス法によりガラス化保存したブタ未成熟卵子の利用に際し、加温処理温度を従来の38℃ から42℃に高めることにより生存率及び胚盤胞期への発生率が高くなることを明らかにした。また、ガラス化保存・加温後のブタ卵子を体外成熟・受精・培養して得た胚盤胞の移植により、世界初のガラス化保存卵子由来の子豚の生産に成功した。e) 細胞数、TUNEL陽性細胞の割合や凍結融解後のウシ胚の生存性から、体内成熟卵子から生産した体外受精胚が最も品質が高く、拡張胚盤胞期の凍結が最適であることを明らかにした。 |
カテゴリ | 育種 飼育技術 受精卵移植 長期保存・貯蔵 鶏 繁殖性改善 評価法 豚 |