課題名 | フードチェーンにおける危害要因の迅速・高精度評価技術及び衛生管理技術の開発 |
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課題番号 | 2013023082 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
亀山眞由美 |
協力分担関係 |
ダッカ大学 カンボジア王立農業大学 ラオス清浄野菜センター ヱスビー食品(株) 東京大学 豊橋技術科学大学 北海道総合研究機構 網走水産試験場 プリマハム株式会社 キューピー(株) キリンホールディングス(株) |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2013 |
摘要 | 食品の製造・加工・流通の過程で生成する有害化学物質に関しては、a) 生鮮野菜等25品目の油炒め調理によって生成するアクリルアミド量についてスクリーニング調査を行い、加熱・調理時にアクリルアミドを生成する可能性がある品目を調査した。加熱温度を変えた場合には、仕上がった調理品の歩留まり、あるいは色が同等であってもアクリルアミド生成量が異なる知見を得た。アクリルアミドを生成しにくいバレイショ品種・系統の評価では、育成系統、遺伝資源から5系統を有望と評価した。b) フラン生成に関わる成分の探索を行い、醤油を加熱した際のフラン生成反応はアルカリの添加によって抑制されることを明らかにした。気密性能と保温性能が異なる調理器具で味噌汁を調理し、静置(保温)と温め直しを2回繰り返すと味噌汁中のフラン量は未加熱食材合計の0.6~2.5倍になり、調理器具の違いが味噌汁中 のフラン量に影響を及ぼすことを明らかにした。 有害微生物等による汚染の検知・予測技術に関しては、a) 遺伝子定量技術により、牛乳中のサルモネラの迅速定量を可能とした。また、 得られた増殖曲線から最大増殖速度を導いたところ、その値は過去の文献値とほぼ一致した。b) 平成24年度に菌種拡大した多重検出技術 の改良法を用いて、食材12検体について試験し、検出感度10^0 CFU/25gを達成した。Listeria monocytogenesについては多重検出培地の妥当性試験を開始した。c) 卵に接種したL. monocytogenesの増殖挙動が、決定論的な数理モデルにバラツキ導入することで予測できるよう になった。常在菌との競合も考慮した予測が可能となり、液卵におけるL. monocytogenesの培養を実際に行わなくても本菌の挙動が予測できるため、迅速なリスク評価に貢献できる。d) 蛍光指紋により、コムギにおけるカビ毒3種(DON、NIV、ZEA)の同時推定を試みた。低い 汚染度の検証用試料において、既存法によるそれぞれの測定値と、R2=0.98、0.97、0.94という高い相関が得られ、複数かび毒の非破壊同 時計測の可能性を得た。 総合的な有害微生物の高効率・高品質制御技術の開発に関しては、a) 水耕栽培の農業用水管理については、実験的に調製した水耕液と実 栽培条件下で利用されている水耕液等に臨床分離株を含む各種大腸菌を接種して生育特性を調べ、水耕液中では接種した各種大腸菌が死滅することなく接種時の菌量を維持し、生残することを確認した。b) 発展途上国における衛生管理に関して、ラオス清浄農業開発センター と協力して、農業用水中の衛生指標細菌等の予備調査を実施し、数割の検体からサルモネラ及びO157株ではない大腸菌を検出した。c) アクアガス加熱装置の消費電力測定により、ダイコン等の短時間表面加熱殺菌に要するエネルギーを算出し、回転釜等の熱湯を用いる茹で加熱と比較した結果、アクアガス加熱装置を用いる方が表面加熱殺菌過程に要するエネルギーを節減できることを明らかにした。d) 市販の 牛乳に枯草菌を添加して交流高電界処理及び短波帯交流電界処理を行い113℃以上の昇温により枯草菌芽胞を1/1,000に失活させ、その後65℃で30分間の低温加熱を併用することにより枯草菌芽胞を1/10,000に低減可能であることを明らかにした。また、短波帯交流電界用電極を水冷することで、テフロン皮膜の損傷低減を可能とした。e) 加熱殺菌による効果を確率論的に評価するために、従来の速度論的な評価で はないsurvival/death interface modelをCronobacter sakazakiiを対象に加熱温度と加熱時間の殺菌効果を評価し、必要な加熱処理条件 を容易に選定することが可能であることを明らかにした。f) 大腸菌O157:H7を接種したハーブの種子(フェヌグリーク)にガス状の酢酸 及びアリルイソチオシサネートで処理を行い、両者に殺菌効果と発芽能力の維持を確認した。枯草菌Marburg 168株とATCC 6633株に対して高圧殺菌を行い、菌株により中温中高圧処理による発芽誘導効果が異なることを認めた。 食品害虫の予防・駆除技術に関しては、a) ヒメアカカツオブシムシ用フェロモントラップで在来のアカマダラカツオブシムシが捕獲でき ることを明らかにした。b) コクゾウムシの忌避物質を乾燥トウガラシの輪切りから抽出し、テルペノイド類が寄与することを解明し、乾 燥トウガラシを忌避剤として実用化する際の管理点の一つを明らかにした。具体的には、テルペノイド類の忌避効果は経時的に低下するため、1か月を目安に乾燥トウガラシを交換することがが望ましいと推定した。 このほか、a) コメ中のヒ素について、とう精(歩留95%と90%)、洗米、電気炊飯器を用いた炊飯及び無洗米製造による無機ヒ素及びジ メチルアルシン酸(DMA)濃度変化を明らかにした。また、貯蔵玄米中の総ヒ素、無機ヒ素及びDMAの各濃度は1年間安定であることも明ら かにした。b) 人工胃液による代表的なコメアレルゲンGlyIとGBSSIの消化実験により、GlyIの溶解度及び消化性はpHに、GBSSIの消化性は デンプン粒に対する消化酵素の浸透性に影響されることを明らかにした。c) 牛ふんの堆肥化過程におけるサルモネラの消長を明らかにす るため、堆肥へのサルモネラの導入方法として封入体の使用と、健常菌と損傷菌の区別が可能な評価方法を検討し、選択培地と非選択培地を組み合わせた培養法(混釈法と最確値法)による評価法を確立した。d) DNA分析による食品害虫識別法の開発については、オサゾウムシ科やカツオブシムシ科をはじめとする貯穀関連害虫10科・延べ32種を飼育・回収し、ココクゾウムシのミトコンドリアDNAについて、ほぼ 全長の塩基配列を決定した。 |
カテゴリ | 遺伝資源 害虫 加工 乾燥 管理技術 栽培条件 水耕栽培 だいこん とうがらし ばれいしょ 評価法 品種 フェロモン 水管理 |