細菌・寄生虫感染症成立の分子基盤の解明と診断・防除のための基盤技術の開発

課題名 細菌・寄生虫感染症成立の分子基盤の解明と診断・防除のための基盤技術の開発
課題番号 2014025576
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 秋庭正人
協力分担関係 千葉県中央家保
JRA 競走馬総合研究所
(株)JNC
結核予防会結核研究所
(株)ニッポンジーン
日生研
大阪府立大学
(株)相馬光学
産総研
北里大学
研究期間 2011-2015
年度 2014
摘要  より特異性が高く現場で簡便に診断できる手法の開発に関しては、a) 牛の腸管に存在する抗菌性のレクチンであるRegⅢ?の抗酸菌増殖促進機構を解明する為に、ヨーネ菌破砕物を用いてウエスタンブロッティングにより解析した結果、牛RegⅢ?と結合する菌体タンパク質を新たに見出した。b) バキュロウイルス発現系を用いて作製した遺伝子組換えウシRegⅢ?は、タンパク質の分子量が大腸菌発現系で作製したものより小さく、レクチンとしての性状を欠き、ヨーネ菌増殖促進作用は認められなかったことから、抗酸菌増殖活性にはレクチンとしての活性が重要であること明らかにした。c)大腸菌で作製した組換えウシRegⅢ?を用いて、ヨーネ菌の増殖促進作用を検討した結果、抗酸菌培養への応用法として、培養開始前の検体処理にRegⅢ?感作を組み込むことが有用であることを明らかにした。d) 原虫Eimeria tenellaから高純度に精製したミトコンドリアを用いて、原虫のエネルギー代謝に関与する酵素を解析した結果、NADHを基質とした比活性が呼吸鎖の中では最も活性が高いことを明らかにした。さらに、数種の酵素阻害剤による虫体に対する殺滅効果を認めた。e)鶏コクシジウム症の病態発現において重要な役割を担うE. tenella第2代無性生殖期について、本ステージ虫体を単離し、トランスクリプトーム解析を行った結果、発育の各段階において特異的に強く発現する遺伝子を同定した。f)感染防御能が明らかになっているオウシマダニ中腸の消化管細胞表面に局在する分子量86kDaの糖タンパク質(Bm86)のフタトゲチマダニにおけるBm86 protein familyのうち、Hl86はワクチン抗原として有望であること、また、Hl86は幼ダニで強く発現していることを明らかにした。g)E. tenella強毒株と弱毒株スポロゾイトにおける遺伝子発現を網羅的に解析した結果、株間で特異的な発現パターンを観察し、両株の分子レベルでの性状の差異を明らかにした。また、病原性への関与が疑われる遺伝子の1塩基置換を複数箇所同定した。h)バベシア原虫(バベシア・オバタ)のドラフトゲノム配列を解読し、宿主ステージ原虫のトランスクリプトーム解析を行った結果、赤血球からの離脱に必須と考えられるspherical body proteinをコードする遺伝子など、宿主ステージやベクターステージの原虫発育に必須と考えられる遺伝子情報を得た。i)殺ダニ剤アミトラズ耐性マダニより同定した2種オクトパミン受容体遺伝子のアミノ酸コード領域に、アミノ酸置換を伴う一塩基置換(SNP)を各遺伝子について3か所ずつ検出した。これらのSNPは耐性マダニの迅速診断技術開発へ応用が可能と判断した。
  効果的なワクチンや薬剤の開発に関しては、a)これまで検査現場で実施困難であった豚レンサ球菌の血清型別法に代わる、莢膜合成関連遺伝子を検出するマルチプレックスPCRによる本菌の簡便かつ実用的なタイピング法を開発した。b)性状が大きく異なるヨーロッパ腐蛆病菌の典型株と非典型株を識別する為のDuplex PCR法を開発した。既報のPCR法に比べ特異性が高く、ミツバチ幼虫から菌の遺伝子を直接検出する、迅速な診断を可能とした。c)日本を含む世界各国でミツバチ幼虫から分離されるヨーロッパ腐蛆病菌は、遺伝子配列の類似性から大きく3つのグループに分けられることと、同じタイプの株が、異なる国やミツバチ種から分離されたことから、ハチの輸出入に伴う病原体の拡散を示唆した。d)ヨーロッパ腐蛆病菌の非典型株(DAT561)から新たに5つの遺伝子の欠失変異株を作出し、標的遺伝子の病原性への関与を評価する系を構築した。また、DAT561株感染幼虫の病理解析結果から、ヨーロッパ腐蛆病菌の非典型株は、発症過程において積極的な体腔内への侵入は行っていないことを示唆した。e)牛病原細菌Histophilus somniの主要外膜タンパク質(MOMP)のアミノ酸配列に大きな違いが認められる2株の間でMOMP遺伝子を入れ替える遺伝子改変技術を開発した。この技術を用いて、本菌MOMPのC末端側アミノ酸配列が感染宿主体内での生存性に重要な血清抵抗性に関与することを明らかにした。f)Histophilus somniの疾病由来株2336株と健康牛由来株129Pt株のゲノム配列情報から疾病関連遺伝子の候補を抽出するとともに、ウエスタンブロット法により感染時の抗体応答を誘導する2336株特異タンパク質を確認した。g) 豚胸膜肺炎菌の従来の遺伝子型別法では血清型別の推定不能な、非典型的な遺伝子型を示す血清型6を世界で初めて分離し、従来法では型別不能となる原因を明らかにした。h)豚胸膜肺炎菌の新血清型K12:O3を発見した。本血清型は新しい組合せの莢膜(K)抗原及びLPS(O)の多糖抗原を持つことを明らかにした。i)と畜場出荷豚や4か月齢以上の病性鑑定殺豚の豚マイコプラズマ肺炎病変から分離されたMycoplasma hyopneumoniaeの過半数は、フルオロキノロン系の抗生物質ERFX耐性株であること、その耐性機構は、ニューキノロン耐性決定遺伝子領域のうちParCに依存していることを明らかにした。j)作製した高速PCR装置により、遺伝子増幅反応を約7分で完了させることを可能とし、本機により小型ピロプラズマMPSP遺伝子の定量的検出が可能であること、感度は原虫寄生赤血球400個/μlと高いことを明らかにした。また、高速PCR機が牛血液中の原虫検出に活用できることを明らかにした。k)ヨーネ病の効率的な遺伝子診断法として、内部標準を加えたDuplex SYBR Green PCR法をスクリーニング検査とし、ICを含むTaqManプローブ法をヨーネ病遺伝子検査の確定検査法とする検査系を構築した。
カテゴリ 出荷調整 診断技術 抵抗性 肉牛 防除 ミツバチ 薬剤 輸出

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