課題名 | 新需要創出のための生物機能の解明とその利用技術の開発 |
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課題番号 | 2014025614 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
岡本晋 |
協力分担関係 |
石川県立大学 大阪府立大学 琉球大学 新潟大学 あいち産業技術センター食品工業技術センター 産総研 茨城県工業技術センター 天野エンザイム(株) カゴメ(株) 日新製糖(株) |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2014 |
摘要 | 生物機能探索のための解析・評価技術の開発と多様な生命現象の解明に関しては、 a) 生体高分子素材の溶液物性解明、及び糖鎖チップ用天然物の調製については、溶液X線散乱測定法により、軟骨に含まれるプロテオグリカンは、棒状の局所構造特性を持つ細長いフレキシブルな構造体であること、さらには、鮭及び鮫の軟骨プロテオグリカンを比較した場合、前者の方がより柔軟性が高いことを明らかにした。 b) 糖鎖チップ用の機能性物質として、ワカメからフコキサンチンを効率的に抽出する手法を開発するとともに、腸管内における吸収特性を制御できる可能性を有する新規フコキサンチン誘導体の合成に成功した。 c) パターン認識受容体の機能制御機構の解明による細胞応答制御技術の開発において、LOX-1受容体を活用した酸化LDL様活性を示す分子の検出系を確立するために、ヒト一本鎖抗体ライブラリーをスクリーニングし、LOX-1認識領域と組合せることにより、標的分子の検出を可能とする特異的一本鎖抗体の取得に成功した。 d) 酵母のストレス応答遺伝子の解析、及び果実類の生理特性に関わる遺伝子の解析では、ストレス応答に関与するグルタチオンの麹菌細胞内濃度の制御には、一般的に重要と考えられているグルタチオン合成の律速段階であるγ-グルタミルシステイン合成に関係する遺伝子群だけではなく、その他のグルタチオン代謝関連遺伝子も想定外に重要であることを示した。 e) 果実の成熟制御において鍵となる転写因子RINは、補助因子FUL1又はFUL2と複合体を形成することによりゲノム上の標的配列への結合特性が変化すること、さらには、そのことがトマトの成熟の制御に重要であることを示した。 f) RNA修飾を介した物質生産・環境適応制御機構の解明において、tRNA中の5-メチル-2-チオウリジン修飾(mnm5s2)を介した大腸菌の酸ストレス抵抗性の制御について検討したところ、野生株及びmnm5s2修飾欠損株の酢酸、低pHストレス暴露に対する死滅率、損傷細胞発生率が菌株間で大きく異なることを明らかにした。 g) 局所的ゲノム重複機構の解析とその活用において、枯草菌における遺伝子重複株の選択マーカーとしてクロラムフェニコール耐性遺伝子が有用なことを示した。 微生物の代謝機構解明を通じた発酵食品の開発と新規食品素材の製造技術の開発に関しては、 a) 環状イソマルトメガロ糖の酵素生産技術の開発、及びキシリトール生産大腸菌の代謝フロー最適化については、Bacillus circulans T-3040株由来環状イソマルトオリゴ糖グルカノトランスフェラーゼの構造情報を基に改変型酵素を作出することにより、本来の基質であるデキストランに加え、安価なデンプンからもメガロ糖を効率よく生産することに成功した。 b) キシリトール生産大腸菌に変異型キシロースレダクターゼを導入することにより、野生型酵素を導入した株に比べて、キシリトールの収率を約10%向上させることに成功した。 c) 新規ホスホリラーゼの探索に必要な基質である各種糖1-リン酸の実用的調製技術を開発し、マンノース-1-リン酸、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸、ガラクトース-1-リン酸のグラム単位以上での供給を可能とした。これらの基質を用いることにより、1,2-β-マンノビオースホスホリラーゼ及び1,2-β-オリゴマンナンホスホリラーゼを新たに発見した。 d) 醸造過程における麹菌遺伝子群の転写プロファイルの解明、及び酵母・乳酸菌相互作用の解析では、麹菌で発現している4種類のポリリン酸合成酵素遺伝について遺伝子破壊株を作製し、細胞内ポリリン酸量を比較したところ、各破壊株は野生株とは異なる蓄積量を示すことを明らかにした。 e) 酵母の生育を促進する乳酸菌は、γ-アミノ酪酸や塩基性アミノ酸であるオルニチンを生産することにより乳酸によるpHの低下を抑制すること、さらには、乳酸菌の生育を促進する酵母も同様に酸によるpHの低下を抑制している可能性を明らかにした。。 f) 乳酸菌Lactobacillus brevisの特定の株が植物細胞壁成分であるキシラン及び胃腸管粘膜成分であるムチンへの付着能を有することを明らかにするとともに、この付着現象が静電作用に因るものであることを示唆する結果を得た。 g) 納豆菌バクテリオファージの利用法の確立において、納豆菌が生産するフラクトオリゴ糖を分解するバクテリオファージNIT1由来LevP酵素の構造解析を目指した組み換えタンパク質の精製、及び基質複合体の作製・解析に必要なレバンを納豆菌から調製した。 h) 麹菌による有用物質生産に利用できる発現ベクターの開発において、光刺激人工誘導プロモーター下流にβ-グルクロニダーゼ遺伝子を連結したベクターを開発し、その導入により同酵素を発現するAspergillus属糸状菌の取得に成功した。 i) 発酵食品データベースの開発において、一覧と単票の組合せによるわかりやすいユーザインターフェイスを完成させた。 |
カテゴリ | 加工 機能性 ごま データベース 抵抗性 トマト 評価法 |