(1)農業生物遺伝資源の充実と活用の強化

課題名 (1)農業生物遺伝資源の充実と活用の強化
課題番号 2014025630
研究機関名 農業生物資源研究所
研究分担 加藤 浩
友岡 憲彦
奥泉 久人
江花 薫子
馬場 晶子
内藤 健
青木 孝之
佐藤 豊三
澤田 宏之
永井 利郎
一木 珠樹
竹谷 勝
小瀬川 英一
中村匡利
廣川 昌彦
福井 邦明
山本 伸一
土師 岳
山ノ内 宏昭
武弓 利雄
協力分担関係 農業・食品産業技術総合研究機構
農業環境技術研究所
国際農林水産業研究センター
種苗管理センター
家畜改良センター
理化学研究所
研究期間 2011-2015
年度 2014
摘要 1.植物遺伝資源、微生物遺伝資源、動物遺伝資源及びDNAバンクの各分野で、遺伝資源の探索、収集、分類、同定、特性評価、保存、増殖、情報提供を実施し、植物7,622点、植物コアコレクション33セット、微生物1,520点、動物237点、DNA409点の遺伝資源を配布した。
2.ジーンバンク保存のイネ遺伝資源を高度化するために、これまでの3年間で実施したゲノムワイドに分布する768座のSNP情報を付与した5,000系統のアジア在来イネから、多様性解析に基づいて約900系統を選抜し、1粒由来の研究用遺伝資源を作成するための栽培を開始した。
3.ジーンバンク保存のダイズ遺伝資源を高度化するために、1粒由来ダイズ約1,600系統の作成を進めた。昨年度開始した開花・成熟期関連4遺伝子、草型(伸育性)関連1遺伝子、シストセンチュウ抵抗性1遺伝子、種皮・臍色関連4遺伝子、根粒着生関連1遺伝子のSNP情報に加え、裂莢性2遺伝子、葉型1遺伝子のSNP情報を追加した。
4.イネ以外のコアコレクションとして、ジーンバンク事業の委託課題としてナスのコアコレクション作成を進めた。具体的には、約1,000点のナス遺伝資源から987座のSNPタイピングを実施し、DNA情報と農業形質情報からコアコレクション候補として約200系統を選抜した。
5.植物炭疽病菌、植物病原性Rhizobium(旧Agrobacterium)属細菌の推奨菌株セットの整備を進めた。植物炭疽病菌では、rDNA-ITS、β-tubulin-2、Actin、CHS-1、GAPDH、Histone H3、GS又はSOD2の分子系統解析に基づきColletotrichum gloeosporioides及びC. dematium種複合体系統群を再同定し、学名を更新するとともに、カキ炭疽病菌をC. horiiに、ポインセチア炭疽病菌をC. truncatumに、ナルコユリ炭疽病菌をC. spaethianumにそれぞれ変更することを提案した。植物病原性Rhizobium属細菌の典型的菌株を推奨菌株に選定し、ジーンバンクのWebサイトに公開した。R. radiobacter 67菌株を対象としてrecA分系統解析とPCR検定を行い、genomovar(遺伝子型:変種レベルの分類群)を明らかにした。キウイフルーツかいよう病菌の新規系統(Psa5)と本邦新産系統(Psa3)を複数の生産地で検出し、その特性を明らかにすることで、現場で大きな問題となっている本病害の迅速な診断と各系統の検出・同定、及びその対策に貢献した。また、カモガヤに生息するカビ毒産生性Fusarium属菌の新種記載を行い、ジーンバンク保存の納豆菌ファージ強毒性株では保存時に変異が高頻度で発生することを見いだした。
6.微生物遺伝資源の分類同定に関するバーコードDNA塩基配列情報の網羅的整備として、糸状菌・酵母のrDNA ITS、Histone H3領域、細菌の16S rDNA等、計2,637点について解析し、決定配列をジーンバンクのデータベースに順次格納中である。植物ウイルスではCauliflower mosaic virus、Cocksfoot mottle virus等の外殻タンパク質コード遺伝子について塩基配列を解析した。整備したDNA塩基配列情報を基にジーンバンク登録の酵母336菌株の分類検証を行った。
7.マメ類における有用特性の評価と育種利用に向けた実験リソースの整備として、耐塩性野生種Vigna marina、V. riukiuensis及びV. trilobataの全ゲノム解読を完了した。また、Vigna属遺伝資源を用いた乾燥、酸性、アルカリ耐性試験を行い、乾燥ストレス下において光合成速度を高くして根量を増加させる種があること、V. vexillataには、pH4の酸性ストレスを与えても、1日でpHを6程度まで上げる適応能力があることを明らかにした。野生種の栽培化に有用な遺伝子として、裂莢性を支配する遺伝子を同定したほか、Vigna属野生種のEMS処理による突然変異集団から種子休眠性の消失した変異体及び植物体が立木性を示す変異体を得た。
8.放射線育種場が保有している、ガンマ線とイオンビーム照射した「ひとめぼれ」「コシヒカリ」「日本晴」に由来する約850系統の突然変異系統をすべて栽培し、形質が分離している系統については固定化を図った。これら系統をリソース化するため栄養器官である葉の葉色・形態・病斑、稈・分けつの形状、生殖器官である穂の形態・稔性・病害、出穂時期、籾と玄米の形態を調査した。今後、各突然変異系統の特性データを整理・公開することにより、突然変異系統をリソース化し、広く利用できるようにする。
9.栄養体の超低温保存研究では、クライオプレートを用いたサトウキビとイグサの超低温保存法を開発した。サトウキビについては、1.5-2.0 mmの茎頂を用いて、浸透脱水による最適な手順を明らかにし、11系統についてこの手順の有効性を調査したところ、再生育率は57~100%(平均70.3%)であった。一方、イグサについては、昨年から引き続き筑波大学と共同研究を行い、クライオプレートを用いた乾燥法を保存事業に適用するための改良手法を検討した。改良手法を用いることにより、作業者が変わっても再生育率は77~93%と高い値を確保できた。また20系統にこの手法を適用したところ再生育率は70~97%となり、イグサの超低温保存事業にはこの手法が有効であることが明らかとなった。
10.ニワトリmtDNAの2か所のSNP(199C/T、792A/G:AB091008)について、白色レグホンの卵殻質強系:ANJP No.70の40羽、卵殻質弱系:ANJP No.904の40羽において、SNP特異的なPCRタイピングを行った。その結果、すべての個体が199T・792Gを示し、市販ブロイラー肉の多くで見いだされている199Cや792Aは認められなかった。また、両系統併せて17羽を用いて、Dループ領域の塩基配列決定を行ったところ、すべての個体が同一の配列を示した。これらのことは、この2系統がmtDNAによるトレーサビリティ利用などにおいても利用可能な、有用な遺伝資源であることを示唆した。
11.ITPGR加入への対応として、我が国が多国間システム(MLS)に登録する植物遺伝資源のJP番号を管理するため、遺伝資源データベースに、MLS対象遺伝資源17,948点のリストを新規作成し、Web上で公開した。また、オンライン配布申込システムにおいては、アカウント制に移行し、同システムの植物・微生物の英語版を新規公開するとともに、ITPGR事務局への定型の材料移転契約(SMTA)実績報告の準備を進めた。さらに、海外の植物遺伝資源利用者のために、アクセスと利益配分(ABS)に関する相談窓口をWeb上に開設した。
12.諸外国との共同現地調査としては、カンボジアでトウガラシ類とウリ類を中心として野菜類107点及びマメ科植物48点、ベトナムでは、カボチャとキュウリを中心に58点、ラオスでは、ソルガムを中心に雑穀類27点、ミャンマーではイネ科、ナス科、マメ科、ウリ科植物計102点を収集した。材料は現地ジーンバンクに保存するとともに、カンボジアとミャンマーについてはSMTAで生物研ジーンバンクへ導入し、ラオス、ベトナムについては導入へ向けた交渉を実施している。
13.諸外国との共同研究としては、今年度から農林水産省の委託プロジェクト研究「海外植物遺伝資源の収集・提供強化」を開始し、ベトナム、ラオス、カンボジアと共同研究を進めるとともに、管理者招聘によるワークプランの策定、若手研究者の招聘による能力開発を実施した。このほか、共同研究協定を締結しているインド・タミルナドゥ農業大学(ソルガム)及びタイ・カセサート大学(Vigna属マメ類)との共同研究を継続実施した。
カテゴリ 育種 遺伝資源 かき かぼちゃ 乾燥 キウイフルーツ きゅうり さとうきび 植物ウイルス 大豆 炭疽病 データベース 抵抗性 とうがらし なす ポインセチア ゆり

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