| 課題名 | (2)気候変動を考慮した漁場の形成や資源の変動に関する情報を的確に提供するための研究開発 |
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| 課題番号 | 2019030633 |
| 研究機関名 |
水産総合研究センター |
| 協力分担関係 |
(国研)海洋研究開発機構 北海道大学 東京大学 東京海洋大学 東京農工大学 福井工業大学 京都大学 鹿児島大学 (一社)漁業情報サービスセンター |
| 研究期間 | 2016-2020 |
| 年度 | 2019 |
| 摘要 | ・近年の餌料環境の年変化を把握するため、1997年から毎月1回行っている富山湾プランクトンモニタリング調査データを用い、環境要因との関係を分析した。カイアシ類ノープリウス幼生は高水温であった2007年に現存量が低かったことから、水温変化と現存量の関係が示唆された。また、主要動物プランクトン(カイアシ類、オキアミ類、端脚類、ヤムシ類)のうちカイアシ類の現存量は2002年以降増加傾向が、オキアミ類の現存量は減少傾向が認められ、クロロフィル量は増加傾向が認められた。 ・長期の動物プランクトン湿重量の変化を把握するため、1967~2018年に日本海~東シナ海の広範囲においてノルパックネット(プランクトンネット)で採集された動物プランクトン湿重量データを分析した。日本海の動物プランクトン湿重量は、1990から1995年にかけて2倍に増加していた。1990年代は、マイワシ資源の減少、カタクチイワシ資源の増加が起こっており、マイワシ資源が多い時期に動物プランクトン湿重量が減少する傾向が見られた。 ・太平洋東北海域においては、親潮・黒潮混合域における動物プランクトンの群集構造の季節、経年変動の解析を、三陸沖に設けた観測線A-lineの調査から得られた動物プランクトン群集の長期データを用いて行った。その結果、水塊により動物プランクトン群集構造が4つのグループに区分され、各グループの出現する季節・水塊が明らかとなった。 ・植物プランクトン群集のサイズ構造の変動と物理、化学環境要因との関係の解析を、A-lineでのクロロフィルaの長期データを用いて行った。その結果、植物プランクトン群集全体の現存量及びサイズ組成に水温が大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。 ・気候変動や海洋環境の変動に伴うサンマの資源変動の要因や漁場分布特性の解明の取り組みとして、0歳魚の分布様式及び黒潮続流域(黒潮が関東東方から離岸した後東進し東経160度に至るまでの海域)における産卵場の広がりと水温の関係を解析した。資源の減少に伴い0歳魚の分布域が東側にシフトすることが示され、東側の産卵場の重要性が増していることが示唆された。さらに、黒潮続流域では仔稚魚が今まで想定していた水温域よりも低い水温域にも分布していることが確認された。気候変動や海洋環境の変動に伴う資源変動の要因や漁場分布特性の解明には、黒潮続流域の産卵場としての重要性評価とともに、0歳魚の移送過程を明らかにする必要が示唆された。 ・東北近海における水塊の経年変動とクロロフィルaとの関係についての解析に着手し、夏季に親潮系の水塊が東北近海に広く分布している年は、高クロロフィルaの分布が見られることが分かった。また、房総沖の水塊変動と千葉県のカツオ漁獲変動の関係を解析し、黒潮流軸の離岸傾向が強い年は、房総近海は低温の水塊の分布頻度が高くなり、カツオ曳縄漁業の漁獲量が減少傾向を示すことが分かった。 ・東北海域の漁場形成の鍵プロセスである春季珪藻ブルーム(大増殖)形成機構について、春季のA-lineの長期調査データを用いた解析を行った。その結果、大規模な春季珪藻ブルームが低塩分で特徴付けられる沿岸親潮水と同期して形成されること、混合による下層からの栄養塩補給がブルーミング時にも継続して行われていることなどが明らかになった。 ・カツオの東北沖への来遊予測結果を検証したところ、実測値は予測値の信頼区間内に収まり、一定の予測精度を保っていることが示された。 ・貧栄養で知られる黒潮域における栄養塩供給過程及び動植物プランクトンや魚類仔稚魚等の生物生産機構に関して、得られた成果を中心にAGU Monograph(アメリカ地球物理学連合が発刊する書籍)から「黒潮特集号」として発刊(平成31年4月)した。 ・アカイカの資源量指数である夏季の流し網調査におけるCPUE(努力量当たりの漁獲量)と、稚イカの生残率に影響を及ぼすと考えられる10月の産卵場における水温躍層深度(海水の鉛直混合により、密度が均質な特性を示す表層水の厚さ)別の海域面積の年変化を解析した。暫定的な結果としては、2012年から2016年の5年間では、躍層深度の浅い海域面積と翌年のCPUEの間には、正の相関が見られた。 ・サンマについては、餌料環境の時空間的な特徴を明らかにした。サンマは6~7月の北上期に他の季節よりも活発に摂餌を行っており、この時期のサンマの重要な餌となっているカイアシ類、オキアミ類の分布から、同時期の日本近海はサンマにとって良い餌環境であることが示された。近年は北上期に日本近海のサンマの分布量が減少しており、このことが近年のサンマの肥満度低下の一因となっていることが示唆された。また、6~7月における年齢別の分布を見ると、0歳魚は他の年齢に比べ東側、特に西経域にも多く分布していた。この傾向は2010年以降さらに強まり、2013~2017年の分布中心はより東に移動していた。 ・東北近海のマサバの漁場予測モデルについて、FRA-ROMS(太平洋および我が国周辺の海況予測システム)の予測水温を用いる手法へと改良した。マイワシ漁場形成モデルについては、モデルに利用する解析データ期間を1993~2015年から、1993~2018年に更新し、モデルを改良した。 ・太平洋を予報対象海域とするスルメイカの予報については、長期予報及び中短期予報を合わせて1か月程度先までの漁況予報を作成し、月1回程度の発信を継続した。 ・岩手県野田湾から茨城県那珂湊に設置された16カ所の水温ブイ(定地水温ブイ)より得られたデータからマサバ漁獲開始時期をリアルタイム予測するシステムを構築した。さらに、東北沿岸の定置網入網情報システムの漁獲データと定地水温ブイデータを解析した結果を基に、東北沿岸の水温情報システムに漁期予報機能を追加し、テスト運用として東北区水産研究所のホームページ“東北ブロック沿岸水温速報”に掲載した。 〔アウトカム〕 ・低次生態系モニタリング等で得られた動物プランクトン種組成や海洋の物理、化学、生物環境に関する成果は、水産庁補助事業「資源量推定等高精度化」の中でマイワシ対馬暖流系の資源変動要因解明のための基礎的知見として活用されている。 ・開発した水塊分類ソフトウェアの解析事例を纏めた論文が水産海洋学会誌(83巻3号)に掲載されたため、本ソフトウェアをフリーアクセスとし、成果を広く公開した。また、本ソフトを利用した水塊変動の解析の実習会を、昨年度に引き続き開催した。実習会で進めた解析の成果を報告するシンポジウム(東北ブロック水産海洋連絡会)を開催し、各県の沿岸域での水塊変動の特性の知見が蓄積された。 ・サンマについては漁業者説明会において、餌料環境の時空間的な特徴の解明といった研究成果を活用した説明を行ったことにより、漁業者の近年の資源状況の理解促進に大きく寄与した。 ・FRA-ROMSの全国の関係研究者による利用を継続した。 ・各種漁況予報は漁業関係者への説明等で資料として活用され、漁業者の効率的な操業の実施に貢献した。 ・マサバ漁期開始予測情報を漁業者へ提供し、漁業者の効率的な操業に貢献した。 |
| カテゴリ | 管理技術 モニタリング |