(6)水産物の安全・安心と輸出促進を含めた新たな利用のための研究開発

課題名 (6)水産物の安全・安心と輸出促進を含めた新たな利用のための研究開発
課題番号 2019030639
研究機関名 水産総合研究センター
協力分担関係 (国研)産業技術総合研究所
(地独)青森県産業技術センター
福島県
高知大学
(一社)トロピカルテクノプラス
福島県漁業協同組合連合会
いわき市漁業協同組合
相馬市磯部地区水産物流通加工業協同組合
ミツイワ株式会社
ナラサキ産業株式会社
研究期間 2016-2020
年度 2019
摘要 ・新たな海洋生物毒について、オカダ酸群を産生する微細藻のProrocentrum limaから新規のオカダ酸類縁体を単離し、化学構造(C9-diol OA)を明らかにした。さらに、下痢性貝毒オカダ酸の認証標準物質中に新規の異性体(分子式が同じだが構造の違う化合物)として34-epiOAを発見したことにより、既知の異性体である19-epiOAを含めた正確な情報提供と標準物質の濃度決定が可能となり、認証標準物質の品質向上につながった。これらの異性体は生体内及び溶液中で速やかにオカダ酸に変換することから、オカダ酸と同等な毒性と評価して問題ないと考えられた。
・麻痺性貝毒の機器分析法(LC-MS/MS)について、21機関による国際的な妥当性評価試験に参加した。その結果、機器分析法は麻痺性貝毒の精確な検査方法であることが国際的に確認された。妥当性評価試験の結果は、分析法の国際誌として権威のあるThe Journal of AOAC INTERNATIONALに掲載された。
・小売店等で購入した水産物174検体(生鮮魚介類や加工品を含む)について、腸炎ビブリオを対象とした汚染実態調査を実施した。その結果、約10%の検体(主に丸魚の体表やエラ、加熱用食材)から腸炎ビブリオが検出されたが、生食用として販売されている水産物については、全ての検体で生食用の規格基準(商品1g当たり菌数100以下;最確数法)を満たしていた。
・鰹節製造現場で実際に使用している薪の水分の年間推移を調査した結果、季節によって変動があった。また、薪モデルを用いた燃焼試験の結果、薪の水分量が多くなるに従い、薪の(水分重量を除いた)木質換算重量当たりの多環芳香族炭化水素(PAH)発生量が増大することが確認された。
・薪の燃焼時に発生する燻煙を一定量吸引してフィルターに捕集し、GC-MS分析することで、輸出時の基準値であるPAHの4項目を精度よく分析する方法を確立した。
・ヒジキ加工品を対象に、三次元蛍光測定法及び近赤外分光法を用いた原産地判別手法を開発した。三次元蛍光測定法の判別精度は86.8%だったが、粉体のまま簡易的に産地判別できるメリットがあった。また、近赤外分光法では、購入年度(加工年度)を分けることにより、日本産と韓国産を判別できる可能性が見いだされた。一方、元素分析による原産地判別手法では、日本産と韓国産のヒジキがストロンチウム濃度により96.8%の高精度で判別できるモデルが得られた。
・水産物のトレーサビリティーに関して業者等への聞き取り調査を行った結果、生産履歴追跡システムを開発するための基礎条件として、ICT技術を利用したスマホ、タブレット端末の導入という技術的条件に加え、生産地情報などの不可欠情報や風評を払拭するための放射能検査情報を提供することが重要であることが明らかとなった。
・セレノネイン(抗酸化作用及びメチル水銀の解毒作用をもつ低分子の有機セレン化合物)は、哺乳類の培養細胞を用いた試験により、一部の抗酸化関連遺伝子の発現を誘導する効果があることがわかった。この他、代謝研究に必要な安定同位体標識セレノネインの生合成と精製にも成功した。
・海藻ポリフェノールについては、アカモク(褐藻)の未成熟個体、成熟個体のいずれにも乾燥重量当たり1~2.5%のポリフェノールが含まれていることや、雄株よりも雌株に多く含まれる傾向が見いだされた。また、ポリフェノール含有量が増えるほど、アカモクエキスの抗酸化能が上がることが明らかとなった。
・二枚貝類の美味しさ評価については、福島県相馬産ホッキガイの美味しさの季節特性を味覚センサーにより苦味、雑味、渋味刺激、旨味(先味)、塩味、旨味コク(後味、余韻)、甘味に分けて評価した。この過程では、味覚センサーに供するサンプル(ホッキガイ足)の調製手法を検討し、20倍希釈よりも10倍希釈したサンプルを用いた方が適切に美味しさ評価(特に塩味成分)できることを明らかにした。この手法を用いた評価の結果、9月や12月と比べ、10月のホッキガイは旨味や旨味コクに優れていることがわかった。
・非破壊分析による脂質成分評価については、インライン近赤外分光装置を用いた魚体の非接触測定により、さば類の凍結・解凍状態に応じた脂質検量モデルを構築した。その過程で、装置への魚体の投入方向を揃えることで脂質含量の測定精度が向上すること、またサンプルの凍結・解凍状態を識別できる可能性を見出した。
・コモンカスベ(エイの1種)水煮と醤油煮レトルト加工品のコンドロイチン硫酸(CS)定量法を検討し、固形物と液汁を別途精製定量した。その結果、レトルト加工によりCSの約50%が液汁に移行すること、CS総量への顕著な影響は認められないことが明らかとなった。
・地域ブランド認証である北海道産食品独自認証制度(イクラ)と地理的表示(GI)保護制度(シラス)を対象に、消費者アンケート調査及び消費者評価分析を実施した。その結果、認証を取得した食品は、認証を取得していない場合よりも、付加価値が高いと消費者に評価されること、この付加価値に対する消費者の評価額は販売価格に換算するとそれぞれ約8.5%、約8.2%に相当することがわかった。また、認証を取得した食品の付加価値を評価する消費者の特徴として、食品の産地にこだわりを持つ人であることを明らかにした。
〔アウトカム〕
・オカダ酸の認証標準物質に新規異性体が含まれていることが明らかになり、認証標準物質の品質が向上した。今後、国際的に最高品質の認証物質として利用される見込み。
・開発した麻痺性貝毒検査キットが令和元年2月に市販され、一部の海域の貝毒検査に利用されるとともに、農林水産省「食料安全保障確立対策推進交付金」により令和2年度以降の貝毒検査で利用され、貝毒の監視体制に組み込まれる見込である。
開発した下痢性貝毒認証標準物質第2ロット、第3ロットは現在頒布している第1ロットの在庫がなくなり次第、認証標準物質として頒布される予定である。
・開発した下痢性貝毒の二次標準物質は、令和元年7月から富士フイルム和光により市販品として発売された。
貝毒精製方法について、令和元年度に1件特許出願し、令和2年度に1件を出願予定。
鰹節製造過程におけるPAH低減化対策に資する基礎的知見は、農林水産省消費・安全局を通じて事業者へ通知される見通しである。
・三次元蛍光測定法によるヒジキの原産地判別方法は、簡易迅速な一次スクリーニング手法としての活用が期待される。
静岡県水産技術研究所と共同でアカモクの機能性成分の調査を実施し、得られたデータを地元漁協に提供して、アカモクの利用開発・拡大への活用を期している。
・これまでに開発したインライン脂質含量計測技術は、めいつの魚ブランド化推進協議会によって宮崎県のブランド魚「めいつ美々鯵」の自動脂質選別に活用されている。
・コンドロイチン硫酸を訴求要素としたペットフードの開発を宮崎大学獣医学科との協力のもと開始した。
平成30年度末から、宮崎県水産試験場、練り製品加工企業と共同して、シュモクザメ加工残渣の脊椎や軟骨をレトルト処理したペーストを揚げ蒲鉾に添加し、健康性をアピールする商品開発の取り組みを行っている。
・千葉県では千葉漁連が富津海苔加工場の操業効率維持のために、東京湾産アカエイを活用した総菜開発を千葉県水産総合研究センターと協力して令和元年度から開始した。実用化に向けた動きを支援するため共同研究を実施している。
・高付加価値化に関する特許出願1件を行った。
カテゴリ ICT 加工 乾燥 機能性成分 高付加価値 地域ブランド 風評 輸出

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