1 開発途上地域における持続的な資源・環境管理技術の開発

課題名 1 開発途上地域における持続的な資源・環境管理技術の開発
課題番号 2019030629
研究機関名 国際農林水産業研究センター
協力分担関係 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
東京大学
北海道大学
東京工業大学
東京農業大学
鳥取大学
琉球大学
日本工営株式会社
ユニチカ株式会社
日鉄エンジニアリング株式会社
研究期間 2016-2020
年度 2019
摘要 ベトナムのメコンデルタでは、バイオガスダイジェスター(BD)、水田、家畜生産のそれぞれのGHG削減技術を連携し、資源の循環と有効利用により、農家の気候変動緩和策に対するインセンティブをさらに高めることが肝要である。その一つとして、BD消化液を窒素肥料として水田で利用し、環境への負荷軽減と化成肥料削減を実現するため、消化液施用の量とタイミングを最適化し、農家が使える簡便な葉色指数をポット試験で見出し、AWD技術と合わせ、農家圃場での水稲の生産性とGHGの削減量についての検証を進めている。またAWD技術を地域に適用した際の影響を、農家経済、環境への負荷、行政コスト等の観点から予測し評価する課題を今年度から開始し、ライフサイクルアセスメント(LCA)手法を使った調査、分析を開始した。畜産分野では、ベトナムで実施しているカシューナッツ殻液(CNSL)の給与試験において、ライシン牛の反芻胃からのメタン排出を20%程度削減可能であることを再現した。試作した天候インデックス保険についての表明選好質問を対象農家に対し行った結果、サイクロン、干ばつ、洪水に起因する災害に対する保険に対して一定の需要があることが明らかになり、また保険の対象災害と地域を考慮する必要性も示された。保険会社のマージンを20%とし5年に1回の洪水被害を想定して最適保険契約を設計すると、年間の保険料は21,600チャット(約1,650円)程度となった。洪水リスク対応策については、防災面と利水面の両方の効果を評価するモデルを作成し、ミャンマーのイエジン灌漑地区に適用した結果、洪水防止機能と都市用水供給機能とは大きく利益が相反するが、灌漑用水供給機能との競合は比較的少なかった。また、水利用向上方策のプロトタイプとして、蒸発散量を含めた用水需要の推定、支線水路間の配分調整の改善、ならびに都市用水需要と競合する乾季灌漑用水について検討し、合理的用水配分ルールを策定した。
ブルキナファソ中央台地においては、スーダンサバンナで優占する2つの土壌型(リキシソルとプリンソソル)のそれぞれについて、ソルガムの収量と農家収入の観点から提案した最適肥培管理法の有効性をオンファーム試験で実証した。土壌侵食防止効果を指標としたArcSWATモデルによって技術評価を行ったところ、流域スケールでの土壌侵食量は複数技術の集約により許容範囲以下まで下げられることが明らかになった。
斜面が急峻なエチオピア高原地帯の農地において、複数年にわたる栽培試験の結果から、コムギ低刈りを土壌保全効果の高い有効技術として評価した。小流域の流末に位置する典型的なため池の堆砂量の調査を行い、堆砂を浚渫し近隣に農地を造成して野菜栽培の実証を行った。また対象地域の農民へのアンケート調査と経済実験の結果から、共有地の保全意識を高める活動として農民研修が有効であることが示された。さらに、対象地域の農家の食料摂取量調査の結果、乳ならびに乳製品へのアクセスが困難となり、栄養摂取不足に陥っていることがわかったが、人口増加に加え森林保全・放牧禁止施策推進もその要因であることが示唆された。ステークホルダーにはこの結果を、科学的データや統計を基に環境と生計が両立できる代案を検討した上で提示したい。
パラオ共和国のバベルダオブ島の調査対象地域であるガリキル川流域において流域環境評価に用いるSWATモデル適用のためのデータをほぼすべて取得し、シナリオ分析の準備を整えた。農地においては、保全農業技術であるオーガー耕やトレンチ耕と有機物マルチの組み合わせが有効であり、これら技術の農家への普及を進めるため農民参加型のMother-Baby法による試験を開始した。
サトウキビ窒素肥培管理の課題では、土壌-作物モデル(APSIM)をネグロス島の条件に合わせてチューニングし、栽培試験結果を適用したところ、収量の予測が十分可能であった。
インド国立中央塩類土壌研究所(CSSRI)のライシメーターを使った試験において、有資材型補助暗渠機(カットソイラー)の施工を行うと、乾季における土壌塩濃度が非施工区に比べて低かったことから、雨季の間に塩分が圃場外に排出されたものと推察された。さらにカットソイラーによって排水改善された圃場での灌漑法として、畝間への事前通水によって浸透ロスを削減する方法が有効であるとことが示唆された。インドにおいては国立農業研究所(IARI)との共同研究によって、耐塩性遺伝子Nclをインドのダイズ品種に導入した雑種後代F3を順調に得、またベトナムのカントー大学との共同研究においては、ベトナムのダイズ品種にNclを導入したBC3F1世代の個体についてDNAマーカー選抜を開始した。
コムギのエリート品種にBNI能の高いコムギの近縁種オオハマニンニク(Leymus racemosus)の染色体断片(Lr-N)を置換した系統の中から、収量や形態がエリート品種と同様でかつBNI活性の高い数系統が確認された。これらの系統を日本、インドならびにメキシコでの圃場試験栽培を開始し、施肥窒素の利用効率や畑からの一酸化二窒素ガス(N2O)の発生量のモニタリングを行う準備を整えた。ソルガムの系統のうち、高ソルゴレオン分泌系統を栽培した土壌の硝化活性が低く抑えられ、また土壌中のアンモニア酸化古細菌(AOA)が減少したがアンモニア酸化細菌(AOB)の数に変化がなかったことから、ソルゴレオンはAOAを抑制することを明らかにした。ブラキアリアについてはLC-MSによるブラキアラクトンの分析手法を確立するとともに、アンモニア酸化酵素であるヒドロキシルアミンオキシダーゼとブラキアラクトンのドッキングシミュレーションを行った結果、酸性条件で優勢となるケト形のみが活性中心と結合できることが示され、ブラキアラクトンによるBNI効果は酸性土壌で大きく発揮されることが裏付けられた。
カウンターパート機関INERAの支所に肥料製造のパイロットプラントが落成し、運用が開始された。ブルキナファソ産リン鉱石に炭酸カリウムを適量加えて焼成することにより、水稲ならびにソルガムへの肥効が高く、アルカリ害が少ない実用的な肥料を製造することに成功した。試作肥料を使った多地点栽培試験の結果から、複合肥料の基本となるNPKの配分と、それぞれの地域に最適な肥料設計を開始した。
カテゴリ 管理技術 コスト さとうきび しそ 水田 施肥 ソルガム 大豆 DNAマーカー ナッツ にんにく 肥培管理 評価法 品種 モニタリング 野菜栽培

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