1-(2)気候変動を考慮した漁場の形成や資源の変動に関する情報を的確に提供するための研究開発

課題名 1-(2)気候変動を考慮した漁場の形成や資源の変動に関する情報を的確に提供するための研究開発
研究機関名 国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産資源研究所
水産資源研究センター海洋環境部 寒流第1グループ
寒流第2グループ
水産資源研究センター海洋環境部 暖流第1グループ
暖流第2グループ
暖流第3グループ
水産資源研究センター広域性資源部 まぐろ第1グループ
まぐろ第2グループ
水産資源研究センター広域性資源部 外洋資源グループ
水産資源研究センター社会・生態系システム部 漁業管理グループ
水産資源研究センター浮魚資源部 浮魚第1グループ
浮魚第2グループ
浮魚第3グループ
浮魚第4グループ
水産資源研究センター底魚資源部 底魚第4グループ
国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所
環境・応用部門水産工学部 漁業生産工学グループ
環境・応用部門沿岸生態システム部 有明海・八代海グループ
企画調整部門 山口連携室
養殖部門生産技術部 技術開発第1グループ
養殖部門養殖経営・経済室
環境・応用部門沿岸生態システム部 漁場生産力グループ
協力分担関係 東京大学
北海道大学
東京海洋大学
東京農工大学
福井工業大学
京都大学
鹿児島大学
(国研)海洋研究開発機構
(一社)漁業情報サービスセンター
研究期間 2016-2020
年度 2020
摘要 ・海洋物理環境、動・植物プランクトン等を主対象とした海洋生態系のモニタリング調査(海洋環境モニタリング調査)を継続し、既存データを用いたプランクトン群集構造の時空間変動の解析を進めた。
・東北海域における物理環境の変動が低次生産に与える影響の解析において、北太平洋の気候変動指数(NPGO)と東北沖の海況変動との関係を把握した。即ちNPGO指数が高い時、2.5年遅れて黒潮続流の流路が安定(南北の振れ幅が小さくなる)し親潮系水の分布が拡大し、冬期混合層が厚くなる結果、低次生産者である植物プランクトン(chl-a)が増える関係が示された。
・プランクトン群集構造の季節・長期変動において、動物プランクトンは、冬?春に親潮域、春?夏に親潮域と混合域、秋に混合域と黒潮域で卓越すること、2011、2013?2016年7月に親潮域で減少し、混合域と黒潮域で増加していたこと、植物プランクトンは冬?夏の親潮域で大量に分布していたことをそれぞれ把握した。サンマ漁場形成プロセスに係わる餌料プランクトンの解析では、サンマの主要餌料(カイアシ類のネオカラヌス属)は主に春?夏の親潮域に分布すること、2011年以降は同季同海域のサンマ餌料プランクトンが減少傾向にあることから、サンマ資源や漁場形成への影響が示唆された。
・三陸~常磐沖に発生する極端な低水温(異常冷水)の原因解明を進め、異常冷水は、親潮第一分枝の極端な南下、オホーツク海循環(オホーツク海沿岸の反時計回りの表層流)の極端な強化のいずれか、または両方の効果で形成されることを明らかにし、2000~2014年における水温の特異的な変動とそれに対する水産資源の応答をとりまとめた。
・日本海における環境要因が低次生産に与える影響と主要餌生物の現存量変動メカニズムの解明において、富山湾の物理・化学環境と植物プランクトン量(chl-a)との関係を解析し、陸域起源の栄養塩供給に伴う高い低次生産性を確認した。
・主要餌料生物の変動メカニズム解析において、長期的には、2012年以降、動物プランクトン(特にカイアシ類)現存量の増加傾向が見られ、chl-aの変動と概ね一致すること、中・短期的には、高水温期から冷水温期に変化するタイミングでカイアシ類現存量が大きく増加することをそれぞれ把握した。また種組成個体数データから、湿重量データを作成し、大型冷水種のカイアシ類3種のマイワシ対馬暖流系群の資源変動要因としての重要性が示唆された。
・富山湾の漁場形成に関わる環境要因の解明において、マイワシ漁獲量と海洋環境の関係を解析し、3月の200m深水温と3月のマイワシ漁獲量に高い相関が見られることを把握した。200m深水温は沖合の暖水塊の挙動を反映したものであり、数箇月先の漁場形成を予測できる可能性が示唆された。
・長期漁海況予報としてイワシ類、サバ類、マアジ、スルメイカ、ブリを対象に水産研究・教育機構ホームページから年度内に23回の情報発信を行った。
・マイワシ、サバ類、イカ類、サンマを対象として釧路、厚岸、根室、気仙沼で、漁業者等水産関係者を対象とした説明会を実施した。さらに、令和2年7月に水産庁にてスルメイカを対象とした記者レクを開催した。
・サンマでは、肥満度の変動要因の解明を目的に、サンマの索餌回遊期における食性及び餌料環境について解析を行い、摂餌量の季節変化、北上期の食性及び主要餌生物の現存量の経年変化を解明し、漁海況予報の精度向上や漁業者への説明に活用された。
・カツオについては、令和元年度までに開発した予測技術を用いて常磐・三陸沖長期来遊資源動向予測(1回)、主分布域予測情報を4回発信し、令和元年度に引き続き予測精度の検証を行った。
・サンマでは、1回の長期漁海況予報を発信した。予報において令和元年度から新たに追加した来遊カレンダー(漁期前分布緯度と耳石輪紋間隔、漁場分布状況を元に計算した予測結果)による漁場来遊情報を引き続き提供するとともに、海況予測モデル(FRA-ROMS)による水温予測とサンマの回遊特性を組み合わせた回遊モデルを用いて来遊予測時期の精度向上を図った。
・マサバについては、令和元年度までに開発した予測手法の結果を検証しつつ、FRA-ROMSの予測水温から沖合のマサバ漁場予測を行い、それに基づき水産試験研究機関等の事業関係者向けに「太平洋マサバ中短期予報」として令和2年11月に実際に試験発信を行った。マイワシについては、近年の春季のマイワシ漁場と水温との関係を整理し、漁場の予測手法案の提示を行った。
・令和元年度から公開を開始したマサバ定置網Web漁期予報システムにおいて、令和2年12月からマイワシを加えて運用を開始した。併せて漁業者が分かりやすいように近傍市場の水揚げ量を表示できるようシステム改修を行い、情報提供を開始した。
・令和元年度に引き続き、太平洋スルメイカを対象として漁期中に月1回(計2回)の中短期予報を発信した。
・太平洋に面した宮崎県から千葉県までの水産試験研究機関に対して黒潮大蛇行時における特異現象に関するアンケートを実施し状況把握を行うとともに、資源海洋調査研究会にて特異現象をテーマにした研究発表を企画・実施した。
・資源調査・評価事業の漁船活用型調査(スルメイカ対象)で実施している漁船による観測データを、毎月発行している日本海漁場海況速報に活用した。沖合域中心に調査船でカバーできなかった範囲の実測値を含めた速報配信を実現した(2020年8月版~)。
・イカ釣り漁業者が受け取りやすい漁業情報サービスセンター(JAFIC)が運営する漁海況情報配信システム(エビスくん)の画面を利用して、令和2年6月から日本海のスルメイカ分布予測情報の公開を開始した。画面では、相対的なスルメイカ分布量は色情報として、漁獲サイズ(平均外套背長)は単純なマーク(×、△、〇)として表示され、予測状況を一目で把握可能である。予測期間も、ユーザー自身で最大30日後まで変更できるものとした。
〔アウトカム〕
・海洋環境モニタリング調査で得られた動物プランクトン種組成データや海洋の物理、化学、生物環境に関する成果は、水産庁補助「資源量推定等高精度化事業」の中で、マイワシ、マサバ太平洋系群における資源変動要因解明のための基礎的知見として活用されている。
・NPGOと東北海域における低次生産との関係把握で得られた成果は、今後、資源の中長期変動メカニズムの検討や、漁海況予測の精度向上に活用される。
・漁業者説明会において、サンマ主要餌料の時空間的な変動把握や海洋物理環境の変化といった研究成果を活用した説明を行ったことにより、近年の資源状況、漁場形成状況等への理解促進に大きく貢献した。
・サンマの食性及び餌料環境の解析結果は、不漁及びサイズ低下要因の説明として、漁業者の近年の資源状況の理解促進に大きく寄与するとともに、サンマ資源状況の評価及び漁海況予報の精度向上に貢献した。
・海洋環境モニタリング調査で得られた動物プランクトン種組成データや海洋の物理、化学、生物環境に関する成果は、水産庁補助「資源量推定等高精度化事業」の中で、マイワシ対馬暖流系群における資源変動要因解明のための基礎的知見として活用されている。
・カツオに関する各種予測は漁業関係者への説明等で資料として活用され、漁業者の効率的な操業の実施に貢献した。
・サンマ来遊カレンダーや回遊モデルの開発により、予測精度の向上と漁業者にわかりやすい情報提供の実施に貢献した。
・マサバに続きマイワシで漁業者に向けて漁期開始予測情報の提供を開始。併せて漁獲情報提供も開始したことで、漁業者の効率的な操業に、より大きく貢献した。
・スルメイカ分布予報システムから発信された分布情報は、漁業者の効率的な操業の実施に活用された。
カテゴリ かぶ モニタリング

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