3 戦略的な国際情勢の収集・分析・提供によるセンター機能の強化

課題名 3 戦略的な国際情勢の収集・分析・提供によるセンター機能の強化
研究機関名 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター
研究分担 情報広報室
プログラムディレクター
農村開発領域
社会科学領域
生物資源・利用領域
生産環境・畜産領域
水産領域
熱帯・島嶼研究拠点
協力分担関係 農業・食品産業技術総合研究機構
農林水産政策研究所
東京大学
東京都立大学
東京農業大学
九州工業大学
IMTエンジニアリング
パナソニック
シチズン
三菱ケミカル
研究期間 2021-2025
年度 2021
摘要  情報を多角的に収集分析し、国内外に広く発信するとともに、戦略的なパートナーシップを構築して、研究開発や研究開発成果の社会実装に向けた取組を推進するため、以下の取組を行った。
 開発途上地域の農林水産業と食料システムに係る課題や開発ニーズを把握するため、国内外に向けた情報発信として、以下の取組を行った。
 戦略情報プロジェクトでは、戦略的広報・グローバルセンター機能の 2 テーマを通じた広範な情報の継続的、組織的、体系的な収集・整理・発信体制の構築と、動向分析・技術評価システム開発の 2 テーマを通じた質の高いオリジナル・コンテンツ提供を通じ、開発途上地域の農林水産業と食料システムに係る課題や開発ニーズに関する情報を広く研究者、行政組織、企業等に提供した。
 まず、戦略的広報では、国際農林水産業研究に関する時事的話題を国際農研の活動と絡め、研究者、行政組織、企業及び一般的な読者を想定し、質の高い情報をわかりやすく紹介する活動を強化した。その中心的なメディアとして、令和元年 3 月に国際農研ウェブサイトに立ち上げた Pick Up コーナーを利用し、令和 3 年度は 4 月以来、平日は毎日記事を更新した。Pick Up で取り上げる記事の内容は、国連気候変動枠組み条約締結国会議 COP26 や国連食料システム・サミット(UNFSS)などの国際的なイベントや気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や FAO 等の報告書・Nature 誌等に掲載された最新研究と多岐にわたる。令和 3 年度 4 月~1 月末までに 203 本の記事を掲載し、プログラム C の閲覧数は 163,767 ビューを記録、令和 2 年度の同期間の 1.49 倍に増加した。とりわけ 7 月に公表したダッシュボード付きの「世界人口 2021 年」記事やグローバル・フードシステム関連記事が Google 検索で上位に位置することで国際農研の認知度向上に貢献した。Pick Up は、外務省科学技術外交推進委員会担当部局や、ササカワ・アフリカ財団・日本財団などから、国際事情に関する貴重な情報源として位置付けていると評価していただいている。また、Pick Up 記事を契機に、日本農業新聞でのWorld View 連載記事、グローバル・フードシステムに関する論説の新聞雑誌記事掲載や取材・シンポジウム講演への依頼(日本経済新聞での意見記事掲載、グローバルネット依頼記事、農学会シンポジウム講演)に繋がった。令和 4 年 3 月に国際農研のウェブサイトレイアウトを更新し、Pick Up アイキャッチ画像を拡大することで記事への興味関心を引き、集客力向上を目指した。こうした情報発信とネットワークを契機とし、UNFSS・東京栄養サミット(N4G)に向けた外務省科学技術外交推進会議の「地球の健康」ワーキンググループ・オブザーバーとして提案書に国際農研の貢献が言及され、科学技術イノベーション(STI)ショーケースに国際農研の事例が 8 件採択された。このほか、令和 4 年 2 月に公表された IPCC 第 6 次評価報告書(AR6) 第 2 作業部会(WG2)報告書で国際農研の研究が 6 件引用された。また、令和 4~6 年にかけて、生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES) ネクサス報告書にも主執筆者の一人として貢献することが決まっている。
 センター機能課題では、国際農林水産業研究のセンター機能の一環として、国内のJICA 食と農の協働プラットフォーム(JiPFA)、農学知的支援ネットワーク(JISNAS)、栄養改善事業推進 プラットフォーム(NJPPP)、アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)、食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA)等の運営委員として緊密な連携をとるとともに、国際的なパートナーシップである小麦イニシアティブ(WI)や熱帯農業プラットフォーム(TAP)等において情報収集・発信・各種調整の窓口の役割を担った。G20 首席農業研究者会議(MACS)に小山理事長が参加し、令和 3 年 7 月国連食料システム・サミット(UNFSS)科学グループ Science Days の Science-Policy Interface セッションに飯山プログラムディレクターがパネリストとして参加、国際的なアジェンダセッテイングの場に積極的に参画した。また、4 つの国際シンポジウム・ワークショップを企画開催した。まず、令和 3 年 11 月の JIRCAS 国際シンポジウム2021 は、「みどりの食料システム戦略」のための国際連携プラットフォームをテーマに、農林水産省・農研機構・FAO 駐日連絡事務所の後援でオンライン開催した。シンポジウムでは、アジアモンスーン地域における持続性・生産性を両立する食料システム転換実現の世界的意義と同時に、域内における生態学的・社会経済的多様性を尊重しイノベーションに関する情報共有におけるパートナー間の協力の重要性について議論した。国際シンポジウムは当日 510 名のオンライン視聴があり、YouTube に公開された映像は令和 4 年 1 月末までに累計約 2000 回視聴されている。本シンポジウム登録視聴者向けに要旨集を提供したほか、政策・行政関係者向けにアジアモンスーン地域の定義と当地域における食料システム転換のプラットフォームの重要性を提言するPosition Paper を令和 4 年度に公表予定である。令和 3 年 12 月には、東京栄養サミット(N4G)・国際野菜果実年と絡め、FAO 駐日連絡事務所との共催により、「野菜・果物―地球と人間の健康のための研究と行動の機会シンポジウム」を政府公式イベントと位置づけてオンライン開催(384 名参加)した。また、N4G 農林水産省サイドイベントの企画開催にも貢献した。このほか、FAO 駐日連絡事務所との協力で OECD-FAO 農業アウトルック報告書出版記念イベント(令和 3 年 7 月、254 名参加)、国際農研-CCFS 研究会ワークショップ(令和 3 年 12 月、168 名参加)のイベントをオンライン開催し、国際機関・専門的な研究・時事的な話題を提供した。東南アジア連絡拠点に関しては、コロナ禍のため地域コーディネーターの出張はかなわなかったが、現地事務職員との連携で国際農研プロジェクト支援や日本企業等への情報提供を 19 件(国際農研プロジェクト支援 8 件、日本企業等の支援 11 件)行った。
 動向分析では、食料栄養状況動向に関する国際・国別統計整理・分析を実施した。世界の農水産物・栄養供給のトレンド分析課題では、FAOSTAT のデータをベースとした栄養供給量データと食料需給推計の部分均衡モデルの取り扱い品目等の関係性を整理した。評価の結果、50 品目をカバーするモデルでも全ての微量栄養素供給量を説明するには不十分で、国や地域ごとに重要な栄養素や食品を見極める作業が重要になることを明らかにした。また国際機関のデータを用いて統計モデルをベースとした栄養障害二重負荷予測モデルを開発、栄養不良と栄養超過の両方の予測が可能になった。アジア主要地域の農業技術動向分析については、中国における食料需給と栄養状況の資料収集を行い、気候変動に焦点を当てた質問票を作成、合計 72 村で 1242 戸の農家の調査データを収集した。
 技術評価システム開発では、まず、モデル開発のための文献調査を行い、国際農研研究者によって開発された技術を経済的に評価するために、地域・国レベルの汎用的なモデルが必要と結論した。農業技術体系の評価では、ミャンマー沿岸部で実施した農家調査結果を用い、品種選択と収量と所得の関係を分析した結果、高品質品種の栽培は高所得を導くことを明らかにした。環境影響の評価については、LCA を用いコメ栽培の農業技術等による温室効果ガス(GHG)削減効果を評価した論文の文献調査をとりまとめた。
 そのほか、外部資金課題「農産廃棄物を有効活用した GHG 削減技術に関する影響評価手法の開発」として、バイオエネルギー生産の持続可能性を巡る国際的な議論の動向を調査、パーム油生産における認証制度には農産廃棄物が含まれておらず、農業廃棄物の適切な処理の接近方法としては、認証制度を使いにくいことを明らかにした。

 研究開発成果の社会実装等に向けて、実用化連携プロジェクト、農業デジタル化プロジェクト、熱帯作物資源プロジェクト、において、以下の取組を行った。
 実用化連携プロジェクトでは、国内外の民間企業等との多様な連携を通じて国際農研が創出した研究成果の普及及び研究活動の活性化に資するためのビジネスモデルを構築することを目的に、エビ類知財管理プラットフォームの確立・アジアモンスーン植物工場・研究成果の実用化・社会実装促進支援の 3 テーマを実施した。
 エビ類知財管理プラットフォームの確立テーマでは、まず、閉鎖循環式屋内型エビ生産システム(ISPS)に係る特許等成果を活用する事業を、国際農研内発ベンチャー企業「ShrimpTech JIRCAS, Inc.」として登記するための所の認定を受けた。ベンチャー事業の業務内容は、「有用エビ類の陸上養殖に関するコンサルティング」及び「バナメイエビ種苗の生産及びその販売」である。前者に関しては、国内外における水質管理・エビの健康維持・その等エビの陸上養殖技術の遂行に関する助言と位置づける一方、後者はスタートアップ経費獲得後に実施することとした。既存の知財「有用エビ類の卵成熟抑制を解除する方法」の検証及び新技術開発を Thai Union PCL.の商業ベースふ化場で共同研究を実施している。共同研究契約上、Thai Union PCL.の商業ベースふ化場に国際農研の研究職員が赴き実証試験を行う計画であったが、コロナ状況を受け、国際農研側からリモートで必要な業務を行なった。動画つきのプロトコルも作成し、実証試験に必要な消耗品等を郵送した。Thai Union PCL.関係者がエビの解剖・注射の練習を重ね、令和 4年 1 月から本格的な試験に臨むこととなった。親エビの準備が終了しており、親エビのならし飼育を行った。眼柄切除に代わる新たな成熟制御技術の新技術開発に関わる研究として、脳・胸部神経節に由来するとされる卵黄形成刺激ホルモン(VSH)の分離・同定を行った結果、脳の粗抽出物が卵黄タンパク質遺伝子発現量を上昇させる作用があることから、脳に VSH が存在する可能性が示唆された。稚エビ生産技術を確立するために、病原体フリー親エビ(雌 60 尾、雄 60 尾)を飼育室に導入し、令和元~2 年度に確立した成熟・産卵方法を用い、成熟・産卵からポストラーバまでの一連の飼育を行った。50万尾のポストラーバの生産量を目指し、国際農研発ベンチャーとして国内ハッチェリーセンターの設立への関わり方を検討する。
 アジアモンスーン植物工場テーマでは、民間企業と連携し、植物工場における果菜類の栽培最適化条件を把握するための試験を実施した。まず、熱帯・亜熱帯地域におけるトマトの環境制御最適化課題では、夏期栽培において、栽植密度を従来の 4.4 株/m2 から 5.6 株/m2 に増やした結果、10a あたりの収穫量は 5.7t/10a から 7.3t/10a に増加することを確認した。また、輸出に適したトマトの栽培、当該トマトの輸出及び嗜好性に関する研究課題では、トマトの貯蔵性について 3 品種(桃太郎ホープ、フルティカ、PR7)の果実を冷蔵室(7℃)で 28 日間保管したところ、PR7 の果実が最も硬く、輸出に適した品種だと考えられた。次に、熱帯・亜熱帯地域のイチゴ栽培技術最適化とゾーニング課題において、石垣島での冬期のイチゴ栽培において、日中 LED 補光により曇天時の光合成光量子束密度はおよそ 3 倍に増加することを確認した。イチゴ品種‘よつぼし’では、LED 補光により収穫開始から 1 カ月間の収穫量は 23%増加した。そのほか、パッションフルーツでは 2 作分のデータをまとめ、開花後のハウス内気温を 27.9℃で管理した時に果実の糖酸比が最も高くなることが示唆された。社会実装に向けて、アジアモンスーンモデル社会実装ワーキンググループを農研機構、民間企業らと結成した。さらに、インドネシア、インド、UAE の在日大使館を訪問し、海外展開について意見交換を実施
した。成果報告会を令和 3 年 12 月 9 日に熱帯・島嶼研究拠点と Web とのハイブリット方式で実施した。在日インドネシア大使館からは早期に現地活動を進めるようコメントがあった。本報告会のプレスリリースを令和 4 年 1 月 14 日に行った。
 研究成果の実用化・社会実装促進支援テーマでは、第 4 期中長期計画で創出された研究成果から、①ダイズさび病抵抗性品種の開発・普及(アルゼンチン)、②安定生産なイネ品種の開発・普及(フィリピン等)、③長粒米向け籾摺りロールの開発(タイ)、を実用化する技術として選定した。①②については、海外業務請負契約により多地点試験を実施し、形質データの取得や品種登録出願の準備を整えた。また、アグリビジネス創出フェア 2021 及びアグロ・イノベーション 2021 に出展し、費用対効果分析のためのアンケート調査等を実施した。イベント出展の効果を客観的に評価する手法を開発するため、投資利益率(ROI:Return on Investment)を用いて、平成 28 年度~令和元年度までの費用対効果を試算し、それに関する論文が公表された。

 農業デジタル化情報プロジェクトでは、FS として、現状の問題整理と課題抽出・ニーズの把握と現地適応に必要な技術的条件の把握の 2 課題を実施した。
 まず、課題抽出・ニーズ把握課題においては、代表性のある情報の収集にあたり、Systematic Mapping の分析フレームワークを構築した。キーワード検索で 176 件の研究がヒットしたが、スクリーニングの結果、SSA でのデジタル農業の持続性インパクトを検証したオリジナル論文は 16 件であった。この 16 論文に、FAO 報告書・CGIAR 報告書で引用されたキーワード検索による 23 論文を加え、計 39 論文内容を分析フレームワークに沿って精査した結果、研究対象の偏り(携帯・SMS・ビックデータ、メイズ・コメ等の穀物、等)から、デジタル農業適用の当面の関心が浮かび上がった。一方、コントロールを設定してデジタル農業導入インパクトを評価した研究は限られ、SSA におけるデジタル農業普及にはさらなるエビデンスの必要性が明らかになった。
 現地適応課題においては、コロナ禍や現地事情によって出張がかなわないなか、FS 対象国としたエチオピアにおいては、WeRise(季節予報を使った天水稲作向け意思決定システム)や e-kakashi(ほ場に設置したセンサーから収集したデータを分析し最適な栽培方法を提案するシステム)の現地適応条件(技術条件、社会科学的、環境的制限/採択要因)を把握するため、現地関係機関・日本関係機関との連携体制を構築、農業デジタル化展開に必要とされる情報交換・情報収集を実施した。成果の普及促進、社会実装のための具体的対応として、エチオピア農業研究機関 EIAR との JRA に SoftBank を含め、企業連携の体制整備を行い、エチオピアの CP と月一のオンライン会議を実施している。また、JICA のプロジェクトである EthioRice2 との調整を継続している。WeRise は気象予測等によってコメ農家の意思決定をサポートするイノベーションとして、AfricaOpen Innovation Challenge に、採用され、セネガルに試験導入され、その適応性評価が実施された。e-kakashi は EIAR- SoftBank との JRA に基づき、現地に専門家が出張をしなくても機材の導入ができるようにマニュアルを作成し、オンラインでの技術指導を現地研究者や普及員を対象に実施した。

 熱帯作物資源プロジェクトでは、サトウキビ・イネ・熱帯果樹・ブラキアリアという国際農研が国内外で強みを持つ熱帯作物遺伝資源について、情報整備・特性評価解析・品種及び栽培技術開発・国内連携の 4 テーマにまたがって研究活動を実施した。
 情報整備テーマについては、作物ごとにデータベース化に向けた情報整備の課題を実施した。まず、サトウキビについては、タイで収集したエリアンサス遺伝資源について、農業形質(10 形質)の多様性を明らかにするとともに、サトウキビの改良等で利用可能な育種素材を選定した。また、データベースの公開に向けてテンプレートを作成した(R3研究成果情報候補)。イネ課題では、バングラディッシュ 391 品種については出穂特性等への変異に関する圃場特性データ収集を、カンボジア 181 品種については塩ストレス並びに低肥沃土壌環境に関するデータ収集を行った。イネデータベースの構築に向け、所
内関係者と役割分担・プロトコルについての調整を行った。熱帯果樹課題では、ミャンマー国の現地情勢に関する情報収集を行い、次年度以降の共同研究の実施の可否を検討した。 
 特性評価解析テーマでは、次の成果をあげた。まず、サトウキビ課題では、エリアンサスの属間雑種 BC2 集団(200 系統)について DNA マーカー開発に利用するための農業形質データの取得を完了・データを取り纏め、また電解質漏出を用いた耐酸性の簡易評価手法開発を検討した。イネ課題では、早朝開花候補遺伝子の変異体を CRISPR/Cas9 により作出し、変異が固定化された個体を 5 個体選抜したほか、出穂期遺伝子型判別につながる DNA マーカーを作成した。また、アフリカイネの育種利用に向けたアジアイネとの 4 倍体雑種の葯培養により再分化植物体を得た。熱帯果樹課題では、温暖化による栽培困難が報告されている日本のマンゴー主力品種‘Irwin’の葉の細胞膜が高温に弱く、高温でダメージを受けやすいことが示唆された。
 品種・栽培技術開発テーマでは、次の課題を実施した。まずサトウキビ課題では、根系特性が優れる属間雑種 BC2 有望育種素材を作出、属間雑種 BC3 集団(70 系統)については株出し栽培での農業特性データを取得するとともに選抜した系統を利用してBC4 集団を作出、タイにおいて生産力評価試験を開始した。熱帯果樹課題では、パラミツの接ぎ木成功率向上技術を確認し、温帯にくらべ接ぎ木が難しい熱帯の苗木生産で土壌環境の安定化が他の果樹にも適用できる可能性を見出した。ブラキアリア課題では、新品種「イサーン」が、日本で品種登録(登録番号:28580)され、タイで品種登録出願が受理された。DUS 試験(Distinctness, Uniformity and Stability test:新品種の区別性、均一性、安定性判定試験)を次年度から実施することとしている。イ
ネ課題では、出穂期改変に先立ち、主要品種の出穂期遺伝子型を調査した結果、熱帯・亜熱帯環境において晩生品種に共通する遺伝子型があることを明らかにした。この結果をもとに、出穂期改変に用いるドナー品種・系統を選定し、交配を実施した。
 国内連携テーマでは、国内連携に有用な情報をとりまとめた。サトウキビ課題では、育種事業への交配協力を実施し、10 組み合わせ、約 2000 個体の実生を沖縄県の育種事業へ提供するとともに、JBC15-78 を新規育種素材として提案した(キビ遺伝資源)。属間雑種 BC3 系統集団から沖縄県の育種事業で評価する系統を選定した(サトウキビ育種)。 また、農業生物資源ジーンバンク事業の熱帯・亜熱帯作物サブバンクとしてサトウキビ、エリアンサス、熱帯果樹、パインアップルの各遺伝資源の維持管理を実施した(ジーンバンク)。イネ課題では、イネのペプチド遺伝子である Os79 を過剰発現する形質転換イネは生長が促進され、個体当たり籾収量が非組換えイネの約 2 倍になることを明らかにした。熱帯果樹課題では、選抜したパッションフルーツ耐暑性育種素材について開花、結実、果実特性評価を行なう。簡易茎頂接ぎ木によるパッションフルーツウイルスフリー化技術の現場への普及及びマニュアル・動画作成を実施した。

 この他センター機能を活用して以下の取組を行った。
ア 世代促進やジーンバンク事業等
 農研機構次世代作物開発研究センターからの受託研究「令和3年度亜熱帯気候を利用した水稲世代促進に係わる栽培試験業務」及び農研機構農研機構東北農業研究センターからの受託研究「亜熱帯気候を利用した水稲世代促進に係わる栽培試験」を、熱帯・島嶼研究拠点の水田圃場で実施。イネの育種交雑集団それぞれ 20 集団及び 40 集団について二期作による世代促進を行うことにより、農研機構が推進する水稲育種事業の効率化に貢献した。
農研機構遺伝資源センターが実施している農業生物資源ジーンバンク事業において熱帯・島嶼研究拠点は、熱帯・ 亜熱帯作物サブバンクとして、サトウキビ 534 品種・系統、エリアンサス等 62 系 統、 熱帯果樹 150 品種・系統及びパインアップル 125 品種・系統の栄養体保存を行う事により、本事業に協力した。
 サトウキビでは、沖縄県農業研究センターから「新たな時代を見据えた糖業の高度化事業」を受託し、サトウキビとエリアンサスとの属間雑種 BC2 集団から根の発達が優れる育種素材を選定し、国内育種事業へ提案した。また「イノベーション創出強化研究推進事業」の中で、農研機構九州沖縄農業研究センター等と協力して国内育種事業で利用する交配種子を獲得するとともに、属間雑 種集団から選抜した有望系統の品種化に向けた評価を実施した。

イ 人材育成
 外国人研究員の招へいについては、新型コロナウイルスのデルタ株やオミクロン株に対する水際対策強化により、外国人の新規入国が制限されている状況であるが、見なし再入国許可を受けて帰国した国際招へい共同研究員 1 名(招へい期間:令和元年 10 月~令和 3 年 3 月)を共同研究員として招へいし、BNI 強化コムギ及びソルガムの試験研究を行った。国際招へい共同研究事業については、令和 3 年 6 月に公募を行い、国際招へい共同研究員 6 名を選定した。この内、1 名は国内の大学で学位取得後、コロナ禍の影響により国内滞在しており、国際農研での研究活動を開始することが出来た。また、Africa Rice からの研究員 1 名は、国際農研にて農業デジタル化情報に関する研究を引き続き実施した。
 大学院生やポスドク研究者を海外の共同研究機関に派遣する特別派遣研究員は、新型コロナウイルス感染症の長期化に伴い、公募を行わなかった。
国際農研が定めた講習規定に基づき、令和 3 年 5 月以降、国内大学から新たに 14 名の講習生を受け入れた。講習生に対しては、国際農研職員と同様に、新型コロナウイルス感染防止対策に努めながら講習を行った。
キーワード 戦略的情報収集分析、研究成果実用化、民間連携、農業デジタル化、熱帯作物資源利用促進
カテゴリ 亜熱帯 育種 いちご 遺伝資源 環境制御 小麦 栽培技術 さとうきび 人材育成 新品種 水田 セネガ 耐暑性 接ぎ木 データベース DNAマーカー 抵抗性品種 土壌環境 トマト 苗木生産 パッションフルーツ 品種 ぶどう 分析技術 マンゴー 輸出

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