課題名 |
都市近郊・里山林の生物多様性評価のための生物インベントリーの作成 |
課題番号 |
2003004396 |
研究機関名 |
森林総合研究所
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研究分担 |
森林総合研究所
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研究期間 |
継続2001~2005 |
年度 |
2003 |
摘要 |
都市近郊・里山林の生物多様性評価のための生物インベントリーの作成当年度の試験研究方法:1)(1) 滋賀県志賀町および野洲町の試験地内にマレーズトラップを各4器設置し、4月下旬~9月下旬にかけてカミキリムシ類の採集を行った。(2) 11月中旬に志賀町内の4箇所に自動撮影装置を設置した。撮影画角内に誘引餌としてバナナ・豚肉・マヨネーズを置き、8夜連続で撮影を行った。(3) 志賀町において、4種の落葉性コナラ属(コナラ節に属するコナラとナラガシワ、クヌギ節に属するクヌギとアベマキ)の堅果の生産と死亡要因を調査した。立木各種5本ずつを選定し、樹冠下に口径0.5 平方米の捕虫網状のシードトラップを4月10日に1器ずつ設置して、落下堅果(雌花を含む)を11月10日まで採集した。また、採集した堅果各々の、花柱を除く長さ(L)×幅(W)の2乗 (LW2)の値を算出した。(4) 志賀町の2地点でシャーマン式トラップを用いて、7月と10月の2回、標識再捕獲を行った。また、野ネズミによる堅果の利用様式を調べるために、約30センチの蛍光糸をつけたコナラ、クヌギ、アベマキの堅果を各15個ずつ林床に設置した(1セット)。各調査地に4セットずつ配置し、翌日利用様式(捕食または貯食、運搬された場合には距離と方位)を記録した。2)(1) 実験室内で、2群(馴化群と非馴化群)のアカネズミにミズナラの堅果のみを供餌し、生存率、体重変化、摂餌量、消化率、窒素消化率を測定し、堅果摂取によるインパクトの比較を行った。非馴化群は、実験に先立つ3週間、タンニンフリーで飼育した。一方、馴化群には、人工飼料に合わせて毎日少量(約4g)の堅果を供餌し続けた。両群各個体に対し、供餌実験と併せて、タンニン結合性唾液タンパク質(PRPs)とタンニン分解性腸内細菌の検出・測定を行った。(2) マツ樹皮下穿孔虫に寄生するキタコマユバチの産卵行動を実験室内でビデオ撮影することにより調査した。透明スチロールケースの底に10cm四方のマツ樹皮あるいはコルク板を、寄主(サビカミキリ幼虫)をはさんで固定し、ケース内に雌バチ1個体を放って観察した。3)落葉性コナラ属4種の充実種子生産量と個体サイズの関係を調べた。当年度の研究成果:里山林を構成するコナラ節(コナラ、ナラガシワ)、クヌギ節(クヌギ、アベマキ)が同所的に存在する試験地で、更新に関わる動物の働きを調べた。虫害はコナラが高く、アカネズミによる利用はクヌギ節が高かった。アカネズミがタンニンに対する馴化を獲得する上で、タンナーゼ産生細菌の乳酸菌種群(TPL)とタンニン結合性唾液タンパク質(PRPs)が重要であることが明らかになった。コナラは、クヌギ節2種よりも繁殖開始サイズが小さく、里山の強度な土地利用下ではコナラが優占すると考えられた。1)(1) 14年度の昆虫トラップでの捕獲データを解析した結果は次の通り(13年度の結果)で、両年の傾向に違いはなかった。 志賀町 12 42(49) 243(403) 4.32(4.50) 野洲町 16 27(24) 127(106) 3.75(3.58) (2) 志賀町の調査地において、現時点で確認された哺乳類(捕獲調査 自動撮影)は、アカネズミ(○ ○)、ヒメネズミ(○ ×)、ヒミズ(○ ×)、ニホンジカ(× ○)、イノシシ(× ○)、キツネ(× ○)、ハクビシン(× ○)、タヌキ(× ○)、テン(× ○)、ニホンザル(× ○)である。撮影は初冬期に行ったが、春~夏にも調査する必要がある。(3) コナラ節2種はほとんどの堅果が発育不全と吸汁虫害によって落下した。とくに、最も堅果が小さいコナラは、多産であるが、調査年の無被害果数はゼロであった。ただし、これらのバイオマスは小さく、損失は小さい。クヌギ節2種の堅果は厚くて棘のある殻斗で覆われ、堅果を保護することで、数少ない雌花を確実に成熟に至らせると考えられる。最も堅果が大きいアベマキは、調査年には無被害果数とそのバイオマスは4樹種のなかでもっとも大きくなった。しかし、どちらの戦略が優位かは、年度や人為的な攪乱の程度によって異なると考えられる。 (4) 自動撮影の結果から、堅果の利用に訪れたのはアカネズミのみと判断した。コナラ堅果はほとんど利用されず、クヌギとアベマキ堅果が積極的に利用された。クヌギ、アベマキ堅果の利用には顕著な違いは認められず、ほぼすべてが運搬利用されていた.また、運搬された堅果については、運搬距離は、コナラよりもアベマキ、クヌギの方が有意に長かった(平均値±標準偏差、コナラ 71.4 ± 40.6 cm、アベマキ 345.7 ± 202.0 cm、クヌギ 213.8 ± 204.0 cm)。運搬方向に関して、Rayleigh検定を用いた結果、アベマキでは有意な方向性が認められたが(P < 0.01)、コナラについては認められなかった。3種の堅果が同時に存在する状況では、アカネズミは、アベマキ・クヌギの散布には寄与
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