課題名 |
地域資源活用による乳牛の生涯生産性向上に向けた飼養技術の確立 |
研究機関名 |
岩手県農業研究センター
|
研究分担 |
飼料生産
|
研究期間 |
継H14~16 |
年度 |
2003 |
摘要 |
目的:(1)背景・目的 本県の酪農経営は、飼養規模拡大と高泌乳化が進んできており、平成12年の30頭以上飼養階層は474戸(22.6%)と戸数で平成2年の1.4倍に拡大するとともに、1頭当たり乳量もこの間に約600kg増加して6,809kgとなっている。しかしながら、飼養規模拡大と高泌乳化の進展にともない、購入飼料依存型の飼養形態が進んできており、搾乳牛1頭当たり飼料自給率は平成2年の41.6%から平成10年には28.7%に低下してきている。また、高泌乳化にともなう濃厚飼料給与量の増加により、繁殖・周産期病等の発生割合が平成2年の36.9%から平成11年には40.1%に高まるなど増加傾向にあり、乳牛の生涯生産性も平成11年度に2.8産まで低下してきている。加えて、多頭化によって増大した家畜ふん尿の経営内利用は、雑草の蔓延を招く懸念があるとして長大型飼料作物畑に集中して還元される例が多く、採草地を含む循環利用は進んでいない。岩手県酪肉近代化計画では、更新産次を4.0産以上、飼料自給率を現状の28%から50%に高めることとしており、乳牛飼養管理の改善や家畜排せつ物を利用した良質粗飼料の生産のほか、飼料生産組織の育成、TMR給与の普及、省力的飼養管理システムの導入等を推進することとしている。このような状況から、生乳生産コストの低減による経営の安定を図るためには、乳牛の健康に配慮した飼養管理技術の開発や多頭化により増大した家畜ふん尿を最大限利用できる粗飼料(一年生飼料作物)の高位生産技術の開発が急務となっている。さらに、生涯生産性向上に向けた自給粗飼料多給による土地利用型酪農を推進するため経営支援システムの構築が求められている。(2)目的 ア 一年生飼料作物の給与と放牧等による高位な乳量・乳成分を確保する飼養管理技術及び高泌乳牛の育成技術を確立するとともに、放牧・パドック運動による周産期病の予防効果を明らかにする。 イ 一年生飼料作物の北東北地域における生育特性、生産性を明らかにし、草種・品種を選定するとともに、家畜ふん尿の適正な施用技術を確立する。ウ 耕地の有効利用を図るため一年生飼料作物の効率的調製・貯蔵技術を確立するとともに、冬作物との2年3作体系を含む良質粗飼料の高位生産技術を確立する。エ これらの飼料作物の栽培利用と効率的な放牧の導入による周産期病の低減対策を取り入れた生産性の高い酪農経営システムを構築する。また、新規作物の導入・利用マニュアル及び放牧を取り入れた周産期予防マニュアルを作成する。到達目標:ア 生産粗飼料の給与と放牧等による高位な乳量・乳成分を確保する飼養管理技術及び高泌乳牛の育成技術の確立により周産期病を予防し更新産次の延長を図る。イ 脂質代謝関連物質を指標とした周産期病予察技術を開発する。ウ 一年生飼料作物の北東北地域における生育特性、生産性を生かした資源循環型粗飼料生産技術を確立するとともに冬作物との2年3作体系技術により粗飼料自給率の向上を図る。エ上記の開発技術を組み合わせた資源循環型粗飼料多給酪農経営システムを構築する。予定成果(初年目):(1)主要酪農地帯における粗飼料生産給与と家畜飼養管理技術の実態把握 (2)一年生飼料作物の生育特性と生産性の解明 (3)一年生飼料作物の資源循環型栽培技術の確立 (4)一年生飼料作物と冬作物との組み合わせによる周年作付け体系技術の確立 (5)集約放牧を組み入れた高能力牛の育成期飼養管理技術の確立(6)泌乳期に対応した一年生飼料作物の給与技術の確立 (7)脂質代謝関連物質を指標とした周産期病予察技術の開発期待効果:ア 県内酪農家の粗飼料生産・給与ならびに飼養管理の実態が明らかになり、技術開発、現地実証を行う上での参考となる。イ 生産飼料並びに放牧等を組み込んだ酪農経営システム化により飼料自給率の向上と高い生涯生産性が確保され安定した酪農経営の確立が可能となる。 ウ 寒冷地における一年生飼料作物の生育特性、資源循環利用技術が確立され、一年生飼料作物を利用した飼料生産体系が確立される。エ 集約放牧と一年生飼料作物を活用した併給飼料(TMR給与)により安定した乳量・乳成分を確保する飼養管理技術と放牧効果による周産期病の予防効果が明らかになり、放牧の重要性を啓発できる。オ 牧牧を組み入れた飼養管理で、24か月齢、600kgの体重を確保し初産分娩を迎え、9,000kg以上の初産乳量を達成する飼養管理技術と連産性が明らかになる。カ 周産期病あるいはその前駆異常である肝機能障害を初期段階で予察し、適正な処置及び飼養管理が可能となり生涯生産性の向上が図られる。成果:(1)県が2000年に策定した岩手県酪農・肉用牛生産近代化計画書においては、高品質乳の高位生産のほか、粗飼料自給率の向上及び堆肥の高度利用とリサイクルを進める資源循環型農業への取り組みが大きな柱として位置づけられている。(2)スーダングラスには硝酸態窒素濃度について品種間差が存在し、年次・施肥条件の異なる栽培条件下でも品種間と濃度には高い相関が見られる(2000年草地試)。(3)ソルガムの収穫調製作業を通常の牧草ロールベールラップサイレージと同様の機械体系で行うことが可能である(1998~2000年岩手畜研)。 (4)出穂期に収穫したスーダングラスは乳量水準約30kgの泌乳牛に乾物中25%程度まで配合し利用できる(九州農業試験場、1996)。今回の計画では、全泌乳期間における給与量と放牧時の併給飼料としての利用について検討する。(5)粗濃比8:2(TDN72、CP16)の給与で、12.2か月齢時の交配基準の体重・体高を確保。また、分娩直前までの体重600kg前後を確保した(道立新得畜試1994)。今回の計画では、哺乳期の感染症を低減させる管理技術、育成期から併給飼料と集約放牧を組み入れた管理により、強健性・連産性を高める飼養管理技術を検討する。
|
研究対象 |
乳用牛
|
戦略 |
畜産
|
専門 |
飼養管理
|
部門 |
牛
|
カテゴリ |
病害虫
管理技術
規模拡大
経営管理
コスト
栽培技術
栽培条件
雑草
飼育技術
飼料作物
施肥
施用技術
肉牛
乳牛
繁殖性改善
品種
保存・貯蔵
予察技術
|