タイトル | アビジン遺伝子を導入したイネの玄米は貯穀害虫の成育を阻害する |
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担当機関 | (独)食品総合研究所 |
研究期間 | 2001~2003 |
研究担当者 |
宮ノ下明大 今村太郎 大坪研一 與座宏一 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 鶏卵の糖タンパク質であるアビジンの遺伝子を導入した形質転換イネの玄米は、貯穀害虫であるヒラタコクヌストモドキに対して虫害抵抗性を示す。 |
キーワード | アビジン、米、貯穀害虫防除、遺伝子組み換え |
背景・ねらい | 収穫した米に対して、貯穀害虫による被害を防ぐために薫蒸剤が使用される場合がある。近年、消 費者側の安全性志向、また環境調和型の農業が求められている中で、化学薬剤の過剰な使用は問題で ある。農薬・燻蒸剤の使用を低減させる一つの手段として、遺伝子組み換えにより、イネに虫害抵抗 性を賦与することが考えられる。鶏卵に含有されている糖タンパク質であるアビジンは、ビオチンと 強固に結合する性質を持ち、このアビジンを害虫が摂取すると、成育に必要なビオチンが欠乏するの で成育が抑制される。イネにこのアビジン遺伝子を導入すれば、その米は虫害抵抗性を持つことが期 待できる。 |
成果の内容・特徴 | 1.導入した遺伝子は、オオムギαアミラーゼのシグナル配列を付加したアビジン遺伝子である。形 質転換イネの作出は、「日本晴」を宿主としたアグロバクテリウム法による。 2.形質転換イネの特徴は、種子(玄米)でアビジンが合成され、葉では合成されないので植物体の育を阻害しないことである(図-1)。 3.玄米に含まれるアビジン含量は、No.17系統において平均113ppmであった(図-2)。No.17系統 は、作出した18系統の中で、最も高い含有量を示した。 4.形質転換イネの虫害抵抗性については、No.17系統の玄米粉を用いて、ヒラタコクヌストモドキ飼育試験を行った(表-1、図-3)。供試した20頭のうち、アビジン玄米粉を用いた試験区 では成虫となる個体はなく、全て死亡し、アビジン玄米に虫害抵抗性があることが判明した。 |
成果の活用面・留意点 | 特に米の低温保管が困難な場合に有効な技術であると考えられる。なお、コメ中のアビジンは炊飯 により失活しビオチン結合能が無くなることは確認済みであるが、今後、実用化するためには環境へ影響やヒトへの安全性の確認が必要である。 |
カテゴリ | 病害虫 大麦 害虫 抵抗性 鶏 農薬 防除 薬剤 |